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【恋バナ】あっちゃん#2

たまたま出逢って恋をした人の職業がホストだった…

初めてそれを打ち明けられたときは、
(それが何なのかなぁ?)くらいにしか思わなかった。
私のまるで知らない世界だったから。

でも一応その世界のことを知っておかなくちゃと思って、片っ端からサイトやYouTubeを観ていくと、そこには、愛憎渦巻く夜の世界(と、ナレーションが言ってた)が映っていた。

私が嫌だったのは「色恋営業」という、女性の好きという気持ちを利用して自分にお金を使わせるという営業スタイルで、さらに「育て」という、当面はお店には誘わないけれど、やはり好きという気持ちを利用して、いつか自分のお客さんになるように育てていくという仕組みまであって、もし自分がその育てだったらどうしよう。と、なんだか不安になってきた。

私が画面を通して観たホストの世界は、とにかくとても騒々しいものだった。
私はお酒を呑んで盛り上がることをあまり好まないから、あっちゃんがそういう人だったら嫌だなと思った。

あっちゃんはずっと多忙な人だった。
告白されて付き合い始めてからも、月に一度くらいしか会えない。
その代わりに、LINEは24時間対応をしてくれていた。

私は、いくら忙しいといっても、付き合い始めてからまだ間もないというのに、あんまりじゃないかなと不満に思っていたし、やっぱり本気じゃないのかなと疑っていた。

あっちゃんは、とにかく自分が信じてもらえないことに悩んでいるようだった。例え覚悟の上だったとしても。のっけから何かと難しかった私たちだけど、それもあっちゃんのこの一言から変わっていった。

「恋愛関係よりも、まずは信頼関係を築いていこう。」

ホストとの信頼関係を築くには、完全にアウェイである私にはやはり難しかった。
お店の内情についてもあっちゃんからの情報しか入ってこないのだから。

でも、あっちゃんのその言葉を聞いて、この人はたぶん大丈夫だと頑張り続けた。

私がホストの彼女として一番向いていたのは、あっちゃんのお客さんには全くヤキモチを焼かなかったことだと思う。
普通ならば絶対に妬くと思うけれど、私がもともとそれ程ヤキモチを妬かない上に、あっちゃんは浮気はしない人だという信用があった。
自分でも言ってだけれど、あっちゃんはとても真面目で一途な人だったのだ。

それに、こんなエピソードもあった。
私が「あつしさんは、たくさんのお客さんと出逢うから、お客さんに恋したりしないの?」と尋ねたら、
あっちゃんは「うちは男職場だから全く出逢いはないよ」とあっさりと言った。
仕事は仕事、お客さんはお客さんだという趣旨の発言だったんだろうけど、そういえばこれほどの男職場ってなかなかないかも…と、あっちゃんの返事に少し笑ってしまった。

あっちゃんと私が一緒にいられたのはたった一年で、あとの八年あまりはLINEがメインだった。
それでも私たちの信頼関係は高まっていき、あっちゃんも私も次第に心を開いていったように思う。

私は嘘や駆け引きというものが嫌いで、男女の駆け引きなど論外だったけれど、あっちゃんは二人の間に一切駆け引きを持ち込まなかった。
残念ながら嘘をつかざるを得ないときもあったけれど、それは何かと裏がある夜の世界で生きる人の悲しい性だったように思う。

昨日、出逢って3ヶ月記念の時にいただいた、大輪の赤い薔薇の花束の写真を見ていた。
あの時は、ホストってこういうことをするのかな?と、穿った見方をしてしまったけれど、それでもとても嬉しかった。

ホストの彼女と一言で言っても、ホストの中にはいろんな人がいるから、出来れば他の人を選んだ方がいいと思う。

だけど、私があっちゃんを見る色眼鏡をやっと外せるようになった時にそこにいた人は、尊敬してやまない程の人格者だった。
そういう人もたくさんいるということだと思う。

私が今でも残念に思うのは、あんなに素敵な彼氏さんがいたのに、彼の職業柄、彼氏自慢も恋バナも誰にも出来なかったこと。

あっちゃんは世界一カッコいい、強くて優しい私の彼氏さんでした。

未だに、生まれ変わってまた逢えるとしたら、出来ればホストじゃないといいなとか思ってしまう私だけど、あっちゃんはホストという仕事に自分の夢を賭けていたくらい、ホストという仕事を本当に愛していたから、やっぱり次もホストかもね。

今だって、私の元カレはホストです。なんて言ったら、白い目で見られることもあるだろう。
だから、たぶん、この恋バナは一人墓場まで持っていくことになる。残念だけど。

今日は取り止めのないことをダラダラと書いたけれど、出逢いから別れまであっちゃんとの恋バナはまだ続きます。

今でも愛してるよ。


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