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会ったことはないけど最も影響を受けたアーノルド・ミンデル博士の訃報を聞いて。

少し違う話から入ってみます。

小さい子どもの認知能力は自動的に成長しますよね。うちの子はこのところ顕著な発達のタイミングで、ママと興味深い話をしていました。

歯磨き中でうがいをするママに向かって、

「ねぇ、ねんねしたいよ!」

「ねんねした後にうがいしようよ!!」

と。、

面白いこと言うな…というのと同時に、「ついに時間感覚を獲得したんだな」とも感じました。人間に自動的に生来備わった理性、空間と時間への認識能力。いわゆるアプリオリな純粋理性、その時間について。

そう、時間は私たちの意思とは関係なく、勝手に流れていきますよね。だからこそ、人生の手綱を握るためには、時間のことを身体が知っておく必要があったのかもしれません。

・・・

昨日、プロセスワークの創始者ねあるアーノルド・ミンデル博士が亡くなったという話を聞きました。84歳だったそうです。妻のエイミー・ミンデル氏がFacebookの公開投稿でみんなに知らせてくれていたのです。

ミンデル博士のプロセスワークは、私も資格を持っているシステムコーチング®︎の源流にもなります。システムコーチングはマリタとフェイスという2人が立ち上げており、それを日本に持ってきた方から私はトレーニングを受けています。つまりざっくり言えば、ミンデル博士は私の師匠の師匠の師匠です。ひいおじいちゃんですね。面識ないですけど。

プロセスワークは「炎の中に立つ」対話をとても大切にしました。追いやられ隠されている本音(ディープデモクラシー)を歓迎し表に出すことを推奨します。それによって、がらんじめに停滞していた世界が前に進むから。

ミンデル博士は旧ソ連関係国間の対話や北アイルランド独立派(テロリスト)との対話などにはじまり、また様々な人種対立や差別などのシーンでも対話をリードされてきたそうです。

そんなミンデル博士のプロセスワークの影響を受けたシステムコーチングのトレーニングでは、本気で炎の中に立つという体験をして衝撃が走ったこともありました。

ミンデル博士の数あるエピソードの中でとても好きなものがあります。激しい対立が起こっているワーク中にそっと抜け出してトイレに行き、黒いストッキングを頭から被って戻ってきて、衝撃であっけに取られたワーク参加者たちに「私は誰ですか?」と質問して場を大きく変えた、というエピソードです。これだけは真似できる気がしません、、笑

しかし、少なくとも対立の炎の中に立つ勇気を持つことはできるようになりました。炎の中にある大切なものを見つけるために。そして、実際に自分の中にある他者への愛に気づくことができたのは、炎の中に立つことができたからだと思っています。

ミンデル博士の訃報を最初に聞いた時、私はある企業でちょうど組織開発WSのファシリテーションをしていました。まさにミンデル博士をルーツに持つ技法を実践していたときのことです。休憩時間に仲間からの連絡を見て、とても驚きました。

ミンデル博士にはいつか直接お会いしたいと願っていましたが、結局は叶いませんでした。本当に叶えようとしていればきっと叶っていたでしょうが、時の流れに手綱を預けてしまったのです。

亡くなった後には、もうその人に会うことはできません。

しかしそうであっても、私は勝手にバトンを受け取っています。申し訳ないですが、ミンデル博士の意思はさておき、そのエッセンスはもう既に色々なところに拡散しているんですね。

そして、私は私なりの道を走らせていただきます。

時の手綱を、もう一度握りなおそうと思いました。

R.I.P

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