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「みんなと同じように我慢しないことは、逃げだ」とあの子が言ったこと

「特性って言葉が好きじゃないんです。それで甘えるのはずるいと思う。逃げだと思う。」

生徒がわたしにそう言った。
この子にこんなことを言わせてしまったのは、私を含めた大人たちだなと思った。
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人間はみんなが平等に同じことを、同じようにできるわけじゃない。
それぞれできることも、能力も違う。
わたしは「毎朝9時に出社しろ」と言われるより、「今すぐ渋谷駅前でひとり即興ミュージカルしてこい」と言われる方がいい。

先日学校で、毎回タスクを忘れてしまったり、理解できないAのことをBが怒っていた。
Aは、急に怒り出してしまう自分が自分で怖いそうで、担任の先生から「怒りそうになった時はその場から離れたり、逃げていい」と言われているそうだ。
だからよく教室やその場から逃げてしまう。B的にはそれじゃ困る。という内容だった。

その子が理解できないなら、理解できるにはどうしたらいいか一緒にやってみよう。
みんなが同じように出来るわけじゃないし、特性、個性があるから。
演劇と同じで、相手に伝わらないのなら、伝える方法を変えてみよう。
そう提案した。

するとBは
「特性って言葉が好きじゃないんです。それで甘えるのはずるいと思う。逃げだと思う。」
と、私に言った。
気持ちはわかるんですけど、とも言った。

この子にこんなことを言わせてしまったのは、私を含めた大人たちだなと思った。
きっとこの子も、色々我慢してきたんだなと思った。

「みんなやってるんだから」という言葉を、私自身たくさん聞いてきた。
みんなやってるんだから、みんなできるんだから、できない自分はダメな人間だと思ってきた。
そして自分以外のできない人のこともまた、「みんなやってるのに」とどこかで思うようになっていた。

演劇をはじめてから、その考え方は変わった。
「一緒にお芝居をしている相手が下手だと思うってことは、自分が下手だってことだよ。相手が変わらないんだから、変えるほどの影響を与えてないってことだよ。」
衝撃だった。

「今やっている方法で伝わらないのなら、方法を変えるんだよ。伝わるまで変え続けるんだよ。自分が変化して、相手も変化させるんだよ。」

わたしは演劇を学んでいなければ、このことを一生知らないままだったと思う。
私生活で同じようなことを言われたら、自分の気持ちもあって納得できないとも思う。

演劇だから理解できた。うまくなりたいから。面白いから。

自分のこういう実体験が、他の子にも同じように通じるとは思わない。
それこそ人それぞれだから。

だからわたしも、伝えたいことがあるのなら、伝わるように自分も変化していこうと思う。
まずは自分から実践。その気持ちをいつも思い出させてもらう。

こういう問題が一筋縄じゃいかないこともわかっている。
どこにでも決まりごとはある。
学校の中だけでは完結できない。
そしていつか社会に出ていく。

けどそこにどうしても少し違和感がある。
どうしてみんなが「社会」に合わせなくちゃいけないのか。
「社会」ももっと、変化出来るといいのにな。そう思う。

みんなと一緒に、引き続き考えていきたい。

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