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Mai Muraguchi / Solo Exhibition「0 -ZERO-」

2023年12月20日~27日、表参道のGallery Blue3143にて開催されたMai Muraguchi初の個展「0 -ZERO-」

初めての個展。
初めて、自分で考えた作品を世にだした。

まだ夏の暑い日、2023年のうちに展示をしたいと考えていた私は、作りかけの作品をもって、今回の展示場所になるGallery Blue3143へ出向いていた。
まだ誰にも見せていない作品をギャラリーの方に見てもらうという状況はとても緊張するものであり、一体どう評価されるのだろうかという不安もあったのだが、夫婦で出迎えてくれたオーナーの方は、自分で想像していた以上に今回の作品のコンセプトを面白がってくれ、ぜひこのギャラリーで展示をしてほしいと言ってくれて、不安にまみれていた私はとても勇気づけられました。


Gallery Blue3143のInstagramはこちら


作品を見て、涙してくれる人も…

8日間の展示期間中、総勢100名以上の方が見に来てくれた。
その中には、ネットで知ってきてくださった方や、道をあるいていてふらりと立ち寄ってくれた方も多くいた。
中には、どうしてこのコンセプトにしたのかを熱心に聞いてくださる方や、ご自身の経験と重ね合わせてお話をしてくださる方なども多くいた。

そんな中、良い意味でとても衝撃が大きかった出来事がある。
それは、ふらりと立ち寄ってくれた方が、私の作品を見て涙を流してくれたこと。それも期間中2人も。
まさか泣いてくれる方が出るとは夢にも思っていなかったので、本当に驚くとともに、何かが伝わったんだな…と、胸の奥からじんわりとした気持ちが込み上げてきた。

他にも、アーティストとしての態度がいい、と褒めてくださる方や、久しぶりに面白い展示を見た。いい年末を迎えられそうだと言ってくださる方。文章がとてもスッと入ってきて良い、テーマと素材の選び方が良い。自分自身の問題から一般的な問題へと昇華できている…など、思いもよらない嬉しい言葉を本当にたくさんいただけました。
(じつは展示期間中はできる限り、手帳に頂いた言葉たちをメモしていた)


展示の内容

本展ではMai Muraguchiが展開するコンセプチュアルアートを中心とした作品を展示し、「自身」と「他者」をつなぐコミュニケーションをテーマとした新たな表現を展開しました。


コンセプト

此処にたしかに存在するのに
目に見えず 触れられず それなのに 干渉しあい
そしていつの日か 忘れてゆく
そんなものが この世界にはたくさんあって
そんなものに振り回されているわたしたちは
こうして今日も生きている

“地獄とは他人である„
自らの存在を知るためには
他者の眼差しが必要だ

Concept
They are here, yet invisible, untouchable, yet they interfere with each other, and one day they are forgotten.
There are many such things in this world, and we, who are swept up in them, are still alive today.

Hell is other people.
To know ourselves, we need the eyes of others


家族をつくるもの

母が亡くなった時
はじめてまともに父と会話をした。
それくらい、父とのコミュニケーションは、30年以上ほぼ皆無であった。

私は再び、ここ5ヶ月ほど父と同じ建物に住んでいる。
料理など一度もしたことがなく、車の免許も持っていない父は
田舎の閑散とした住宅街の、おそらく徒歩圏内のお店から
頼んでもいないのに毎日食べ物を私のために買ってくる。

これは、父が私に投げかける唯一のコミュニケーションだ。
かくいう私も、毎日この弁当を食べ
父からの投げかけが、自分の血肉になっている。

家族になりきれない私たちは、同じ建物の中で
まるで家族のように振る舞ってすごしている。

What makes a family
When my mother died, I had my first proper conversation with my father. That is how little communication I had with my father for more than 30 years.
I have again been living in the same building as my father for the last five months. My father, who has never cooked and does not have a car licence, buys food for me every day without asking, from a shop in a quiet residential area in the countryside, probably within walking distance. This is the only communication my father throws at me. As it happens, I also eat this lunch every day, and what my father throws at me has become my flesh and blood.
We are not a family, but we act like one in the same building.

