フィルムの熟成期間/#328
日頃フィルムの現像でお世話になっている山本写真機店さんが繁忙期らしく、フィルムが現像から返ってくるのに時間がかかるそうだ。フィルムの醍醐味は、すぐに確認できないこと、現像から返ってくるまで時間がかかることが挙げられる。
フィルム写真は現像しなければ、どう写っているか分からない。だからこそワクワクする。想像通り撮れてる場合もあれば、想像以上に悪いとき、いい時もある。まるでおみくじのようで、返ってきたフィルムをひとつ、またひとつと確認する。撮ってすぐに確認できるデジタルでは味わえない感覚で、パッと削除するのをためらうほど、失敗した写真でも愛着が生まれる。
そうやって写真を確認できるまでの間は熟成期間といえる。
なんの熟成かというと記憶の熟成を指している。写真を撮るときは色んな感情が生まれているが、シャッターを切るタイミングは心が動いたとき。好きであったり、魅力的だと感じるような瞬間が多い。そのため、その写真には自分自身の感情や個性が現れる。
そのときどんな感情だったのか、何に惹かれていたのかが記憶に蓄積されていく。記憶は思い出さなければ徐々に薄れていく。フィルム現像から帰ってくるまでの間は、ちゃんと撮れてるかな?あのときこうだったよな、こんな感覚だったなと、その時を思い出しながら振り返る回数が自然と増える。
その間で記憶が少しずつ思い出され、薄れる速度を緩めると同時にいろんな感情や発見に気付く期間でもある。そういった期間を経てみる写真はやはり特別。そのため、デジタルで撮った写真よりもフィルムで撮った写真は記憶が鮮明だと感じる。すぐに確認できないもどかしさはあるけれど、そこも含めてフィルムの魅力。
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