見出し画像

Expansions and visions 'Love'

今日、11月5日から、イギリスは12月2日まで、1ヶ月間のセカンド・ロックダウンに入った。
以前のようなパニック行動はないが、なかなか終わりの見えない限界体勢続きで、私たちは正直憔悴しはじめている。

これは、このセカンド・ロックダウンの発表があった11月1日、牡牛座の満月ブルームーンの輝く日のできごと、たくさんの人の心がひとつになった時のお話だ。

イギリスは、長いロックダウンが続き、音の現場は、ステージと観客が切り離された’ネット’でのオンラインライブが主流となった。
それはそれで、これ迄にあった’国境’の壁はなくなり、世界中どこからでも、アクセスできて、そのライブ配信を聴くことが可能になった。
でも、リアルなライブが身に染み混んでいる私達にとって、音を全身で浴びるように体験できるライブと、スクリーンの向こうを眺めてのライブは、やはりどうやっても超えられない壁があって、逆に、早く又、生のライブが見られるような時がやってくる事を切望した。

9月に入り、ロンドンのジャズの老舗ベニュー’ロニースコッツ’は、各テーブルの間にクリアパネルを設置して、随時変わっていくソーシャルディスタンス含め、公共の場所での様々な条件を配慮した設定で、観客を入れたリアルなライブが始まった。その幕開けは、JTQの三日連続公演で、リアルライブを待ち望んでいた人達で全日フルハウスとなった。又、そのライブの模様はYoutubeを介してロニースコッツから世界へと無料配信され、又、アーティストに個人応援コントリビュートすることも可能なシステムへと生まれ変わった。

そして、インコグニート率いるブルーイの別プロジェクト ’Citrus Sun'(シトラス・サン)の11月の公演が決定、チケットは即刻完売。(くしくも、去る3月、インコグニートのロニー・スコッツで予定されていたライブはロックダウンに突入した為、全日程キャンセルとなった経緯があった。それが、ようやく、そして、それ以降、初のリアルライブだったから、3月のライブキャンセルで地団駄を踏んだファン含め、実に’待望’のライブだった)幸運にも一席を確保できた私は、最新アルバムの’ Expansions and Visions’ をしたためて、ドキドキしながら、電車に乗り込んだ。

その会場に向かう道すがらの事。友人から、この数日、懸念していた’セカンド・ロックダウン’が11月5日から決行される事になった、というお知らせが届いた。
予測してなかったわけじゃないけど、正直、なんという、ショックだっただろうか。

今宵は、ロックダウン明け、はじめてのライブで、長い長い期間、待ち焦がれていた、音の現場に向かっているというのに。
街も人も、ようやく、以前のように、活気が戻ってきた、と、強く感じて、イヤフォンから流れてくる音に、音符がダンスしているような未来が見えるような気がして、心は強くときめいていた。
セカンドロックダウン決行のニュースを聞いて、そんな気持ちに不安が入ったのは、私だけではないはず。

同じ時間に会場に向かっていた人達、そして数時間後に演奏する彼らも、この、やっとの’再会’が次のロックダウンを前に又封印されてしまうなんて、と思ったに違いない。とても、とても、複雑な気持ちで、電車に乗っていた。

久しぶりに、辿り着いたロニースコッツは、コロナ禍以降の仕様に変わりながらも、依然と雰囲気が変わらないよう、キャンドルライトが似合う、細かい配慮がなされた会場になっていた。

そして、その夜を心待ちにして集まった人達の様子はとても穏やかで、どのテーブルも笑顔に満ちていて、キャンドルライトそのもののように暖かかった。

私にとっては、最高の特等席のバーカウンターに腰掛けて、まるで、長い事旅に出ていて、ようやく家に帰ってきたような居心地の良さに浸った。

そこにはいろんな思い出があった。目の前で演奏してたはずのアーティストが間奏の間にいつの間にか、隣にいて、ステージを一緒に並んで見ていたり、又は、昔の音仲間の懐かしいメンツに遭遇して、元気かい、というような会話をしたり。

私はいつもひとりで会場に向かっていたけれど、そこにつけば、ひとりではなかった。皆、同じ音楽を楽しみに集まってきた現場の仲間のようなものだった。人はひとりでは生きていないという事、又、音楽と人が共によりそう力を毎回のように実感した、そういう思い出の場所だった。

リーダーのブルーイへの、音楽家として、人としての尊敬、敬愛は止まなくて、ライブに行くたびに大きくなる。彼が音楽を通して世界に発信していることは、途轍もなく深淵で愛に満ち溢れている。

