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IT人材 2023年トレンド予測:景気後退と人流に注意

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。早速ですが2023年のIT人材予測についてお話をしていきます。

業界全般

まずITが関する業界全般について起きえることについて触れていきます。

スタートアップバブルは落ち着く

スタートアップの政府による旗振りは大いにあるものの、VC周りの動きが膠着傾向にあるために厳しい可能性があると見ています。特にシリーズB、プレIPO期と後半になるに連れて調達が難しくなっています。ここの部分が緩まないとかなり厳しいのではないでしょうか。

プレIPO期の企業でも、EXITを急ぎたい出資者による焦りがあり、市場価値を高めるための売り上げアップの圧力と、無理強いしたことによる組織崩壊の話が数社聞こえてきています。

特にスタートアップ界隈は2022年中に融資を受けられたかどうか(できれば大型の資金調達の着金完了)が明暗を分けつつあります。資金回収のためにもM&Aが活発化する流れになる可能性は十分にあるでしょう。

また、EXIT組のその後の動きも気になります。M&AやTOBの活性化の可能性もあると見ています。私の昔の在籍企業であるネットマーケティングも2022年にTOBされていました。ユーザーベースも同様に上場企業でしたがTOBとなりました。上場企業と言えども吸収されることが分かった出来事でした。

創業から牽引してきた経営者が退任し、事業が迷走するケースが散見されます。私も経験がありますが、先人がやらかしすぎると後続企業の監査が厳しくなります。加えて市場的にも冷めるので注視が必要です。

ITエンジニア採用

続いて採用難が続くITエンジニアについてです。一口にITエンジニア採用と言っても新卒、中途、国外、そしてフリーランスや副業人材なども居ます。いくつかトレンドに触れていきます。

就職氷河期世代型採用に慣れた企業の採用難はより深刻化

2015年までは就職氷河期であり、今ほど少子高齢化を色濃く感じていなかったり、デジタル人材の需要もそこまで高くない状態でした。そのため、割と雑な採用ができていました。低い給与、厚い見込み残業、フル出社などの条件でも採用はできました。2015年以前では「自社サービスである」という条件だけでクライアントワークに疲れた商流の深いSIerやSESから年収ダウン提示でも採用することができました。今でも一部マネージメントフレームワークで耳にしますが、「前職よりダウン提示して入社して貰った人材の方が定着する」という話もあります。しかしこうした低い待遇は、売り手市場の現在では入社する理由がありません。

就職氷河期世代で新卒や第二新卒での就職活動に苦労した場合、労働条件が悪かったとしても「社長に拾って貰った」という恩義で定着している人が散見されます。一度転職してしまうとこの呪縛からは解放されます。一方、現在のZ世代で同様の効果を期待する経営層の方が居られるのですが、合理性を優先する彼らからは踏み台にされることが多く、短期離職(そして次のステージへシフト)に繋がります。

結果、ジュニアもミドルもシニアもいずれの世代からも選ばれないということになり、立ちゆかなくなります。更にITエンジニアに対する認識が「人足」だと、待遇も戦略も据え置きの状態でただただ「採用ができない」というだけの状態になります。ここに対してコストを払えるか、痛みを伴って大きく動けるかで明暗が分かれます。

これは予てよりご相談を頂くパターンなのですが、経営層の態度変容が難しく、意思決定を先送りしがちなパターンです。これは年々増えています。

リファラル採用と高級人材紹介の二極化

スカウト媒体が不調なところが多く、新規登録者に対するスカウト時の返信率が著しく低下している媒体が多々見られます。現状ではスカウト媒体の登録者が駆け出しと未経験・微経験フリーランス、40代後半以上が多いこともあり、経験者でかつ若手から中堅が少なくなっています。ここから挽回できないと厳しい媒体が出てくるでしょう。連動してRPO(採用代行)のうちスカウト専業のところは苦境に立たされるでしょう。

一方でリファラル採用が強い企業はあり、採用経路を質問すると「前職の同僚」と答える場合は少なくありません。特に資金に余裕の無いスタートアップの場合、大手企業で長めに働いており人脈形成が一定できている人材をコアに据え、リファラルを期待するというやり方は定番化しそうです(送り出す側となった企業としては堪ったものじゃないですが)。

また、中堅層の人材紹介経由での入社もまた耳にします。実際に人材紹介経由で転職をした方に話を聞くと「条件の調整を任せられるので満足度が高い」という声もありました。ただし人材紹介フィーが50%というケースが中心であり、ある程度のサイズ感のある企業でないと払うには躊躇う金額感です。

2023年は景気後退の兼ね合いから2022年までの前職比1.25倍以上の高額なオファーは減ると思われますが、これまでの求人倍率が異常過ぎているため、いくらかダウントレンドになっても、むしろ適性倍率に近づくだけという可能性があります。結果、人材紹介会社は「人材紹介フィーが潤沢に払える企業のみが利用できる採用チャンネル」になるのではないでしょうか。

スカウト媒体であっても人材紹介とDBを共有する成果報酬型のものであれば、可能性はあります。人材紹介フィーはこのような形態でも35%以上なので「人材紹介事業者の介在価値とは?」と思うと渋る企業のリアクションも耳にするところです。

海外人材の国内活躍は膠着

海外人材のメリットは下記です。

  • CSを選考することが一般的であり技術力が高い

  • 人数が多い

  • IT界隈で公用語である英語話者が多い

10年前のオフショアブームでは東南アジア、インド、中国を中心に日本の開発シーンに登場していましたが、今は待遇の向上や為替の兼ね合いもあり、即戦力層であれば日本と同等かそれ以上の日本円が必要になります。そのため2020-2022年には撤退する企業と、強気に進出する企業の双方がありました。しかし日本サイドに英語話者のマネージャーが居ないとコラボレーションには至りません。このハードルがかなり高く、中長期で取り組まなければならないアプローチです。

IT人材確保のための新卒採用への回帰は継続

ITバブル崩壊やリーマンショックで辛酸を嘗めたのが就職氷河期世代の新卒時期ですが、コロナ禍、ウクライナ危機、為替の不安定さなどが重なってもそこまで絞られそうにないのが24新卒採用です。

2019年までの豪華なオモテナシ採用はなりを潜めそうですが、何かしらの開発経験やAI周りを中心とした研究経験があれば苦戦するようなことはなさそうです。苦戦するシナリオがあるとすればもう一段政情が不安定になったときではないでしょうか。

人手不足と働き方改革と「サービス事業者が本当はやりたくなかったこと」

最後にIT業界に関わらず起きるであろう人材動向についてです。

コロナ禍になり、表向きは感染防止のために辞めたサービスはいくつかあります。ウィズコロナ時代になり、再開しても良さそうだけども「しない」意思決定が明らかになっていきます。働き方改革などを名目にしつつ、コストカットは行われていくでしょう。小売り店舗の営業時間短縮とかはしれっとスタンダードになるんじゃ無いでしょうか。

年始のサロンではIT人材動向について2022年振り返りと更に踏み込んだ2023年予測を行います。後日アーカイブで前半部分を公開予定です。後半部分は会員限定公開です。

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