日本に関する第136回人権委員会(2022 年10月10日~2022年11月4日)にて提出された追加報告書(和訳)
Coordination des Associations et des Particuliers pour la Liberté de Conscience, (CAP-LC)
「良心の自由のための団体と個人の連携(CAP-LC)」
国際連合経済社会理事会(ECOSOC)との特別協議資格を有する非政府組織
主題:日本における統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する偏見、宗教差別、宗教迫害について
日本における統一教会/世界平和統一家庭連合に対する不寛容、差別、迫害についてCAP-LCが提出した声明は、現在進行中の状況に関連しており、CAP-LCはその推移を引き続き監視しています。残念ながら、私たちが当初の声明を提出した時と比べて、状況はさらに悪化しており、委員会が緊急に考慮すべき新たな要素も出てきています。
1.消費者庁の「有識者会議」について
河野太郎内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)が招集した消費者庁の有識者会議が、今動き始めました(Asahi Shimbun 2022a)。提出資料にもあるように、8名の委員の中に、反統一教会「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の有力メンバーである紀藤正樹氏が含まれていることは、重大な懸念材料です。彼はまた、過去に統一教会の成人会員を強制的に「脱会」させる目的で誘拐・監禁する違法行為を行っている「ディプログラマー」の代理人を務めた弁護士の一人です(当初の提出資料参照)。
特定の宗教を対象とする政府委員会の存在そのものが、宗教または信仰の自由に関するICCPR第18条第1項、非差別に関するICCPR第26条と相容れません。また、統一教会の過激な反対派を含みながら、委員会のメンバーに宗教の学者がいないことも、この構想の悪質性を際立たせています。
当然のことながら、その目的と構成を考えると、この委員会は統一教会を標的とし、それに対する特別な差別的体制を作ろうとする意図があっても全く不思議ではありません。
報道によれば、反カルト弁護士の紀藤氏は、消費者庁の検討会に加え、法務省を中心とする省庁間組織で統一教会問題への対応が検討されていることを指摘しました。「ここで行われた議論を各省庁で持ち寄ってもらって、各省庁でできることはそこでやっていただきたいと思いますし、それが難しいということであれば、省庁の枠組みを超えた内閣総理大臣直結の特命担当大臣でも置いてもらって、この問題全体を解決していただきたいと思っています。」(Asahi Shimbun 2022a)と述べています。
※訳注
朝日新聞の日本語版記事では、「ここで行われた議論を各省庁で持ち寄ってもらって、各省庁でできることはやっていただきたいと思いますし、難しいということであればやはり省庁の枠組みを超えて解決していただきたい」のように表現を変えて報じておりますが、実際の議事録を確認しますと、引用元の英語版の記事の内容と同等となっておりました。
この引用は、反対派が統一教会問題の「最終的な解決」を進めるための道具として、必要であれば、決定的な弾圧を担当する特命大臣を任命していることを明確に示しています。
メディアは、委員会がどのようにその目的を達成するつもりかも明らかにしました。まず、委員会は「怪しげな宗教団体に解散を命じる方法を検討したい」(Asahi Shinbun 2022b)と考えています。「怪しげな」という形容詞の使用は、このような提案の恣意性と曖昧さを指摘しています。「怪しげな」とは、疑わしい、不審なという意味であり、法律には存在し得ないカテゴリーです。文科省は消費者庁に対して、統一教会/家庭連合やその全国指導者が何ら犯罪を犯していないことを明確に示しているのです。いわゆる専門家が「怪しい」と判断したからといって、教会を解散させる方法を模索することは、明らかにICCPR第18条に基づく日本の信教の自由の義務に適合しません。それはむしろ全体主義政権が、犯罪の疑いがあるというだけで、個人を逮捕したり、組織を禁止したりすることを彷彿とさせるものです。
実際、全国霊感商法対策弁護士連絡会は、すでに統一教会・家族連合会の解散命令を求めており(Yomiuri Shinbun. 2022)、国会では主要野党が支持しています(Nippon.com 2022)。統一教会/家庭連合の解散を裁判所に請求するよう政府を説得するために、一部メディアの支援を受けて、連絡会による相当なロビー活動が行われています。文化庁と法務省への正式な要請は、いつもの連絡会のよく知られた記者会見に後押しされて、10月11日に提出されました(NHK World-Japan 2022-記事は削除)。
第二に、委員会は「宗教法人への不当な献金」を制限するための法改正を提案する予定です。菅野志桜里委員は、献金に関する法律の改正は、「まともな宗教法人」と「まともでない宗教法人」を区別するために必要だと説明しています(Asahi Shinbun2022b)。CAP-LCは、数十年にわたる宗教・信条の自由のためのアドボカシー(養護・代弁)活動から、常に曖昧な表現が差別への扉を開いてしまうことを学んできました。日本の当局はどのような基準でどの宗教が「まとも」であるか、そうでないかを判断するのでしょうか。ある宗教が「まとも」であるとは、具体的に何を意味するのでしょうか。行政当局は宗教を判断する能力があるのでしょうか?
