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「がん」と「うつ」【患者さんver】 #11

こんにちは、緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

今回のテーマは「がん患者さんとうつ」です。

先日、がん患者さんからのご相談がありましたのでご紹介いたします。

先日、私は乳がんと診断されました。初期がんで手術すれば治ると言われたので手術を行いました。手術後、腋窩リンパ節にがんが飛んでいると言われ、追加の抗がん剤治療が必要だと言われました。とてもショックで、夜も寝られなくなりました。昼間、一人で家に居る時など急にドキドキして心臓が止まってしまうんじゃないかということもしばしば続きました。その後、抗がん剤治療を始めたところ、吐き気がひどくなり、食事が全くとれなくなりました。高熱が続き入院が必要となりました。退院後も腹痛や下痢が止まらなくなり、体のしんどさが強くなってきました。がんが全身に増殖したと思ったので、主治医の先生に相談したところ、緩和ケアに紹介されました。そこでは私がうつだと言われました。うつは弱い人間がなる病気で、なった自分も弱い人間ですよね。家族に迷惑ばかりかけています。ホスピスに行って、家族に迷惑をかけないで最期の人生を過ごしたいと思います。そう思っているので家族になんといえば良いでしょうか。

ご相談ありがとうございます。

よくおつらい気持ちを仰ってくれましたね。本当にありがとうございます。

初期がんではなく、がんが進行していると言われとてもショックでしたよね。

抗がん剤治療でも副作用が強くおつらかったでしょう。様々な身体症状があり、がんが全身に広がったと思ったのですね。

うつだと言われ、うつは弱い人間がかかると思ったのですね。なので自分も弱い人間で、家族に迷惑をかけていると思ったのですね。末期がんだと思って、家族に迷惑をかけないためにホスピスに行こうと思っていんですね。

実はあなたの場合、うつによって身体症状が前面にでている状態なんです。なので、あなたは末期がんではありません。

まずはうつの治療をしっかり行って、その後、がんの治療をしっかりと行っていきましょう。

うつになると、身体症状としては不眠、倦怠感、食欲低下などが出てきます。うつによって抗がん剤の副作用も強く感じます。

自分を責めてしまう自責感、死にたいと思ってしまう希死念慮もうつの症状の一つなんです。

うつは弱い人間がなるのではなく、むしろ生真面目な人が多いんです。なので、あまりご自分を責めないで下さい。

大事なことなのでもう1度言いますが、あなたはうつと抗がん剤の副作用での身体症状が出ているだけなので、末期がんではありません。

うつの治療をしっかりと行い、一旦、抗がん剤を休薬すれば必ず身体は回復します。

緩和ケアチームでうつの治療をしてもらい、抗がん剤治療については主治医の先生とよく相談するようにしましょう。

がんの診断、再発の診断、病状の悪化などは、がん患者さんに多くの精神的ストレスを与えます。その結果うつになることは非常に多いです。

一般人のうつ病、適応障害の有病率1割未満ですが、がん患者さんは15%~25%と言われています。

うつは誰しもなる可能性がありますが、そのままにしておくとうつが悪化し、自殺など最悪の結果になるケースもあります。

また、うつ病の患者さんは、症状が出始めた際、はじめから精神科や心療内科にかかる人は少なく、内科などの身体科にかかる場合が多いのが現状です。

なぜなら、患者さん自ら、自分がうつであると思える人は少なく、身体の不調を訴えることが多いからです。

身体や気持ちが少しでもつらいと感じたら、(特に身体がしんどいと感じたら)もしかしたら自分はうつかもしれないと思い、主治医の先生、医療スタッフあるいは緩和ケアチームに相談してください。

がんと診断された時、誰しもがうつになる可能性があります。うつは弱いからなる病気ではありません。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。

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また次回お会いしましょう。

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