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オスカー・ワイルド「幸福の王子」(結城浩・訳)

今晩はオスカー・ワイルド「幸福の王子」(結城浩・訳)を朗読しております。

「町の上に高く柱がそびえ、その上に幸福の王子の像が立っていました。王子の像は全体を薄い純金で覆われ、 目は二つの輝くサファイアで、 王子の剣のつかには大きな赤いルビーが光っていました」

書き出しの色彩が美しいですね。
青い空をバックに凛と立っている王子の像が目に浮かびます。

幸福の王子は、つばめに頼んで、貧しい人たちに自分のものを分け与えます。剣のつかのルビーは裁縫婦の親子に。青いサファイヤの目は片方ずつ、めぐまれない脚本家とマッチ売りの少女に。金箔も、町の貧しい多くの人に……。

ルビーもサファイアも金箔もはがれた王子は、光沢を失い灰色になり、すっかりみすぼらしくなってしまいます。

作品冒頭で輝く王子の姿をくっきり描いているからこそ、こういった対比が、じつに効果的になってきます。ワイルドは、「ナイチンゲールとばら」などの作品でもそうなのですが、色の使い方がじつにうまいです。

対比といえば、この作品には、傲慢な人間、無神経な人間、見栄っ張りな人間、自分のことしか考えていない人間などが、何人も出てきます。
そういう人たちを登場させることで、王子の尊さが、いっそう際立つわけですね。でも、その王子も、生前は何も考えず快楽のなかで生きていた…と自身で振り返っています。

王子とつばめが口づけをするシーンで、私はいつも泣きそうになります。
王子の限りない慈愛の心…その魂に魅せられ、王子を心底愛したつばめ…ふたりの愛の物語、と私はとらえていますが、いろいろな読み方ができる作品だと思います。

オスカー・ワイルドの作品は、ほかに、「わがままな大男」も朗読しております。
あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。