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「転職潜在層」と一括りにするのは解像度が低いので整理・図示してみた

DXによるIT投資の増加、スタートアップ投資の加速がなされ、求人倍率の増加と様々な採用チャンネルが乱立、群雄割拠しているというのがITエンジニア界隈の状態です。

中途採用界隈では転職をしようと思って動いている人を転職顕在層、それ以外を転職潜在層と言ったりしますが、転職顕在層は奪い合いのレッドオーシャンになっています。大手人材紹介会社では70社への応募をゴリ押ししたりします。そうでなくても20-40社程度は併願する人は増えています。内定を出してもクロージングコストが高く、個人的にも新卒採用のほうが転職顕在層採用よりも纏まった入社が見込める企業はあると感じています。

転職顕在層がこのような状態なので、転職潜在層へのアプローチが注目されています。しかし一口に転職潜在層と言ってもまだ区分が足らないのではないか、初期に転職可能性に当たりをつけないと無駄な採用工数がかかるばかりではないかと考えるに至ったというのが今回のお話です。

転職潜在層4層

転職潜在層には4層あるのではないかと考えています。図示したものを以下に示します。次にそれぞれの層について見ていきます。

転職潜在層の分類


A.現職にポジティブに残っている層

現職からすると大変結構なことですので、彼らを大事にしてあげてください。

他社からしてみても、現職の労働環境や待遇が明らかに悪かったりしない限り、そっとしておくのが良いと考えています。ここで無理に引き剥がそうとすると煙たがられます。他社から見てこの層に対してできることは、次に示すB層に移行した際に備えて認知を拡げるくらいに留めておくのが鬱陶しがられなくて良いと考えています。

B.いい話があれば動く層

実際の転職可能性が高いのがこの層です。スカウト媒体はログインしたりプロフィール更新をしないと検索にヒットしないのであまり巡り会えません。リファラル採用、Twitter DMやLinkedInのようなSNS経由でアプローチすることで動くことがあります。

C.現職に不満はあるがなんやかんや動かない思わせぶりな層

実際に選考で現職の不満点を言いながらも元の職場に収まる層です。

紹介会社やスカウト媒体にも居り、「市場価値を知りたい」と言いつつ登録をしますが転職はしません。採用工数を割きながら先行し、内定を出した企業からすると「何だったんだ?」となりやすいです。特にスカウト媒体についてはメールを読まなければ良いだけなので、容易に連絡が取れなくなります。

こうした思わせぶりな方は増えています。内定を貰って提示された金額を現職の給与交渉に使いたかっただけの人も居り、採用工数の観点から注意が必要です。

D.現状を受け入れ動かない悟り層

驚きの低い年収、長時間労働でも文句を言うことすら諦めたような層です。階層の深いSIer、SES、地方のSIerなどで観察されます。

「ここでしか自分は働けないのではないか」と、極端に自己肯定感が低い方も居られます。近年では世間的な流れで労働環境が改善されているので、過去の厳しかった状況を振り返りながら「今はこれでも良くなった」と現状を受け入れている方も少なくありません。C層以上に転職はしない傾向にあります。

C、D層を動かす

C、D層を動かす方法としてはM&Aがあります。本noteでも度々話題にしましたが、ここのところ小規模なSIerのM&Aが盛り上がっています。企業ごと買ってしまうことで実装部隊の確保をしようという発想です。M&Aの目的が「人数の確保」と言ってよいでしょう。また、M&Aに際して買い主が対象企業に求める期待は「辞めないこと」だというケースも実際に耳にします。

他社の経営層との方とも話題になるのが、M&Aによって頭数は揃いますし、ビジネスモデルによってはそれで売上貢献につながるケースもあるのですが、大量採用で有名だった人材派遣企業が1-2年ほどして方針転換し、「量」から「質」に拘り始めるケースもあります。

「質」は何を指しているかというと当該スキルセットの経験者であり、即戦力であることを意味する他、リーダーシップやイノベーションへの期待といったものが挙げられます。M&Aによって数を確保できた場合、稀にそうした役割を任せられる方が混じっていることもあるのですが、そういた方はレアです。特にリーダーシップやイノベーションへの期待は商流が深いクライアントワークや、自社サービスのメンバー層だと厳しくなります。

「階層が深い受託慣れ」と、何を任せたいのかという問題

海外採用・地方採用・地方在住ITエンジニアへのインタビューを通して見えてきたこととして「階層が深い受託慣れ」をしている地域というのがあるということを感じています。伝統的にオフショア拠点だったり、商流の深いSIerやSESだったり、情報産業が成長しない状態が続いた結果、エリア単位で上流工程に取り組む習慣が培ってこられなかったというものです。

当初期待していた商流から任せられないことが明らかになった結果、同一社内であってもコミュニケーションや育成コストの高さを前にニアショア化するケースを複数耳にするようになりました。

社内にどういった仕事があり、何を任せたいのかを明らかにした上で招き入れないと、「ただ数を増やしたかった」というだけでは双方不幸になるなという印象です。

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