実際、委員会はいくつかの基準を提案していますが、これらは私たちの懸念をさらに悪化させるだけです。委員長は、「献金を要求する凶悪な行為を禁止する」法律を要求しました(Asahi Shimbun 2022b)。これは、未承諾の献金のみが許されることを示すものであり、もちろん不合理であると同時に、ICCPR18条と相容れないものでしょう。
また、「信者の霊的恐怖心をあおって献金を要求したり、個人が合理的な判断ができない場合に献金を要求したりすること」を禁止する方針であることも読み取れます(Asahi Shimbun 2022b)。ここでも「合理的な判断」という概念が曖昧です。献金者が精神的に判断能力がない場合、日本の法律ではすでに献金は無効です。献金者が精神的に健全である場合、その判断を「不法」と呼ぶことは、信用されていない疑似科学的な洗脳理論(Introvigne 2022; Richardson 1993, 2015)を指すか、あるいは「まともではない」宗教へのすべての献金は定義上不法であるとほのめかして論点を逸らすケースであり、これもICCPR18条に違反するものです。
「信者の霊的恐怖」について、永遠の救いを失うことへの恐怖は、一神教の構成要素です。ユダヤ教やキリスト教の聖書にある詩編111編には、「initium sapientiae timor Domini(イニティウム・サピエンティアエ・ティモル・ドミニー)」という教えがあり、名門アバディーン大学では、これをラテン語のモットーとして掲げています。これは、「主を畏れることは知恵の始まりである」という意味で使われています。イスラム教徒もユダヤ教徒もキリスト教徒も、死んだら地獄に落ちるという恐怖心を確かに持っています。この恐怖心は健全なものであり、善行へと向かう「知恵の始まり」とさえ考えられています。仏教徒も、現世で悪さをすれば、「冷たい地獄」で過ごさなければならないかもしれないし、下等動物に生まれ変わるかもしれないと恐れています。どの宗教でも、「霊的恐怖」に導かれて善行を積むのは、施しや宗教施設への献金などで あり、これは決して日本独特のものではありません。これは決して統一教会に限ったことではなく、「霊的恐怖」の健全性を説く者を法律で禁止することは、ほとんどの宗教を法律で禁止することになるのです。
決して問われることのない疑問があります。それは、献金はどのような目的で使われるのか、ということです。この疑問は無関係ではありません。メディアや反対派は、統一教会への献金は単に指導者を金持ちにするだけだとほのめかしていますが、これは反宗教論争の100年来のステレオタイプです。実際、日本で集められた献金は、東京の病院の建設・設備・維持管理、日本の津波・地震被害者の救済、アフリカの医療クリニックなど、さまざまな慈善事業に広く使われています。
統一教会に対する第三の手段は、統一教会の信仰で二世の子どもを育てている親が「児童虐待」をしていると主張することです(Yomiuri Shinbun 2022)。その証拠として、二世がうつ病になったのは両親が統一教会に関わったからだとする事例や、両親が教会活動に忙しく、子供を放置していたとされる事例が挙げられています。また、統一教会の親が娘や息子の恋愛に干渉していると非難された例もあります(The Mainichi 2022)。
「児童虐待」とは、身体的・性的暴力を指す非常に特殊な法的カテゴリーです。もちろん、「仕事が忙しい」とか「恋愛を制限される」というのは、息子や娘が親に対してよく言うことですが、たとえそれが事実であっても、「児童虐待」とは言えません。統一教会の場合、「まともでない」宗教に子供を従わせることは、自動的に「児童虐待」になるということを暗示しているのです。明らかに、この論法は不人気な宗教的少数派に対して使うことができ、それに基づいて行動することは、ICCPR18条1項と26条に違反することになるのです。
