村上ソングズ③「孤独は井戸」
Anita O'Day が歌うLoneliness Is A Well・・・You Tubeで動画が見つからなかった。(なんとか探して某オンラインで聴くことはできたが、ここに載せることができない。残念ながら。)超マイナーな曲なのである。おまけに素晴らしく暗いのだ。それにも関わらず苦労して聴いて日記書こうなんて思い立ったのは何故かというと・・・。それは「井戸」だからだ。村上さんと井戸! もうニヤニヤが止まらない!
村上さんは言う
僕は無類の「井戸好き」なので、当然ながらこの曲は大好きなのだが、井戸のことはさておき、とても味わい深い佳曲なので、是非一度耳を傾けていただきたい。
やっぱり~~。あやふやな記憶を辿れば、「ねじまき鳥クロニクル」には井戸があった。時間も空間もワープする、異世界への出入り口が口を開けていた。最新作の「騎士団長殺し」でも、井戸と言えなくもない地中に掘られた四角い部屋が出てくる。現実の井戸は怖いが(幼い頃庭の一隅にある古い井戸が恐ろしかった)、村上作品の井戸には心惹かれるものがある。
さて、歌詞の訳文は一部だけ抜粋すると・・・
・・・略・・
孤独は井戸だ。
不幸せが住み着く
深くて暗い穴。
私は孤独だった。
不幸せは墓所だ。
黒い盛り土に、悲鳴が
求められぬ雨となって降る。
私は不幸せだった。
・・・略・・・
とまあ、こんな調子だ。結構長い歌詞なのに、ほぼこのような調子で続き、最後の3行で、愛し愛される人に巡り合ってハッピー💛で終わる。
しかし、鬱状態がリアルなのに反して、最後の部分はとってつけたみたいで不自然な感じがすると村上さんも書いているが、わたしも同感だ。だからハッピーでよかったけれど、それで終わりじゃないかも・・・みたいに思ってしまう。この曲が超マイナーで終わっているのも納得だ。
村上さんはこんなことも言っている。
たしかにナイトクラブで「孤独は井戸だ。不幸せが住み着く深くて暗い穴」だみたいな歌を切々と歌われたら、酔いもいっぺんに覚めてしまうかもしれない。まとまる話もまとまらないかもしれない。
でも、村上さんはこの曲が嫌いではない。馬鹿にしている訳でもない。それでもAnitaの歌は味わい深いから聞いて欲しいと紹介しているのだ。
確かに、1回聴いただけだが、雰囲気のある素敵なヴォーカルだったし、巻き込まれて暗い気持ちになることはなかった。
ところで、当のAnitaはどうしてこんな歌を歌ったのだろうか。
記録しながら考えた。多分鬱状態の人に対してもあたたかい眼差しと共感をもっていたからではないだろうか。それがヴォーカルの雰囲気に滲み出ているのではないかと思った。(聴いている人も井戸の底に引きずり込むような歌ではなかった。)
だから、村上さんも惹きつけられたのだろう。
わたしも何回も聴いてみようと思う。