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ドラマ「ユニコーンに乗って」を踏まえた効果的なスタートアップ採用

先日、人材紹介会社に勤める人たちとご飯を食べたのですが、皆が見ていたのがドラマ「ユニコーンに乗って」でした。IT業界をうろうろする上で気になるようです。

時折IT企業を舞台にしたドラマがあるわけですが、特にリッチマン, プアウーマンの時はスタートアップ、ベンチャー界隈の社長の視聴率が妙に高く、ドラマの話題を振られ続けた経験があります。加えてその後の新卒採用で「リッチマン, プアウーマンを見てエンジニアになろうと思いました!」という方も複数名居られたのでドラマの力はなかなか侮れません。

私もスタートアップ・ベンチャー界隈でお仕事をする上で営業活動もするので、話題作りのために「ユニコーンに乗って」も見ておくかと思った次第です。ネタバレを含みますのでまだの方はお気をつけ下さい。

DREAM PONYの採用はこうすれば改善される

実際にドラマ1話を見ていると実際の採用現場とは大きく乖離しているのが気になりました。スタートアップのITエンジニアを中心とした採用に数社関わっているわけですが、採用戦略に関わる立場からも理想的な姿を描いておくかと思った次第です。

採用チャンネル

まずCEOの佐奈さんがTwitterと思われるSNSを活用している点は非常に良いと思います。雑誌など露出はかなりされているようなので効果も期待できます。どこの会社も採用しているので、「あの会社、採用してるらしいよ」と囁かれるような事態は10年近く聞いたことがないですが(往時のウノウとかであったような気がする)、それでも母集団形成はできる可能性があります。

気になったのは小鳥さんが受け取ったお勧め企業のメール紹介のシーンです。人材紹介のように思われます。スタートアップに特化したfor Startupsのような人材紹介であったり、VC系の人材紹介会社であればある話です。しかしそれ以外の通常の人材紹介であれば紹介フィーを踏まえると利用はお勧めし難いですし、そもそも新規契約が与信や人材紹介会社内部のケイパビリティの問題でできない可能性もあります。

求人票

ITスキルの高い大学生と銀行を退職した方が同時に集まっていましたが、どういう求人票なのでしょうか。ポジションが書いてないと思われます。

現在求人票は下記のようなものを書くと効果的です。

  • 当該ポジションの業務内容

  • 募集背景

    • 解決したい課題

  • 現在のメンバー構成

  • 働き方

    • 一日の流れ

  • 想定されるキャリアパス

  • 必須スキル

  • 歓迎スキル

  • こんな人が向いています

  • 開発環境

  • 待遇

    • 有給消化率を含む

  • 福利厚生

面接ステップ

書類選考なし、一発面接、グループ面接というのに違和感がありました。

一発面接やグループ面接が候補者側に許容されるのは有名メガベンチャー以上であり、スタートアップが実施するにはいささか「上から目線」すぎる採用スタイルです。面接官教育をしないと面接官は自分の受けた面接を再現してしまうという傾向があります。恐らくメンバーの中に新卒で就活はしてみた人が居り、大手だけを受けていたのではないかと推測しています。

スタートアップやベンチャーでは企業や事業をより詳しく知ってもらうことから始め、意向を上げることが必要です。候補者ジャーニーマップをつくり、どのように先行して意向を上げていくのか設計することもお勧めしています。特にスタートアップは吹けば飛ぶような駆け出しの存在なので、候補者から見てもキャリア選択をする際には大きなリスクを伴います。丁寧に接触をし、選考する必要があります。

実際にオフラインで集まり、サービスを触ってもらう体験会などもお勧めしています。製造業の会社さんなどでは工場見学が訴求施策として極めて有効でした。来月ある会社さんで実際にサービス体験会を企画しているので集客ページがオープン次第、共有させていただきます。

選考基準

選考基準は自走する力、新しさ、素直さの3つでした。これはジャッジ基準が合わず曖昧です。

これはスタートアップの初期メンバーでよくある問題です。友人同士で集まって働いている分にはお互いのキャラクターやスキルセットを理解しているので問題ないのですが、全くの知らない人を入れるとなると選考基準を合わせなければその場の勢いで決めがちです。

「これからはグローバルなので」とスキルを見ずにコミュニケーションがうまく取れないプログラミングもできない海外人材をITエンジニアとして入れたというものがあります。

特に小鳥さんについては何を任せるのかがよく分からない状態です。「ヒトが居ない部署をたらい回しになっている期待値が分からない初期メンバー」というのはよくベンチャーで見かける事例なので、小鳥さんもそのリスクがあるのではないかと考えています。もしかするとこのドラマは恋愛ドラマではなく、ミドルの転職を扱うキャリアがメインの重たい話になるのではないかとも感じています。

面接官研修

面接官が途中で後ろを向いて小言を言うなど、候補者体験としては最悪の部類に入ります。近年候補者体験が悪いとSNS、転職口コミサイト、そしてGoogleマップの口コミなどに悪評が流れてしまいます。

どのような態度を取ると失礼になるのか、べからず集の事前共有も含めて必要でしょう。同様にテンプレートなお祈りメールも自社のファンが減ることに繋がるため、注意が必要です。

契約形態

いきなり正社員採用というのはお互いにとってリスクが高いです。企業側からすると日本では法律上解雇が難しいので、ミスマッチだった場合に悲惨なことになります。候補者側からしても検索しても風評も出てこないスタートアップに正社員転職するのはリスクです。

特に小鳥さんについては人材紹介会社経由と思われるため、紹介フィーが発生しているでしょう。最近の人材紹介会社の返金規定は入社後1ヶ月と3ヶ月に置かれるため、3ヶ月と1日以上経ってしまうと返金はなされません。これはお金周りが厳しいスタートアップでは大きな痛手となります。

また、直接応募と思われる大学生の森本さんの雇用形態も気になります。このスペックの人材は普通に就職活動をすると1,000万円を越えていくので、大学生だと安価な給与設定では退職になるでしょう。

そこでお勧めしたいのが本noteにも度々登場する副業でお試し期間を1-6ヶ月ほど経た上での転職です。実際に一緒に働くことでお互いの性格もスキルも分かるため、より適切な合意ができます。

だいたい本に書きました

CEOの佐奈さんにはITエンジニアの採用・定着・活躍について一通り書いたこの本を是非お読みいただきたいところです。

他にもオフィスにお金を掛けすぎだなとか、序盤からグッズ作るところあるよねとか、モデルはあの企業だろうかなどと気になるところは多々ありますが、暫く見たいと思います。

共同創業者であるCTOがCEOに片思いをしているスタートアップはまだ観察できておらず、IT百物語に加えたいと思いますのでご存知の方は是非教えてください。

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