これらはすべて、委員会の真の狙いが、たとえ統一教会が犯罪を犯していないことを認めても、そして提案された新しい法律がすべての宗教の宗教的自由を制限することになったとしても、表向きは民主主義と両立する方法を探して、統一教会を消滅させることにあるということを示唆しているのです。
他の宗教もこのことに気付き、日本が宗教の自由に対するICCPRの義務を尊重しない恐れがあることを懸念しています。私たちは、日本における統一教会に対する差別について、この人権委員会に初めて提出したものが、教皇庁海外宣教研究所の公式通信社であるアジアニュース(AsiaNews 2022)によってその読者に紹介されたことを非常に重要なことと考えており、これはローマ・カトリック教会の公式機関および代理店が私たちの懸念を共有している証拠であると言えます。
2.苦情受付ホットライン
また、私たちは提出文書の中で、消費者庁が、統一教会側の「霊感商法」やその他の不当な行為について市民が苦情を申し立てることができるホットラインを立ち上げていることを述べました。私たちは、これがICCPR18条1項および26条で禁止されている差別の状況を生み出すと指摘しました。このホットラインは9月30日まで機能するはずでしたが、その運用が無期限に延長されました。
消費者庁や法務省のデータを引用して、ホットラインの差別性を証明することができるようになりました。
以下のデータは、2012年から2021年の間に同省に寄せられた、いわゆる「霊感商法」に関する苦情について、一般的なものと、統一教会・家庭連合を具体的に参照したものです(消費者庁2022年)。
下表は、2022年9月5日から22日までのホットラインの通報件数の推移です。(法務省2022年)。
第二の結論は、反対派が主張するような単なる見栄ではなく、統一教会が会員に現行法を理解させ、それを遵守させるためにとった措置が著しく効果的であったということです。すでに数が少なくなっていた2018年を除き、統一教会に関する苦情は継続的に減少し、2012年の229件から2015年以降は100件以下、2021年には30件以下となりました。
反対派は、逆に2022年9月に制定されたホットラインの方が多くの苦情が集まったと反論することができます。ホットラインに電話した人のすべてが、統一教会・家庭連合について不満を述べたのではありません。他の団体に関する苦情もありました。しかし、9月5日から22日までに寄せられた1952件の苦情のうち、1317件が統一教会に関するものであったことから、ホットラインは特定の反統一教会活動として宣伝されていたことが確認できます。同省のホームページによれば、7割が「金銭トラブル」に関するものであり、これには「霊感商法」も含まれているはずです(法務省2022年)。
2012年から27件に減った2021年まで絶えず減っていた統一教会への苦情が、2022年の1ヶ月で突然1317件(「金銭トラブル」だけを考えると922件)に増えたのはなぜでしょうか?実はこれこそが、消費者庁の差別的行為であり、ICCPR18条、26条違反のさらなる証拠なのです。
もし大学生が調査を行い、ホットラインが使用している調査方法を採用したら、教師から嘲笑されるのは目に見えています。ホットラインは定義上、自己選択的なサンプルを作成するだけでなく、統一教会の敵によって容易に操作される可能性があるのです。さらに、ホットラインに電話した人が本人であるかどうか、苦情が真実であるか、誇張されているか、あるいは単なるでっち上げであるかを確認する手段がありません。同省のデータを額面通りに受け取ると、電話をかけてきた人のうち、批判している宗教運動のメンバーだと名乗る人は7.5%、元メンバーだと言う人は24%、残りの人、すなわち大多数の人は親族や友人、あるいは単なる心配性の市民であると名乗っていることが分かります。また、苦情の65%は10年以上前の出来事か、日付が特定されていないものでした。
