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切り取りテクニック

たぶんあちらとしても、なぜこの人間はこんなにも切り取りという動作が下手なのだろうと不思議がっていると思う。おれはまさに言葉どおり、身を切る痛みに耐えながら、切られやすくなってあげているのに……とうらめしい声が聞こえてくる。ごめんなさい。不器用にもレベルがあって、わたしはなかなかの裾野にたたずんでいるのです。

マジックカットがマジックカットじゃない! というのをよく耳にする。たしかに、「この部分のどこからでも切れます」と豪語するわりにはそれほど切れてくれない袋に、人生でなんども出会ったことがある。あれだけ自信満々にしておいて、いざ破ろうとするとへにゃぁとしなってどうしようもなくなるのでクセモノである。そこにギャップ萌えは必要ないのよ。いまさらハサミを出すのもなんだか負けた気がするので、無理くりビッ!!!とやるとまあ予想どおり、四方八方に飛び散るウマい粉末や液体。学ばないのもほどほどにしろ、と自分で自分に呆れるが、今回こそいけるかも、と謎の自信がひょっこり顔を出すのでしかたがない。

マジックカットよりも、切れ込みが入っている袋のほうが多いような気もする。餃子のタレや、パックのお寿司に付いているワサビなどの使い切り系から、片栗粉やお好み焼き粉の大きい粉類まで。一回分の調味料は、いくら失敗しようが食べ終わるころにはすべて無かったことにできるが、継続的に使うものは開けるときにやや緊張が走る。食塩のデカい袋なんて、大口でひらいてしまった日にはもうお清めdayとして座禅じみたあぐらで過ごしたくなるし、逆に強力粉をちっさい口からちょぼちょぼちょぼちょぼ400gになるまで出すのも、パンを焼くまでに無駄な腕力が必要になってあほらしきことこの上ない。

薄力粉やコンソメなど、ジッパー付きのはちょっと割高なこともあるが、その分、わりかしまっすぐに開封できる。保存が便利だし、開封時のリスク回避も含む値段と考えるとめちゃくちゃお得なのでは……と善良なカモがここに爆誕である。まあそういう粉系のは「よく閉めてください」と注意をうながしてくれる一方、ジッパー部分に粉がよっこらせしがちなので、全然閉められた気がしない。最初のころはパキパキという手応えがあるけれど、すりごまなどは二回も使えばホキホキ、うぐいすもびっくりのしなやかな音に変わってしまう。

やらかす頻度が多いのは、同じものが二連、三連になっている小分けパック。餃子のタレとラー油が隣り合っていたり、小腹専用サイズのおやつがつらなっていたりする、切り離さねばならないアレ。そんなに力も強くないし、変な方向に引っ張っているつもりもないのに、切り取るのがとにかく下手で、うっかりお隣さんの中身部分まで切り込みが侵入しがち。タレならもう混ぜちゃうことにして事無きを得られるが、グッピーラムネが二袋あいちゃったら二袋食べますよね!?……食べますよね……未来の二回目をみずから消し去るスタイル、消費スピードがただただ加速するだけなのでおすすめはできません。

あとは箱ティッシュの口をズボッとやって切り取るのも、ジャイアントコーンアイスの包装をぐるっとはがすのも成功率60%くらい。何回もやったことがあるのに上達しない。もはやあちら側から愛想を尽かされているんじゃないかと疑ってしまう。きっとわたしが真剣に切り取り線に向き合っていないからなんだろうな。ごめんね。

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