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『『深い森の入口にあるコテージで』の続きC』

(まえがき)

こないだ書いた記事のオチ候補4つのうち、3つ目を本日お出しします。


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「差し支えなければ、どのような?」

「あ、仕事は都会でね。アパートが樹海の中にあって。独り身だからココで飯食うんすよ」


にわかには理解しがたかった


「ど、どういうことでしょう…?」

「きょう時間あるなら、見ます?」


時間ならいくらでもある

売ってやってもいいくらいだ

もっともカネにも困ってはいないが…


興味を持った私は

この男の誘いに乗ることにした


「お邪魔でなければ」

「ちょうど暇してたから良かったすよ」


男は昨日と違って

ラフな服装をしている


どうやらきょうは休みだから

朝食のためだけにこの宿へやってきたという


コンビニはおろか

このコテージ以外に

食料にありつけそうな場所は見当たらないから

当然といえば当然か


「近いんですか?」

「まぁ、ものの5分ですかね」


本当に5分程度だった

都会へは

コテージからの高速バスがあるから

案外アクセスはいいのかもしれない


鬱蒼と茂る森が開けて

単身用と思われるアパートが一軒

三部屋が二階建てで

計六戸あると見える


「ほかにも住人の方がいらっしゃるんですか?」

「いまは自分だけっす。安いし便利なんすけどね」


家賃は

私が滞在するコテージの一泊分に満たない

これは若者とすれば

非常にありがたい物件だろう


二階の一番奥が

男の部屋だった


「どぞ」

「お邪魔します」


私も若い頃は質素なアパートに暮らしたこともあった

とはいえその時分に比べれば

ずいぶんと洗練されている


この物件も例に漏れず

立地を除けば

非常に清潔感があり

なんの不自由もないと見える


もっとも男も

自炊こそしないのか

立地がそうさせないのかはさておき

マメな性格と見えて

清掃が行き届いている


「いやぁなかなか快適なお部屋で」

「でしょ、ビールでも飲みます?たいしたツマミないけど」


コテージでの食事も悪くはないが

缶ビールと乾きモノで一杯やるのも

これまた至高で


若い友人との出会いに

私は喜び

すっかり酔いが回った


さてそろそろ暇(いとま)をしようとしたが

いつの間にか外は真っ暗で

申し訳ないことに雑魚寝でやっかいすることになった


あくる日も男は休みのようで

朝からひとり

酒盛りをしている


そしてまた

勧められるままにビールをぐいっとやる

目覚めの一杯がこんなに旨いとは


つい

酩酊する


またもや眠気に襲われる

寝入る


目が覚める


男はひとり

酒盛りをしている


ビールを勧められる


旨い


酩酊する





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