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物語と音楽

私は物語を書く時、音楽からヒントを得ることが多い。
その音楽を聴いた瞬間に見えた景色や感触を頼りに書き始める。行き詰まった時も音楽を聴くことで突破口が見えてくることがある。

その昔、ネスカフェのCMがドラマ仕立てのシリーズだった時期があった。
テレビでもよく見たが、私はそれを映画館で見ることも多かった。
ネスカフェのCMでおなじみの曲「Open up」がドラマ毎に違ったアレンジになっていて、かなり見応えのあるCMだった記憶がある。
どんなドラマがあったか全く覚えてないのだが、そのシリーズの最後のドラマが私の中に強烈な印象を残した。

ストーリーはあまり覚えていない。列車と雨と殺人事件。ポアロのような探偵がいて「Open up」はかなりドラマチックなアレンジだった気がする。
たった1分か2分の中で繰り広げられるその壮大な世界観にすっかり惹きつけられてしまった。

ただ、その後数回見ただけで終わってしまい、今でもその映像を探しているのだが、そんなCMがあったという情報すら出てこない。
もしかしたら私の夢だったのかもしれないと思うほどなんの手がかりもないのだ。
当時はネットも今ほど普及してなくて、勿論YouTubeなどもなかった。
完全に迷宮入りだ。
それとも私の記憶違いだろうか?
どなたか覚えてないかな?

基本の「Open up」はこんな感じの曲です。


それから間もなくの2003年頃だったろうか、私は自分の劇団の脚本を書きながら少し行き詰まっていた。どうも筆が乗らないのだ。
そんな時あのCMのことを思い出した。頭の中であの音楽が鳴り続け今自分が書こうとしているシーンとシンクロした。
ここを書き上げるにはどうしてもあの曲を聴きたい。だけど曲名すら分からない(タイトルを知ったのはごくごく最近だ)。完全に行き止まり。

当時私は脚本を書く時はよくカフェに入り浸っていた。コーヒー1杯で何時間も居座る迷惑な客であった。
その日も私は一向に進まないシーンと格闘していた。とその時、店から流れてきた曲に驚く。あのCMの曲ではない。全然別物である。だけど、確実に似ている瞬間があり、あの時受け取った感触を確実に感じる瞬間があった。
私にとっては運命的な出会いである。

そのお店はサイトで調べればその時流れている曲が分かるということをどういう訳だか知っていた私は、かろうじてネットに繋がるガラケーですぐに調べ始めた。
そしてそれがBlueの「Without you」という曲であることが分かり、その足で買いに走った記憶がある。

かくして私はそのシーンを無事書き終えたのだが、残念ながらその脚本は上演されることはなかった。
その後も何度か手直しをしてはいるが、日の目を見る日が来るかどうかは不明である。


Blueの音楽にはその後も色々助けられた。
筆が乗る歌声なのだ。
当時、私の大好きな映画「ラブ・アクチュアリー」にも曲が使われており、ビル・ナイがBlueのポスターに落書きするというおいしい出演に笑った記憶がある。
MVはエルトン・ジョンと共演したこちらが好き。
とても大人っぽいと思っていたけど、この時メンバーは全員まだ二十歳前後と随分若かった。今見ると本当に若い。


一度は解散したBlueが再結成した時「そうだよな、大人ってこういうことだよな」と納得。とにかくかっこいい。
大人になってもやっぱり私はこの四人のハーモニーが好きなんだなとつくづく感じた。私にとって大切なものの中の一つのお話。


そしてもう一人、私が脚本を書く時に欠かせない大切な存在がいる。
Blueはイギリスのボーカルグループなのだけど、こちらもイギリスのシンガーDidoだ。
この人の声が女性シンガーの中で三本の指に入るくらい好きなのである。
歌声の向こう側に物語が見える。そんな声の持ち主だ。

この人の歌に引っ張ってもらい書き上げた作品は予想以上に壮大なものになってしまったが、これは無事上演された。
書いても書いてもまだストーリーが見えてくる。そんな不思議な声なのだ。

ちなみにDidoも「ラブ・アクチュアリー」に曲が使われている


そんなDidoの別の曲。まずはこちらを聴いていただきたい。
この曲も私は何度も聴いた馴染みの深い曲だ。


すごく突拍子もなく感じるかもしれないが、実は私はエミネムも大好きで、エミネムの映画も観に行ったくらいなのだが、そのエミネムとDidoが共演した作品がある。
熱狂的なファンのことを「スタン」と呼ぶようになり、その言葉が新語辞典に載るほど衝撃だったこの曲とMV。
このまま見ても見応えがあるけど、気になる方は和訳をしてくれてる方がいるのでぜひ調べてみてほしい。ゾッとするから。

このMV、隅々まで見ているとゾッとするポイントだらけ。とにかく気付くとゾッとする。最後の子供の意味とか分かると絶望的な気持ちになる。

なんでこんな話をしてるかというと、こんな風にいずれ一曲に収まるくらいの物語を作ってみたいと思っているから。
実はもう何年も前から思っていたことで、少しずつ自分の中で下準備はしてきたつもりなのだけど、やっと道筋が見えてきたかなあというところである。
これまであまりこれからやりたいと思ってることを、先に公言することってなかったんだけど、ちょっと一歩踏み出してみようと思った2021年の春。

Didoとの出会いとなったドラマの話とか、スタン役の俳優さんが私も見てたドラマにずっと出ていたけど、渋い大人になってて全然結び付いてなかった話とか、海外ドラマの名曲の話とか、オープニングクレジットの話とか色々あるけどそれはまた別の機会に。

今日はこの辺で。

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