そんな待ちに待った、再開ライブなのに、セカンドロックダウンが決定になって、単純に再会を祝すとはいかない夜となった。

でも、この夜の、シトラスサンの演奏に、ブルーイが語ったメッセージに、私たちは、凄く凄く勇気をもらったのだ。

これから、益々、長い夜の寒い時期の到来で、人の温かみがとても力になる時、だけど、私たちは、会うことさえままならなくなってしまう。ライブもない。隔離された人間関係の中で、試されることもあるだろうし、そもそも、その人間関係さえ、リアルが遮断されてしまう、会話のない一人暮らしの人達だって一杯いて、気分転換になるジムを含めた公共施設も又閉鎖、で、経済的打撃に加えて、メンタルケアも懸念されてる。いろんなことが心配で不安。

久しぶりの生のライブ演奏の音は全身を包むように、私たちに響いた。

さすが、神レベルと言われる彼らの演奏に、私たちは身も心も魂も揺さぶられた。

でも、はっと現実に返ると、正直しんどい。これから、又ロックダウンだなんて、しかも一ヶ月も。そして、やっと見れたのに、又しばらくは、これが見納めなんだと思うと、虚しさが走った。
その繰り返し、そして、後半にさしかかり、曲の合間に、ブルーイが語った。

「みんな、又 厳しい時がもう少し続きそうだ。でも、こんな時だからこそ、労りあって、助けあってやっていこう」

客席が湧いた。同感、共感の歓声。

「まず、何よりも、御年配を大切にしよう!」

私たちはこのコロナ禍で既に旅立たれた、家族のお見送りさえも許されなかった人達の事、そして子供や孫に会えず孤立を強いられている方達の事を思い浮かべた。とても、大切なことだった。

同時に、会場に集まっていた親子テーブル席のあちこちが湧き上がった。(レベル2の規制で一緒に住んでいる人以外とは同席できないから、4人掛けのテーブル席は、20代~50代と見受ける二世帯親子の姿があった)

客席の若者たち、娘、息子達は同席してる親に向かって、うん、うん!とアクションして、それを受けた、親御さんたちはとっても嬉しそうだった。

「そして子供達!未来そのものの子供達の希望や夢が、消えてしまわないよう、大人は全力をもって応援しよう!」

親御さん達が、子供を見て、うん、うん!って、拳を振り上げた。周りの大人もだ。その親世代の熱いリアクションを受けて子供達が、ありがとうって、照れ臭そうに返している、そんな様子が、あちこちのテーブルで飛び交い、それを周りの客席が暖かく見守って拍手していた。それを目前で見ている自分は、心の中で焚き火がどんどん大きくなっていくような、なんともいえない温かい気持ちになって、両腕を高くあげて拍手した。

「ここで働いてるスタッフも、殆どがミュージシャンか何かを目指して頑張って働いてる若者達で、これからベニューの閉鎖で、又大変だけど、今日のこのライブも、君たちのお陰でできている!ありがとう!」

フルハウスだった会場の客席が一斉に、其々近くにいるバーテンダーを見つめて拍手喝采をした!
バーテンダーがいきなりヒーローみたいになって、あちこちに立ち尽くした彼らが凄く凄く嬉しそうな瞬間だった。

「これから、益々ハードな時がくるのはわかってる。ロックダウンを目の前にして、皆んなが不安な気持ち、よくわかる。」

「because I am you」

ブルーイのその発言に、会場中がひとつになった。

ステージに立つブルーイが、私たちの心を代弁してくれていた。

「俺はお前なんだ」と言った、ブルーイへ、会場に集まった皆からのこの夜の感激と称賛は、ブルーイを通して、そのまま、皆に贈り返された。

まるで自分が誇らしくなるような、とてつもない大きな力があった。

だから ひとりじゃないんだよね。

このコロナ禍、ロックダウンを、ひとりで乗り越えるんじゃなくて、みんなで一緒に乗り越える。

フィジカルで一緒じゃなくても、心で繋がっている。

そういう事を、とても大切に感じたい、ロックダウンを目の前にして、改めて。

君は僕で、私はあなたで、私たちは同じ気持ちで、世界が早く安全で希望に満ちた時がやってくる事を待ち望んでいる。

「もう少し、不自由な時が続くけど、労りあって、助けあって、またこうやって一緒に楽しい時間が過ごせるように、できる限りの事を、一緒にやろう!」

それで、最後の曲まで、私たちは、椅子の上でスイングしながら、私も、彼らが望み目指している未来へ一緒に向かいたいと思った。

ロックダウンに入った今日、繰り返し、この夜のことを思い出している。

境界線だらけの現実だけど、あなたと私に課せられた境界線はなんだろうか。

そんな境界線をとっぱらって、思いはひとつ

よりそう想い

やさしくて 暖かいやつ

やさしさは強さ

やさしさがあると、私たちは強くなれる

ブルーイに愛と感謝を込めて🙏

https://youtu.be/ZXA5XxAjPFo

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!