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【読書】江國香織さんブーム再燃

最近、江國香織さんの作品への読書欲が再燃している。
特に「はだかんぼうたち」という作品がとても良かった。
江國さんの作品の魅力は、なんといっても曖昧な恋愛模様。
この曖昧さは、もはや彼女の十八番だ。
鯖崎くんというキャラクターにすっかり魅了された。
若くて自由な彼はおそらく付き合ってはいけないような男なのだろうけれど、どうしようもなく魅力的な描き方をされている。
彼の存在が、物語には不可欠だ。

また、この作品には、女の子同士の友情が描かれており、「ホリーガーデン」という作品と似た雰囲気を感じた。
江國さんの作品には、女性同士の繊細な関係性がよく表現されている。
ただ一緒にいて楽しいだけでなく、どこかひりりとした気持ち。
時に恋人より家族より自分のことを深く理解している「女友達」。
この摩訶不思議な存在を、江國さんは甘苦しく描く。

「はだかんぼうたち」には、他の江國さんの作品と少し異なる点がある。
それは、妻子を持つ大人の男性の視点や、孤独を愛する女子大生など、多様な人々のただの日常生活を描いているところだ。
群像劇を読むと、なんともいえない人生の哀愁を感じる。
それは、シェイクスピアの舞台でどんちゃん騒ぎを俯瞰してみているような感覚と似ていた。
自分の瑣末な悩みから、意識をふわっと引き剥がしてくれるような、そんな感覚。

特に私の心に残ったのは、親娘関係だ。
この作品では、小学生の娘とその母、41歳と35歳の娘とその母という2組の親子が登場する。
親からの視点のパートと子どもからの視点のパートがあり、両側から親子関係を考えられるのが面白かった。
私は母との関係に悩んでいたが、作品を通じて、もしかしたら母から見たらこういうふうに見えるのかも、という気づきを得ることができた。

江國さんの描く世界観に再び惹かれつつある。
彼女の作品は、日常の中にある小さな幸せや悲しみを見つけ出す。
それだけじゃない。
幸せと悲しみは切っても切れないものとして循環することを、美しい言葉で表現している。  

江國さんの小説でまだまだ読んだことがない本がたくさんある。
甘美で気怠い恋愛小説が彼女の十八番だが、それだけではなかった。

恋愛小説は苦手だし……と思っている皆さんにも、ぜひ江國さんの作品を手に取ってほしい。きっと、新しい発見があるかもしれないから。

《おわり》

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