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地域のためになる行政職員と議員の関係性とは?〜前向きな自治には信頼が必要〜

議員さんの知人も多くなってきたので若干言いにくいですが、リアルな話、自治体の行政職員が一番苦手とする相手は議員さんではないかと思います。私も自治体で新人の頃は「議員=怖い人」だと思ってました。。

私の行政職員としての先輩の中には「政治サイドはろくなことがないから関わるな」とか「骨の髄までしゃぶられるぞ」という人もいましたが、これはハッキリ言いますが、そんなことはありません。議員さんも1人の人間であり、まずそこを認めるべきです。

一方で議員さんを過度に恐怖の対象にするのは、行政職員の議員さんの関係性の難しさを表現しているものでもあります。今回はそのあたりのことを書いてみます。


実は対立が問題ではない!行政と議員は対立的なのが普通のこと

まず第一に、構造的に議員と行政は対立的になります。市民の"個人的な困りごと"をひろって解決するのが議員さんの仕事だからです。十分に行政が満たしていることを「いいねいいね」とだけ言っていてもなんのソリューションも提供していないことになります。そしてこれをしなければ票が得られずクビにされる=選挙で落選するという大前提の潜在的不安があります。

まずこの前提は、サラリーマンで超強力な日本の労働法に保護されている行政職員サイドはもう少し歩み寄って理解してもいいのかなという気がします。(ちなみに行政職員は公務員だから保護されているわけではなく、一般的な労働者としての保護が強力です。)

そのため、議員は基本的に行政に対して対立的なポジションを取らざるを得ません。デフォルトが対立的なのであって、それが普通ということです。だから行政に対立的であること自体は、即ち行政職員との関係性に必ずしも問題を引き起こすものではありません

行政をダメにする議員の関わり方は「ハラスメント」と「重箱の隅をつつく」

それにも関わらず、行政職員に「イヤな議員は誰?」と聞いたら、自治体ごとに特定の数名の名前があがると思います。そういった議員さんの関わりは、かなりハラスメント的です。大多数の議員さんは当然良識のある方ですが、ハラスメント的な人は明確に他者の人格をリスペクトする力に欠けてしまっています

私が20代の頃、課長が不在の時に課長席にかかってきた電話を取った時、相手が「職員間で非常に有名なハラスメント議員」でした。そして話すないなや、

「あー課長いないの?キミ役職何?まーキミでもいいや名前は?メモ取って」

とタメ口で偉そうに一方通行で喋るわけです。お前の召使じゃねーぞこのボケが、という話ですが、一事が万事というか、あらゆるところで高圧的だったり一方的な関わりをするので「パワハラ議員」として有名になってしまっています。本人は「自分は行政への追求が厳しいから嫌われている」と自称していますが、大いなる勘違いです。

ハラスメントは法的にとか責任としてどう追求するのかと別に、関係性にマイナスの影響を及ぼします。関係性が悪ければ情報共有が最小限になったり防衛的な関わりが増えますから成果に結びつきません。

また行政手続きの粗探しをするとか、重箱の隅をつつくような関わりも、現実的には組織に莫大はマイナスの影響を及ぼします。ただでさえ最初から過剰な行政のガバナンスをさらに強化する方向に作用するからです。

過剰なガバナンス強化は「チャレンジする職員の排斥」「ブルシットジョブの量産」「杓子定規な行政職員の対応」を強めていくので、表面的にはキレイになったとしても、本質的な問題はどんどん奥に隠れていきます。もうこれは12年の経験に基づく体感になってしまいますが、多少の改善があったとしても、差し引き大きくマイナスです。

口のうまさを競いあい、ケムにまく行政職員

もちろん何事もどちらか一方が悪者で、もう片方がそうではない…ということはありません。行政職員側の問題も指摘することは可能です。

まず議員さんと話していてよく聞くのが、「行政職員が全く腹を割って話してくれない」というものです。その政策については担当する専門の行政職員がいます。だから議員さんとしては真面目な目的で政策とその状況を聞きたいのですが、どうもうまくケムにまかれてしまってちゃんと答えてくれない。下手をすると「自分はよく分からない」とかプロ意識のないことまで言われてしまう…ということすらあるのです。

これは議員さんと対比した行政職員の立場も影響しています。そもそも行政サイドの担当課レベルではリソースがありません。個人的に共感して「はいやります!」なんて言っても、金も人もありません。それどころか、既に多くの仕事を持っており手も頭も容量がいっぱいです。お気軽に仕事を持ち帰ってきた日には、部下に「一体あなたは何をしてるんですか・・・」と呆れられて突き上げられます

あまりに頻繁な異動で知識と経験がないのも普通です。これは行政側の問題なのですが、組織の問題であって、個人としては厳しさや無力感の中にいることも多いです。

ただ、それゆえに過剰にケムに撒くのが賞賛されたり、その技術を求める風潮が生まれやすいというのも現実としてはあります。「議員なんて何も分かっていない」と内心で思いながら、口上で右から左に受け流す。それができる人が「仕事がデキるヤツ」としてもてはやされる。

そしてやっぱりそういうリスペクトのなさというのは無条件に漏れ出てしまうもので、これが冒頭の「行政職員が全く腹を割って話してくれない」という不信感に繋がっていきます。

で、そういうのが積み重なってくると、だんだんイライラしてくるわけです。そりゃ当たり前です。「適当に言いくるめてやろう」という意図で話されていたら、人としてムカつきますよね?そして行政職員への当たりが強くなってくる。それを受けて行政サイドもより一層防衛的になる。悪循環のサイクルが起こります。

行政職員と議員の個人的意思が合致したときに変化が起こる

両サイドの方と話していると、それぞれ相手方の立場が経験の枠外に行きがちなのかなと感じています。まずいったん現実的な問題は置いておいて、しっかりと自分たちの立場を分かち合うことが大切です。お互いの立場と感情がちゃんと分からないと、好ましい解決策を合意することは難しいです。

前職の最中には全国のまちづくりの現場や人とも多くの知己を得ましたが、やはりいい地域は行政職員と議員との間に個人的な絆があります。それは旧来的ななれ合いではなく、同じ目的のために立場を超えて協力し合おうという意思の結合です。

有権者としては、行政職員の採用に票を投じることはできません。一方で議員さんに一票を投じる権利は持っています。

あなたは、どんな議員さんに投票をしますか?


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