【マッチングアプリで26人と出会い、6人とお付き合いし、全員とお別れした話】④動帝ひびきくん1/2
温厚篤実なお人柄
動帝ひびきくん（当時28歳）との出会いはYahooパートナー。
20代ユーザーが他のマッチングアプリに比べてかなり少ないYahooパートナーで、私より一つ上の方とマッチングできるのは結構レア。
プロフィール画像に自身の写真は一枚もなく、載せているのは、これがあのウユニ塩湖…？！と思うほど美しい湖の写真や、見ているだけでマイナスイオンを感じられそうな森の写真など、景色の写真ばかりでした。
人は見た目じゃないけど、やっぱり顔写真がないとどんな人なのかまったくイメージがつかないし、信用にも欠ける…。
そう思い検索画面に戻ろうとしましたが、せっかくの20代だったので一応プロフィール文も見てみることに。
「こんにちは。ご覧いただき誠にありがとうございます。
僕は都内の大手運送会社で総務人事をしております。旅行が好きで、海や湖、森林など自然豊かな美しい景色を見に出かけます。
今は実家に住んでおり、休日は車で両親を好きな場所へ連れて行ったり、料理をしたりしています。今のうちに少しでも親孝行ができたらと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします」
なんと誠実なプロフィール…(´⊙ω⊙`)！
休日を両親と過ごしているというのはちょっぴり気になるけれども、
アプリの出会いなのでこのくらい真面目そうな人の方が私は好き。
よし、顔分かんないけど会えたら会ってみたい！
彼のお堅い文章に逆に惹かれ、いいねを押してみました。
すると、数時間後に返信が。
「ご連絡ありがとうございました(^^)僕は動帝ひびきと申します。まいこさんとお呼びしてよろしいですか？」
いいねのことを、”ご連絡”…！笑
今まで呼び方を確認してくれる人なんていなかったぞ。
「こちらこそ、メッセージありがとうございます！はい、ぜひそのように呼んでください。私も、動帝くんとお呼びしていいですか？」
前回の鎗黙くんとは打って変わって、ゆっくりで穏やかなやりとり。
メッセージでは自分のことを積極的にお話ししてくれました。
佐川急便の本社で人事総務の仕事をしていること、
早稲田実業、早稲田大学出身で、学生時代は野球に明け暮れていたこと、
男子校出身で女性と関わる機会がほとんどなかったこと、
一人っ子なので、身体の悪い両親のそばにできるだけいたいと思っていること。
1日2〜3通のやりとりでしたが、動帝くんの人柄がとてもよく伝わり、今まで出会った人には感じたことのなかった穏やかな感情が芽生えてきます。
メッセージ交換を始めて一週間ほど経った頃、動帝くんからデートのお誘いが。
「もし良かったら今度、ランチでもいかがですか？イタリアンが好きと仰っていたので、良かったらお店を探します」
あぁ、ランチを提案してくれるって安心…！
前回の鎗黙くんがトラウマになっている私にとって、動帝くんはもはや天使です。
「ぜひランチ行きましょう！美味しそうなイタリアンがあればぜひ行ってみたいです」
早速日程調整へ。
動帝くんと私の住まいは近く、場所はお互いの中間となる川崎駅になりました。
育ちの良さそうな動帝くんとのお食事デートに恥じないよう、デートの前日、急いで銀座に出かけた私は、気がつくと2万円ほどする綺麗めワンピを購入していました。
勝負ワンピを着ていざデート本番！
待ち合わせ場所に現れた、キレイなブルーのネクタイを締めた上下スーツ姿の男性。
170cm後半はありそうな長身で、ジャケットの肩とズボンの太もも部分に余裕がありすぎるくらいの細身。
ちなみにその日は8月初め、太陽がギラギラ照りつける猛暑日です。
「あっ、こんにちは。動帝ひびきです。まいこさんでお間違いないでしょうか？」
黒髪短髪、切れ目の眼鏡で、誰が見ても穏やかそうな笑顔。動帝くんでした。
（えっ？！思ったよりかっこいい！）
なぜか勝手に、短足でやや小太りのおじさん風を想像していた私は、自分の中でのギャップの大きさに驚きを隠せません。
「あ…？！あっ、動帝くんですか！すみません、顔写真がなかったものですぐに分かりませんでした」
「あっ、そうでしたよね。いきなりお声かけてびっくりさせてすみません。じゃあ、行きましょうか」
メッセージの印象通り、丁寧で穏やかな動帝くん。
セミの大合唱が聞こえる猛暑の中、わざわざ上下スーツでネクタイまで締めて…めちゃめちゃ暑そう。
いやぁでも、その真剣さはありがたい。
動帝くんが案内してくれた先は、ラチッタデッラでした。
ラチッタは映画館がメインですが、その建物を含めた一画はまるで小さなディズニーランドのような洋風の街並みで、とても川崎駅とは思えない異空間です。
「一度下見に来たんですが、お洒落なイタリアンを見つけたので予約してみました」
今日のために下見に来てくれていたのかー！