印刷:Bremen Inc.

What makes a family. 2023, Photograph, Print, Fake gold leaf, 182 x 257 mm, Japan


消された情報

これは、標本である

樹脂に閉じ込められたドキュメント。
封入されている紙の束は
実際に法的に、世の中の人に見せてはいけないとされているものです。

世の中には、機密文書や世に出せない情報が多くあり
確かにどこかに存在はしているのに
誰の目にも触れられず、まるで存在していないかのようだ。
しかし、どこかに必ず存在している。

誰の目にも触れさせてはいけないものが
目の前に確かに存在している、という矛盾。
世の中ではそういったことがきっと多くあって
だけれども私たちは、つい目に見えるものだけを信じてしまいがちだ。

Deleted Information
This is a specimen.
A document trapped in resin. The bundle of papers enclosed is actually something that, legally, is not supposed to be shown to the world. There are many confidential documents and information in the world that cannot be released to the world, and although they certainly exist somewhere, they are not seen by anyone, as if they do not exist. However, they do exist somewhere. The contradiction is that something that should not be touched by anyone exists right in front of our eyes. There must be many such things in the world, but we tend to believe only in what we can see.

制作:株式会社イナック
この作品は、イナックさんの協力なくしては実現できませんでした。本当に素晴らしい作品に仕上げていただき、有難うございました!


Deleted Information. 2023, Document, Resin, 350 x 464 x 100 mm, Japan


墓碑

自分の心の内側と向き合うと
様々な声に気が付く。

そんな声を文字として書き起こし
板の上に実際に書き記した。
そうしてその上から、パロサントを混ぜ込んだ絵具で
自分のネガティブな感情を閉じ込め、浄化させた。
前に進むため、墓碑として制作しました。

Tombstone
When you face your inner self, you will notice various voices.I transcribed such voices as letters and actually wrote them down on the board. Then, on top of that, I trapped and purified my negative feelings with paint mixed with palo santo. In order to move forward, I created this work as a tombstone

Tombstone. 2023, Board, Palo santo, Acrylic paint, Japan


占風鐸

飛鳥・奈良時代に日本に渡来した占風鐸。
この風鐸の音が聞こえる範囲に住む人たちには
災いが怒らないと信じられていたそう。

目に見えないものを信じる力は
かくも豊かなものであろうか。

Divination bell
The fortune-telling bells came to Japan in the Asuka and Nara periods. It is said that it was believed that people living within hearing distance of these wind bells would not be afflicted by disasters. The power to believe in the unseen is such a rich thing.



Like an Artist 2023.8.27 - 12.14

8.27からオフラインでフリーペーパーとして書き溜めている私的な記録。「まるでアーティストのように」このタイトル通り、私は自分自身の変化と今この時の考え、興味のある事などを記録していくことにしました。
今回は、年内に発行したこの日記をまとめたものを配布させていただきました。

通常は、中目黒にあるフリーペーパー専門店:Only free paperさんで配布させていただいております。


Backstage

年が明けて2024年。
私はこれから、ロンドンの大学で現代アートを勉強しにいってきます。
2018年にデザイナーとして独立し、中村政人さん率いるAPSに入ったときは、まさかここまでアートにどっぷりのめり込むとは自分でも思っておりませんでした。
2023年中に展示を行いたかった理由は、24年から、ガッツリアートに身を投じるぞ!という自分自身への決意表明でもあったのです。

この展示を見に来てくださった方々、本当にありがとうございました。
今後も私は、Instagramを中心に発信を続けていこうと思います。

Mai Muraguchiのインスタグラムはこちら


そして最後に、今回この記事とInstagramに載せている素晴らしい写真を撮影してくれたフォトグラファーの小野くん、いつも本当にありがとう。

さて、これからロンドンに行ってももっともっと頑張るぞー!


ありがとうございます!いつの日か、サポート頂けた方の元へ何かしらの形で届くよう、大切に使わせていただきます!