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褪せた表紙をなぞるようにして【14歳の栞日記】


朝は眩しい、帰りは西日で目が開かない。
そんな生活を送り綴る毎日、
ずっとずっと気になって仕方なかった

映画『14歳の栞』を観ました。


あの頃、一度も話さなかったあの人は、
何を考えていたんだろう。

『14歳の栞』公式サイト
https://14-shiori.com

とある中学校の3学期、「2年6組」35人全員に密着し、ひとりひとりの物語を紐解いていく。

『14歳の栞』公式サイト
https://14-shiori.com

飾らず、ありのままに背伸びするそんな映画作品。


公開・上映は2021年の春。私は元々、この映画の企画・製作を行ったCHOCOLATEさんに憧れと大好きを抱くファンであるため、どんなものが世の中に綴られるのか心待ちにしていたんだけれども、
感染症の流行が止まらないこと、自分自身と生活を守ることにもがいていた当時の私は、鑑賞できないまま流れる時の中で生活していて。
タイミングって、自ら重ね合わせにいかないと掴めないときもあることを理解しているからこそ悔しかった。ありのままの生の映画で、大切にしていることがたくさんあるから映画館でしか観れないということも分かっていたから生まれてもないはずの喪失感や後悔を抱いていた。

大切なものを大切にする作り手の方々が美しく見えた。


2022年3月、再上映の発表。どうしても逃したくなかった。どうもどくどくと打つ胸の気持ちは「行かないとダメ」というより、「観にいけば何かわかる気がする」という感覚に近かった。

今もなお、問題なく過ごせるとは言い難いが、
上映期間にたまたまクーポンが使えちゃうことを知って、他にも行きたい場所ややるべきことがあった。呼ばれているに違いないくらい、タイミングを重ねに重ねて劇場に足を運んだ。(個人でできるかぎりの対策・配慮を行っています)




始まりは雄大な自然、早起きしすぎた日になんとなく点けて観る自然動物番組を思い出した。命が繋がっているのは分かっていつつも、ちょっと異質な感じがした。面白い。

そこからふと、2年4組の毎日に潜り込んで物語が綴られていく。ありふれた毎日で、特別な毎日がそこに見える。


本当にそこで生活が送られていた。ちょっと騒がしくて楽しい生徒やそれを日常だと受け入れて明るく過ごす生徒、ほんの少し心地を悪く感じて自分の居場所を探す生徒も、そこにいない生徒もいた。私もきっとこんな日々を過ごしていた。いたことも、見たこともないクラスのどこかに、私も存在していたのだ。
14歳を生きた身としては、削りたての鉛筆のようにぴんぴんに尖った青さがすごく可愛らしくて、懐かしくて、かなりむずがゆかった。
当時も様々な感情を抱いて歩んでいたと思うけど、少し離れたところから見る14歳は、真っ直ぐいろんな方向に矢印が向いていて、ピュアさを感じた。あまずっぱ〜〜〜〜〜!たぶんあの頃大人にこんなことを言われていたらちょっとうざったく思うだろうけど仕方ない。どうみてもぐつぐつとエネルギーを巡らせているその姿にあまりにも共感してまうし、それでいてもうわからないのだから。


一人一人、名前がある。見えていないだけでそれぞれのストーリーと人生は進んでいる。当たり前だけど完全に触れることができないそこに目をつける面白さと、そこに映っては消えていくみんなに馴染んで物語は流れていく。

ありのままも、飾った姿も、あまりにも素で不思議な感覚になる。いつかこの映画を見返すかもしれないみんなのことをあれこれ勝手に心配して、お節介だなあとセルフツッコミして。
良くも悪くもありのまますぎて、でもそれが間違いであるとも思わなくて、そっと教室の片隅を覗き続ける。



「吹奏楽部が演奏している曲、14歳の私も演奏してたな。ここの流れのこのパート、難しいけどキマったらかっこよくて最高なとこだ!!」「B♭懐かしい」
「体育や球技大会、座っているときに無駄に土いじりとかして、小石積み上げてた〜〜〜雨上がりの湿ったグラウンドで体育座りをするのがしっとりしててめっちゃ嫌。」

どんどんと14歳の私が溢れ出てくる。



プリントが机の奥でくしゃくしゃに詰まっているのを発見して変な声が出ること、母がつくるお弁当がおいしくて、食べ終わるとなくなってしまうことが悲しいから「もう一回お昼休みを最初に巻き戻したい〜!」と食いしん坊すぎる駄々をこねたこと。
集会は結構退屈で、ハイソックスをくるくるとくるぶしまで下げて、ひとりでも友達とでもドーナツを作ったこととか。
学校でジュースがお試し解禁されたとき、お昼の放送業務中にうきうきしながら飲んでいたいちごみるくをカーペットと制服にこぼしてしまってその日の半分、ほのかに甘い匂いを漂わせ続けたこと(カーペットと先生、勉強疲れでお腹が空いていた友達、ごめんなさい)。

最後の文化祭、クラス発表で制服をみんなで交換したこと、
部活の発表を終えてクラスに戻ったら、観ていてくれた友達からのメッセージで机がデコレーションされていて、太陽のようにあたたかく迎えてもらったことが嬉しくて、照れくさかったこと。
その文化祭の舞台を観に来た母以上に、同級生の母(母同士も知り合い)がびっくりするくらい泣いて成長と演奏に感動してくれたこと。


