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大好きな恒川光太郎さんの作品を、大好きと言いつつ購入して以来しばらく積んでいたのをようやく読みました(所持して一旦満足するタイプ)。

「夜市」で衝撃を受けて以来のファンです。「夜市」についてはこちら。3年近く前の文章で恥ずかしい。

今回のこの「草祭」は短編だけど全部繋がってるやつ。「美奥」という架空の地域を舞台に描かれています。

しかもね、その時系列がまた秀逸なのですよ・・・。

彼の作品の好きなところは、痛さや優しさがじわじわ時差でやってくるとこ。

大好きな作家さんはたくさんいて、その中で浅田次郎さんやいしいしんじさんは、読んで意味わかった瞬間その場で「うわーーーーーん」って大号泣するんだけど、恒川光太郎さんの作品は、ふと「もしかしてあの時のアレってこういう意味・・・???」って確かめる術もなくふわっとやってくる。

その時差で言うと、「夜市」に収録されている「風の古道」の痛さや優しさが最高なのですよ・・・。

ざっくり各短編の感想を順番に、作品内の時系列(おそらく)を番号で。各短編のみでも楽しめます。

以下ネタバレしたくない人はスルーしてね。

・けものはら・・・④
突然行方不明になった少年の因果。友人のスタンスいいなあ。親子関係はやっぱり影響するよね。

・屋根猩猩・・・⑤
ちょっとかわいい。この短編の中の主人公の女子生徒の校内の立ち位置はなかなかえぐい。にも関わらず、自分の置かれた状況を俯瞰で見ていてメンタル強いなと思いました。

・くさのゆめがたり・・・①
これがいちばん刺さった。毒を作る技術を教わった少年の話。知識や技術がある者は、妬まれ疎まれる。悪用もされるかも。そうされないためには口外しないのがいちばん。3篇めのここから、この本の世界がはじまっている。

・天下の宿・・・③
いわゆる毒親の下育てられた女の子。夢見がちだったのがだんだん地に足が付いてくる。判断が強かで好き。

・朝の朧町・・・②
不思議な街と行き来できるようになった人の話。香奈枝さんの重い過去がちょっとした世間話のようにナチュラルに登場する。たのしいことも辛いことも、コンプレッサーがかかったような、初めて体感する世界観。

全編を通して「美奥」という地域と、(天下の宿以外に出てくる)「クサナギ」という薬がキーワード。

女の子が凍死したり、野生の材料が冬に手に入らないところから推測するに、北海道か東北か北陸か、寒い地域なのかな。

別の生き物になる薬「クサナギ」。おそらく美奥にいる人間は、元々人間だった人と、「クサナギ」によって元々違う生命体だったものが人間になった人の2種類がいて、時間の経過とともに混ざってもいるけど、おそらく「クサナギ」は遺伝子レベルで変化させるから問題はないのでしょう。と解釈している。

『くさのゆめがたり』で村中に「クサナギ」が撒かれ、人間は他の生き物に、他の生き物の一部は人間になったんだと思う。基本的に現在美奥にいる人間で外部から来た人以外はその子孫だけど、愛ちゃんは比較的に近い過去に「クサナギ」によって人間になった子。なんじゃないかな。

この短編集を幻想的で美しいと受け取るか、恐ろしいと受け取るか、読み手によってだいぶ変わってくるんじゃないかと思う作品です。

本屋に行ったら私の知らない新刊がたくさん出ていたのでお持ち帰りしました。

早速スタープレイヤーを読んだので機会があったら感想を。

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