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小声コラム#27 卒業おめでとう

隣り合った古びたアパートの蛍光灯の光が、月あかりみたいな顔して窓から入ってくる。

365日ずっと無味無臭の灯りなのに、ふと頼りにする時がある。窓の外は雨。
ぽつぽつ より ピョタピョタ みたいな音。
偽物の月あかりと馴染んでるね。


日に日に鉛みたいになってく心で、こうやって感度を上げるのは体力がいる。
好きなことははずなのに、めんどくさい。
好きじゃなかったのかと、ぐらぐら揺らぐ。

ひとまず過去に退散させてもらうとするか。

螢の光、窓の雪、
書讀む月日、重ねつゝ、
何時しか年も、すぎの戸を、
開けてぞ今朝は、別れ行く。


オレが焦がれた春さえもボケた今日この頃、
卒業した人たちがいるんだなぁ。
街中で袴姿を見かけても、思い至ることはなかった。

出会いと別れ って言葉にするとペラペラだ。
でも、自分も通ってきたことを思い出す。

卒業が本当に別れになる人が、思っているよりたくさんいることを、大人になってから知った。

大人になってからの卒業は、卒業というには乾燥しすぎてる気がする。自分が悪いんだけど。

久しぶり、元気?
届けようと思えば届けられると思う。
でもそれは永久に来ることがないことを意味してる。

どうか元気で、どこかで幸せに生きてたら
それで十分、嬉しいよ。

止まるも行くも、限りとて、
互に思ふ、千萬の、
心の端を、一言に、
幸くと許り、歌ふなり。


知らない誰かさん、卒業おめでとう
舞台の幕が上がる感覚は一生モノになるから、
大事にしながら一生懸命、演じてください。

#27 卒業おめでとう

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