誕生日が来るクラスメイト宛にメッセージを書いて、先生がアルバムにしてくれる制度があったこと、今もそのアルバムを掃除のたびに読み返すこと。

勉強に向き合えなくなったり、寝ても寝ても足りなくて休み時間はほとんど机に伏せて寝て、授業中に眠ってしまったらみんなが起こしてくれたこと。
すごく行きたかった学校には行けないことが決まって、焦りながら他の高校を探して見に行った先で初めて降りた駅は、自然が多くて陽に照らされた風景は「まるで『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界だ…」と感動したこと、
ラッシュに巻き込まれて遅くならないように先に帰りの切符を買ったこと、
もう一つ 学校を見に行った帰り、「時間も遅いから近くの駅からすぐ帰ろう!」「そういえば…あっちの駅から帰る切符買っちゃってる!!!!!!」とダッシュして息切れしてスポーツドリンクを買って飲んでまたダッシュして…そしてなんとか帰ったこと。車内の暖房が暑くてたまらなかったこと、ヒートテックの暖かさをちょっぴり憎らしく感じたこと。

小さなことも中くらいのことも大きなことも、
全部自分のどこかにあり続けたあの瞬間がふわっと目の前に現れる。

この映画は、私の14歳の話だった ?
映る人も場所も全部知らないのに、知らないはずなのに
今私が観ているのはいったいなんなんだろう。

まだ子供か大人かも曖昧なその瞬間、私たちは、何に傷ついて、何に悩んで、
何を後悔して、何を夢見て、何を決意して、そして、何に心がときめいていたのか。
これは、私たちが一度立ち止まり、
いつでもあの頃の気持ちに立ち返るための「栞」をはさむ映画です。

『14歳の栞』公式サイト
https://14-shiori.com

ああ。
栞、こんなところにたくさん挟まっていたんだね。

読み過ぎて、帯と表紙がしわくちゃなあの文庫本、
懐かしい存在になっているあの内容、

どこかに挟んだままの栞。


今ここにもう一度挟み直そう。






今思えば、
走り続けていたこと、向き合い方が分からなくなったこと。体も心もバランスが崩れて新しく構築されてまた崩れての繰り返しだったこと。今思えばきっと頑張ることに目一杯、手一杯で力を逃がせなくなっていたんだろうなと理解してあげられる。
陽とか陰とか、席替えとか、「なんかちょっとやだな」が積み重なることとか。なんでもないことを悩むこととか、

ちっぽけがどんどんと大きくなっていく感覚をずっと忘れられずにいる。



__
そこに映るみんなも、ここにいる14歳の私も
みんなみんな健やかで幸せでいて!

この頃よりちょっとだけ大人の私は、
あなたたちが想像しているよりもずっとこどもで、でも大人で、
胸を張れるようなかっこいい人じゃないしむしろどこか恥ずかしい部分もあるけど、どうしたって君の幸せを願っているよ。

忘れていいから。
ほんの片隅で、どこかの誰かが想っているということを
どうしようもないときとか、ちょっとだけ落ちこんだときとか、自転車がパンクしたり電車に乗り遅れたり、いつでも思い出して鼻から笑ってください。

きっとどこかにいる私もその存在に勇気をもらって、
またあの頃の私を愛おしく思える気がします。
_



手紙を認めるように、そんな風に思いが溢れてくる。

主題歌の『栞』は、FM802 × TSUTAYA ACCESS! キャンペーンソングから始まった物語。馴染みのあるラジオ局から生まれたこの音楽、尾崎世界観が思い出させてくれた栞が大好きな私は、クリープハイプの『栞』が主題歌なのもグッと繋がりを感じていた。
『14歳の栞』は、この曲からインスピレーションを受けて生まれた映画らしい。(クリープハイプ オフィシャルサイト「映画「14歳の栞」の主題歌に『栞』が起用!」

なんだか嬉しくてにやけてしまう。

好きなものと好きなものの繋がりは嬉しいし、
この映画を観ることができてよかったと切に思う。



私みたいな人はいないけど、
私もあの子もあの人もみんないた。



途中から読んでも意味不明な35人の話を通して、
私は、あの頃に新しく栞を挟むことができた。そして挟んだままの栞をたまたま見つけることができた。見つけたかったものも、見つけたくなかったものもあったけど、どれもこれも私の物語だった。またここで栞を挟んで、いつかの私の標にしておく。

毎日は断片的のようで地続きで、でも今日は今日として始まって終わる。
当たり前の毎日に栞を挟む意味は、休憩するためでも振り返るためでもなんだっていい。いつかその栞を目印に 何かが起きるかもしれないし、何も起きないかもしれないのだから。







P.S.(的な)

私はCHOCOLATEさんのものづくりが本当大好きです。

4年前にSNSで見た6秒商店も、そのとき知ったCHOCOLATE Inc.も、
それから、クリープハイプのすべ展も、1年生インターンの仕掛けも、他にもたくさん、どれもこれも面白くて愛が溢れていて…
「やられた〜〜〜〜!!!」と毎回思う。悔しくなる。やきもちを焼くかのように。そして嬉しくて楽しくて、面白くて、わくわくが止まない。

そんな日々に楽しみをくれて、わくわくの続きに胸が躍ってうずうずする存在に出会えて最高にハッピー!!!


いつか一緒にお仕事がしたいと願って努めて、
今晩は楽しみにしていた『グッバイ、コスモス』を鑑賞して月曜日を迎えようと思います。




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 『14歳の栞』 公式サイト https://14-shiori.com/
 クリープハイプ -「栞」(MUSIC VIDEO) https://youtu.be/j4XsCJHfplg










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