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PTA+πr²

『運』というものに幼い頃から縁がない。
急いでいる時のレジの順番はいつもイレギュラーなことが起こり後回しで最初に並んだのに最後になってる。
2年連続お正月に大凶のおみくじを引く。
子供会で配られたお菓子は私だけ何か足りない。しかも2年連続。
小さなことが積み重なると貧乏くじひくのに慣れてきてなんならヤケになって自ら引きに行くくらいだ。
運がない男の子が出てくる好きな古い漫画がある。くらもちふさこの『Kiss+πr²』変な題名だ。主人公は運のない家族もいない雑賀くん。彼は日常的に運がない。彼は些細な不運を淡々と諦めの混じったモノローグで語る。語られる不運が自分と似ていて共感した。頭の中に運が悪い=雑賀くん(私)という図式がこの時出来た。
彼の転機はクールな憧れの女の子を振って選んだ歳上の彼女との出会い。笑顔が似合い何事もよい方に解釈し前向きに捉える性格の彼女に感化され雑賀くんは運が向いてくる。素敵なお話だ。
選ぶパートナーによって運まで変わる。
くらもちふさこにしてはわずか2巻で終わるこの漫画のハッピーエンドは当時全くツキがないとおもいこんでいた私に希望を持たせてくれた。
とはいえ現実は甘くない。
漫画のように自身の選んだパートナーとの出会いで運が向いたり急に良くなる訳もなく、それどころか更に運が無いと自覚したのは子供のPTAの役員決めだった。
兄弟二人義務教育期間13年のあいだ実に9回も役員をやっている。
決して人望とかそういう類の話ではない。大抵の人には役員を1年引き受けるのは避けたい仕事のはずだし9年やってるのはよっぽど運がないかお人好しだ。長男の入学時ママ友からの情報で「6年のうちどうせ一度やらなきゃならないなら高学年での役員はやることが多く損、なるべく低学年がいいよ」と聞いた。1年の時は免除で学校から指名。そして2年生の役員決め当日。委員長、副委員長、広報、バザーと4名。委員とかガラじゃないしバザーは大変って聞いたし広報かな。「ハイハイ!広報で!」と立候補した。
そして第1回目の集会でおのれの選択が完璧に間違いだったことに気づく。ママ友情報にはオチがあった。「広報は取材もあるし月イチでミーティングありなうえ誌面作りまで…オススメしないよ、委員長は逆にヒマ」ということだったらしい。
「オイオイ聞いてないよ…」
どうして情報を伝える時毎回最後まで言ってくれないんだ…。
下の子を抱えての月イチ編集会議に毎回ちゃんと参戦した。
1年後、立派な新聞が無事に出来上がった。
しかし我が家は長男3年生の時に急転直下転校が決定。
どこの学校も大抵役員1回が建前だ。
役員必ず1回。振り出しに戻る。
この1年なんだったの…。
それからというもの役員決めアンケートにうっかり『誰も居なければやってもいいと思う』に〇をしたため任命され(〇をしたのは私だけだった!)次の年担任に懇願され断りきれず引き受け、そして今度こそと娘が2年の時早めに済ますため委員長に立候補。無事拝命。やれやれ今年は暇かと思うのもつかの間、担任が転任ということで普段の倍の仕事量。お別れ会の仕切りや色紙の為各家庭に電話をし依頼から作成まで、花束の手配、集金と大変な労力だった。フゥ。
毎年毎年役員決めの度に身を小さくしているのに先生に目敏く見つけられ声をかけられる。毅然と断ってジャンケンで負けて役員になったこともある。
そんなのってあり?
この時はあんまりな結果に友達のところにすぐさま愚痴りに行った。
雑賀くんの彼女ばりに前向きな友人。のんびりと聞いててくれるのでずいぶんと彼女に話を聞いてもらってきた。出会って何かが変わったというならパートナーよりは彼女だ。そんな彼女が腐る私を諭して言うに「役員をすると先生方とも顔見知りになり学校のこともよくわかって情報も先に入ってくるんじゃない?子供のためになることだってあるからいいことかもしれないよ」そんなもんかと一瞬納得しかけ正気に戻る。
「あのね、そんなこと1度もなかったから!情報なんて入ってこないし情報通のお母さんの方がよっぽどよくご存知。やっぱり性格なんだよ。情報を得ようとする執念それに尽きるよ」
言いかけてやめた。
にこにこと笑顔の彼女。反論する気が失せ「そうだね」と力なく応えた。
最初からそんなことにまるっきり興味のない私にはお得感ゼロ。
まぁ、ね。個人的に良かったことをあげるなら広報の時学校の九官鳥に逢いに行くのを楽しみにしてた下の娘の笑顔とかお別れ会の盛り上がりで演出頑張ってよかったなとか学校の草むしりの仕切り上手くいったな、そういうの。仕事の満足度だったよ結局。自己満だけどね。ほんとにうまくいったのかは知らないけど。
PTAは面倒だし存在意義を問う論調だってある。慣例も変だしおかしなこと理不尽だなと思うことはたくさんある。もちろん積極的に参加している親御さんだっている立派だと思う。それでも今すぐ保護者と学校との関わり方が急に変わらないなら私のスタンスは決まっている。『拝命したならちゃんと』変なことには意見して(通らなくても)やらなくていいことは省くよう促す(省けなくても)しかない。ただ1年やるのより面倒だけどね。
そしていよいよ人生最後の役員決めの時が来た。立候補ナシ。クラスの保護者半分にして15人であみだくじ。さすがにこれは行けるだろう…気合いが入ったその結果は…え、マジ?15人いるのに!何なんだこれ?ある?こんなことって!
結局最後の役員も無事委員長を拝命。こういう運なのね、私。
こうして私のPTA活動は運のなきままで終わりを迎える。
「はァなんか納得いかね」
報告する先はやはりいつもの友人で「やっばりそういうお役目なんだよできる人がやるようになってるんだから」あげてるのかさげてるのか何となくいい言葉でまたもや納得しかけた。
どうにももやもやする。腑に落ちない。
だって彼女は私と同じ兄弟二人なのに1度も役員やったことがないのだから。やらない人は1度もやらない、それがPTA。
そして雑賀くんの物語同様複雑な表情の私にむかって優雅に彼女は微笑んだ。

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ちょっと寂しいみんなに😢