しかし、これらのデータを額面通りに受け入れる理由はありません。統一教会を中傷したり、その解散を主張する者は、単にホットラインに電話をかけ、架空の不正行為を報告する荒らしの小軍団を組織していたのかもしれません。これは「カルト」に対するキャンペーンの分野では、決して新しいことではありませんでした。2020年、エホバの証人の性的虐待の未報告例について、誰でも参加できるインターネットを通じてオランダで行われた調査の結果は、オランダ内外の反カルトサイトが支持者に呼びかけて調査に参加させ、否定的な報告の大部分を作成していたことが明らかになると、学者や政治家たちによってすぐに否定されました (Folk, Introvigne, and Melton 2020)。
仮にホットラインへの通報が事実であったとしても、2022年以前の省庁のデータと矛盾する形で拡散しているのは、安倍首相暗殺後のように、メディアや政府自身が少数派に対する敵意を煽ると、一部の国民が反応してその集団に対して不満を持ち始め、それが反感と差別を永続させるということを証明しているにすぎません。
したがって、ホットラインへの通報は、委員会の手続きの過程で自己弁護の手段を与えられていない統一教会に対する魔女狩りが日本で行われていること以外、何の証明にもなりません。一般に「霊感商法」に関する苦情は、圧倒的に統一教会以外の団体に関するものが多く、統一教会は長年にわたってその件数を大幅に減少させる有効な対策を取ってきたことが、省内のデータで証明されているのですから。
3.統一教会/家庭連合会員に対する差別と暴力
私たちは、統一教会/家族連合の信者に対する差別や暴力行為が続いていることについて、日本政府に直接の責任がないことは認めます。しかし、これらの事件は、「有識者委員会」と「全国霊感商法対策弁護士連絡会」に関連する弁護士を推進したことによって、政府に責任がある誹謗中傷とヘイトスピーチの木の毒果として人権委員会に考慮されるべきであると、私たちは謹んで提案します。
実際、このような事件は枚挙にいとまがありません。その多くは、統一教会/家族連合の指導者である韓鶴子博士が設立した、国連ECOSOCの総合諮問資格を持つ世界平和女性連合(WFWP)を標的としています。特に、国際的な女性の地位向上を目的とし、その功績が国連で繰り返し認められている団体に対し、ジェンダーの要素を加えて差別するものであり、大変遺憾なことです。
WFWPは統一教会と関係があるため、安倍暗殺事件以降、3000件を下らないツイートで誹謗中傷されました。その結果、これまでWFWPに協賛していた企業が協賛を取りやめ、ホテルや自治体がイベントの会場貸出を拒否し、数年間WFWPに花を提供していた東京フラワーも、今後のサービスを拒否することを通告しました。WFWPの活動に参加しないよう学生に要請した大学もあり、WFWPに関わり続けると夫から虐待を受け、離婚を切り出される女性もいました。
取材した証言者たちは、政府が効果的に自分たちの権利を守っていないと強く感じています。ソーシャルメディア上の誹謗中傷者の一人は、消費者庁の委員会のメンバーである紀藤正樹弁護士と同一人物です。WFWPの被虐待女性たちによると、政府の態度は、そうした虐待の被害者よりも、誹謗中傷者や差別行為を行う人々に同情的であることを示唆しています。
4.まとめ
最も残念なことは、毎日、日本の状況が悪化していることです。統一教会・家族連合に関するヒステリーは、日本における人権と宗教または信仰の自由を守るためにICCPRによって築かれた防護壁を破りつつあります。私たちは、この問題を緊急に解決するよう、あらためて要請します。