【詩をひとつ。】 トイレ
仕事をするのが
つらいとき
彼はトイレに行って
すこし泣いた
便座は彼をうけとめて
胸をいためた
排泄を待つ便器は
とまどって彼を見上げた
鍵は下ろされたまま
そっと彼にふりむいた
ペーパーはぐるぐる出され
彼の眼をそっと撫でた
ほっと息をついて
振りかえることもなく
彼が去ったあと
静かで清潔な形に
くっきりと戻って
みんな待っている
また待っている
汚れものを
かぎりなく受けとめながら
誰にも知られぬやさしさで
次の彼を
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