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【副業】受け入れ企業・人材業界が抱える課題

先立って日経新聞に下記のような記事が取り上げられて居ました。副業がバラ色というのは飛躍を感じますが、問題なく副業できている方も居る一方、2024年現在で見えてきた課題もあるため、整理していきます。

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副業人材受け入れ前の課題

まずは副業人材受け入れ前の課題です。副業人材受け入れ開始のスタートラインに立てない企業の葛藤です。

労務管理コストの高さ

労働基準法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とあり、本業となる会社は副業先の労働時間も把握することが求められています。本人からの自己申告になりますが、きちんとしようとすればするほど導入ハードルは高いです。

副業・兼業の現状と課題 厚生労働省労働基準局提出資料

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000179562.pdf

メンバーシップ型雇用の名残

先の記事内にも下記のような内容がありました。

「メンバーシップ型雇用」の影響もあり、必要な人材の要件定義などが苦手で外部からの受け入れに慎重になりがち

バラ色ではなかった副業

副業の受け入れに慣れている企業であれば、(稼働時間も限定的なことから)最小限の必須スキルを提示しつつ、面接ではコミュニケーションスキルを見るに留め、稼働してから後は考えるような動きをします。これが副業の受け入れに慣れていない企業では、正社員選考のようなものものしさがあります。

こうした企業側の慎重さが理解できなくはないのが『技術顧問』です。顧問紹介業なども多数ありますが、企業側のハードルが高すぎるため、決定に苦労している印象です。観察範囲での見解ですが、顧問と呼んでしまうと顧問弁護士や顧問税理士など経営判断に直結するような職種と競合します。現場の技術顧問への期待は、開発現場の悩みを解消するに当たっての相談相手です。メンターやアドバイザーと呼称を変えるだけで、成約率は改善できるのではないかと捉えています。

平日日中稼働を前提で考えてしまう

副業を手掛ける時間を質問すると、早朝や夜間、週末といった時間帯で稼働される方が多いです。

現在他社の正社員の場合、フレックスの時間外であればスポットでの打ち合わせは応じて頂ける方が多いです。一方、『画面を共有しつつ話し合いながら進めたい』という要望が上がるポジションでは難しいお話です。

雇用を前提で考えてしまう

冒頭の日経新聞でも触れられていた問題です。

正社員採用だと人事予算、業務委託だと事業部予算に計上される企業が多いです。副業人材は採用文脈だと人事が関与しますし、業務上の戦力としてカウントすると人事は関係なくなります。この線引きと予算の出所が面倒になっている企業はそれなりにありそうだと感じています。

副業人材を戦力として数えにくい場合、副業転職媒体やエージェントがアピールしていくのが副業を経てお互いにマッチングを見計らってから正社員転職する『副業転職』があります。中には『正社員採用できます』と言い切ってしまう営業が居るため、雇用を前提にしてしまう企業はそれなりに存在してしまいます。実際は副業をやりたい人材が集まっているので、転職意志は低い傾向にあります。

労働条件の課題

労働条件についても課題があります。

稼働時間の不一致と問題発生時のタスク消化

稼働時間が一致しないという問題です。副業人材が稼働中に問題を抱えた場合、社内の識者に質問をすることになります。稼働時間が一致している場合は当日中に解決できるものであっても、稼働時間が異なることによって翌稼働日や次回打ち合わせ日まで解決されないことがあります。

『飛ぶ』スキマバイト感覚の副業人材に翻弄される

企業側から言われる副業人材についての苦情として、『本業が忙しいので稼働できません』と言われてしまうことが問題です。これでは工数にカウントできないので、厳しいと言わざるを得ません。

エンジニアだけでなく、マーケターや人事でも見られるのが契約の途中で連絡がなくなるという問題です。いわゆる『飛ぶ』状態です。私も巻き込まれたことがありますし、『飛ぶ』シチュエーションを整理すると、お客さんから叱られたり、詰められたりしたことがトリガーであることが多いようです。自社事業内で特に怒られたり詰められたりした経験がない人材によく見られるように感じられます。

副業市場の課題

これまで副業人材の受け入れについて課題を述べてきましたが、副業市場自体も大きな課題に直面しているように見られます。

スタートアップ不況

自社で採用することが難しいレベルの人材を、時給ベースで戦力にカウントできる副業人材と、お金がなく、夢と希望で訴求するしかないスタートアップの相性は良好でした。

しかし2024年現在はスタートアップ投資が滞り、試練の状態です。業績が不振な場合は切りやすい業務委託から調整が入るため、非常に厳しい状態です。

リモートワークの減少に伴う副業意欲の減少

副業が拡がった背景として、リモートワークにより通勤時間が削減され、その浮いた時間と体力が副業に充てられたというものがあります。

しかしここにきて出社への回帰が発生し、週3日出社という企業もよく見られるようになりました。

リモートワークの削減は副業機会の減少に繋がる動きは、下記のWantedlyのレポートでも見られます。リモートワークから出社回帰になったことで、時間の確保が難しくなってしまったことが要因であると考えられます。

「(副業・複業)やりたくない」の回答者は3%→5%→10%と増加傾向に。

ウォンテッドリー、転職と副業に関する調査結果(2023)を発表

仲介業者にとって仲介手数料の標準化が困難

副業を斡旋する媒体は多くありますが、仲介手数料の最適解は不明なままのようです。

週1時間の人材と、週16時間の人材に対し同じ固定の仲介手数料で良いかと言われると疑問です。

中にはSESやフリーランスエージェントのように毎月の請求金額のn%を請求する仲介企業もあります。企業側の腹落ちはしやすいのですが、仲介企業の売り上げとしては小さいので事業として成立するのかは議論の余地があります。

キャズム越えによるスキルレベルの問題

副業ではなく、『複業』と書く一派が未経験・微経験フリーランスを中心にあります。専門性を売るというよりは スキマバイトに近い方が増えています。副業の仲介業者目線では、線引きとブランディングを意識しないと「副業=専門性が低い」という認識が世間に拡がり、市場が荒れていくと考えています。

副業の可能性

ネガティブなことも書きましたが、用途によってはまだまだ活用は可能であろうと考えています。できる人によるスポットでの技術力・知識・経験の提供以外にも下記のようなものが考えられます。

選考の一環での副業、お試し転職

企業による厳選採用が進む中、副業期間でお互いのスキルマッチ、カルチャーマッチを図るお試し転職には期待しています。

候補者と企業間において急ぎの転職で無い限りは合理性が高いのですが、仲介事業者としては正社員入社までの確率が下がり、足も長くなることから手数料をどう着地すれば合理性があるのかは悩ましいところでしょう。 リファラルを中心に進んでいくのかなと考えています。

研修、 リスキリングに向けての動き

下記の記事にもありますが、研修や リスキリング文脈での副業が存在します。

リスキリングについては別途取り上げたいと思いますが、業務の手を明示的に止めないと、新しいことに触れられない方々は一定居られるようです。

副業人材に対して金額を払って技術提供をして貰うのではなく、他流試合と文中にはありますが、知的な刺激を与えるための交換留学的な位置付けにも見えます。副業先の素性も明らかなので安心して送り出せるという観点では、こうした動きは進む可能性はあります。

最後に副業についてこれまで書いてきた記事もまとめておきます。YOORサロンでもこちらの話題には情報を追加してお話しします。後日アーカイブ公開もありますので、ぜひご覧ください。


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