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旅先で本を買うな、ばか。


「これください」
レジに本を持っていく。

お支払いして、ホクホクしながらリュックにしまう。

よいしょっと肩に背負った瞬間。
ズシっと重みを増したリュックに後悔する。

「旅先で本を買いすぎるなって言ったじゃん、バカ」
1分前の自分に文句を言うも、時すでに遅し。

やれやれ、と思いながら重いリュックを引きずって歩く。


…そして、数時間後にはまた素敵な本屋さんを見つけて入り、同じことを繰り返す。

喉元すぎれば熱さを忘れるとは、まさにこのこと。

文庫本なら軽いからいいでしょと侮るも、数百グラムずつ重みを増すリュックは確実に肩に食い込んでいく。

でも、これは決して私のせいではない。
どうしても心惹かれる本は、は手にしっくりと馴染んで離れようとしないのだから。

旅先で偶然出会って、気になってしまった本は必ず私に何かしらのメッセージをくれる。

数年後にも心に残っているような言葉。
それが手に入るなら、この肩の痛みなんて我慢できる。

本に言葉に狂った女の旅路は、険しい。
でも、背中は幸せな重さで満たされている。

この重さと同じだけの感動が、そのうち心にもずっしり残るのだ。
自分ためだけの最高のお土産。

さぁ、今日はどれから読もうか。

《おわり》

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