Born to Be Blue 「ブルーに生まれついて」イーサン・ホークのチェット・ベイカー

前から観たかった「Born to Be Blue」を週末に鑑賞。記録したいことをテキストにまとめたかったけど、ここのところエネルギー切れで・・・ぐずぐずしていると忘れそうだし、小出しで綴ることにする。

 チェット・ベイカーは名前だけしか知らなかったわたし。確か村上春樹さんがどこかで書いていたと思う。しかし「Born to Be Blue」は大好きな曲だったので、この映画のことを知った時に記憶のどこかにしまい込んでおいたのだ。
 この映画は、ヤク漬けで身を滅ぼしたジャズトランペット奏者チェット・ベイカーと彼を支えたある女性の物語だ。

 チェット・ベイカーは1929年生まれ。アメリカ出身だが麻薬の問題でアメリカで演奏できなくなり、最後はオランダで1988年、早すぎる謎の死を迎えた。この映画は彼がイタリアで投獄されていたところから始まる。釈放されて、ドキュメンタリー映画を撮影するという企画でアメリカに呼び戻される。そこで出会ったのが相手役の黒人女性ジェーンだ。彼女はいつか本物の女優になることを夢見ている女優の卵だった。

 チェットは憂いを帯びた甘いルックスと卓越したテクニックで、若い頃はジャズ界のジェームズ・ディーンともてはやされていたが、麻薬で身を持ち崩していた。なんとか再デビューを果たしたいチェットと芽が出ない女優の卵はいつの間にか恋に落ち(いや、最初ジェーンはビジネスライクでいこうと抵抗していたけど・・・あんな風に甘く迫られたらね~笑)彼女はチェットを支えていくことになる。

 しかし、せっかく立ち直ろうとしていたチェットは、麻薬の売人に襲撃されて前歯と顎を砕かれてしまう。ピアニストが指を潰されるようなもので、もうトランペットを演奏することが叶わない状況だ。映画の話は消え、チェットは再び絶望の淵に立たされる。

 それでも必死でトランペットにしがみつくチェット。血まみれになって音を絞り出す姿は壮絶だ。そして彼が麻薬を断てるように、義歯を入れた状態でも素晴らしい演奏ができるように、ジェーンは献身的に尽くすのだ。

 とうとう、ディジー・ガレスビーや友人の計らいでバードランドで演奏できるようになるのだが・・・。

 まさにBorn to Be Blue・・♪「ブルーに生まれついている」という言葉が悲しい。

 チェットの演奏は素晴らしかった。マイルス・デイヴィスにも認められた。

 ・・・しかしジェーンは気が付いた。とうとう彼が麻薬の誘惑に負けたことを。そしてチェットと決別する。

 イーサン・ホークは素晴らしかった!ラストでは泣けて泣けてどうしようもなかった。まさか泣くことになる映画だとは思わなかったから、不意打ちにやられた感じ。

 作品中のジャズの名曲がどれも素敵で、鑑賞後ジャズばかり聴いているわたしだ。