動帝くんの一つ一つの心遣いに感激です。
店内は、高級感とカジュアルさを適度に兼ね備えた、陽の光がたっぷり入る明るい空間。
白いテーブルクロスがかけられた大きな丸テーブルに案内されると、テーブルには既にたくさんのフォークとナイフ、スプーンが並べられていました。
（ヤバイ、こういうの、外側から使うんだっけ…内側から使うんだっけ…右からとか左からとかあったっけ…）
パスタだろうが高級ステーキだろうがなんでも箸一つで食べてしまう私にとってはかなりのピンチ…！
とりあえず、運ばれてくる料理に合わせて適切に道具を選び、キレイに口に運んでいる動帝くんをコッソリ真似してその場をしのぎます。
動帝くん、めっちゃ慣れてるな。
こういういいお店、きっとよく行くんだろうな…両親と一緒にかな？
食べ方がキレイすぎる…本当に育ちがいいんだな。
「普段、あまりこんないいお店来ないので嬉しいです！」
そんな風に話を振ると、
「僕も一人では行かないんですが、よく両親をレストランに連れて行ったりはしますよ。父が経営者なので、接待で使われるお店を色々を知っていて」
うん、やっぱりそうか。
いや、全然いいんです。
しかし、口が悪くて下品で卑猥な自分の父親と、天然でドジでヒステリックな母親、安い居酒屋ばかりが行きつけの酒豪の妹を想像すると、まるで家柄が違うように感じてしまいました。
「まいこさん、その水色の綺麗なワンピース、すごくお似合いです。お恥ずかしながら僕は今まで女性とお付き合いしたことがなくて、その上まいこさんがすごくお綺麗なので、緊張してしまいます…」
頭に手を置き、照れながら話してくれる動帝くんはとても可愛らしかったのですが、ああ、やはり私と身分が全然違う…。
レストランでフォークとナイフをどこから使っていいのかすら分からない世間知らずの、家系ラーメンと油そばが主食の下層階級。
高級レストランで家族揃ってしばしばお酒と食事を嗜む上流階級。
付き合っては別れを短期間に複数回繰り返したことによる無駄な男性経験を持つ下品な女と、
女性に触れたことすらない、純白で美しい童貞。
「えっ、いやいやそんなに褒めていただいて恐縮です。動帝くんはお家でお料理もするんですよね？」
「はい、しますよ。うちはトマト缶にこだわりがあって、イタリアからホールトマト缶をいつも取り寄せるんです。食器も、世界中のいろんな国のものがあるんですよ〜」
イタリアンから直輸入したトマト缶…
酸っぱそう…
カゴメじゃダメなの？
最近は百均でもすごいオシャレな北欧風の食器あるよ…
なんだか自分とはかけ離れた世界に住む遠い人のように感じてしまいましたが、人柄はとても落ち着いていて、気遣いのできる素敵な方でした。
無事に最後のデザートとコーヒーまでたどり着き、私がお手洗いに行っている間にお会計を済ませてくれているスマートぶり。
お付き合いの経験がないとのことでしたが、本でも読んで勉強しているのでしょうか。
川崎駅の改札まで着くと、動帝くんが急にピタッと立ち止まり、何か言いたげに私の方をじっと見つめてきます。
「あっ、あの…！今日はお会いできて、本当に嬉しかったです。今日のお礼で…あの…その全然大したものじゃないんですが、良かったら、こ、これ、どうぞ…」
動帝くんが差し出したのは、紙袋に入れた何やら細長いプレゼントボックス。
「えっ、えぇ？！そんな申し訳ないです！」
慌てて答えましたが、どうしても渡したいと思ったのでもらって欲しい、とのこと。
私がどんな人かも分からないのに、お高いランチコースを予約して、その上最後にサプライズプレゼントなんて。
本当に申し訳ない気持ちでしたが、ありがたくいただいて帰りました。
情熱の赤いバラ
家に着いてさっそく箱を開けてみると、それは…
真っ赤な一輪のバラでした。
可愛らしい細めの花瓶に入った、一輪バラのプリザーブドフラワー。
ま、まじか…。
普通にインテリアとしてとても可愛いですが、嬉しさよりも若干、驚きと戸惑いが勝ります。
すぐに動帝くんへ連絡。
「今日はプレゼントまでいただいてしまって、本当にありがとうございました！可愛い薔薇、とても気に入りました」
「いえいえ、とんでもないです。僕もとても楽しかったです。良かったら今度は横浜の方に遊びに行きませんか？まいこさん、みなとみらいが好きだと仰っていたので」
あぁ、この人の好意は本物だと確信した文章でした。
一度しか会っていないのにここまで好意を寄せられると、ありがたい反面とまどいの気持ちも大きくなりましたが、
真摯な彼に私も好感を抱き、2回目のデートをすることにしたのです。
そのデートで、動帝くんのさらなる暴走ぶりが発揮されることになるとは知らずに……
次回は、動帝ひびきくん②暴走する動帝くんと船デート編です！お楽しみに♪
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