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小説 闇の囁き

【第1章】- 暗闇の囁き

彩香は内向的な性格の中学生で、いつも周りとのコミュニケーションに苦労していました。彼女は家庭と学校のギャップによって内心揺れ動かされている。

家では彩香は3人姉妹の中で元気に喋ることができました。家族との会話や笑い声が絶えない食卓で、彩香も姉妹たちとのコミュニケーションを楽しんでいました。
「行ってきま~す!」彩香はいつも通り元気よく中学校へ向かいました。彩香は中学校への登校途中、いつものように静かな図書室に立ち寄った。

彩香は図書室の静寂に身を委ねた。本の棚の間を歩きながら、指先で本の背表紙をなでる。懐かしい友人のように思える本たちとの出会いに、彩香の心は少しだけほっとする。
彩香が特に好きな場所は、図書室の一角にある窓際の席だった。そこには柔らかな光が差し込み、穏やかな読書の時間を約束してくれる。彩香はゆっくりと席に座り、窓の外を眺めた。

外の風景は彩香にとって別世界のように映る。鮮やかな緑の木々が風に揺れ、小さな鳥たちが忙しなく飛び交っている。遠くには学校の校舎がそびえ立ち、生徒たちの声が遠くに聞こえる。
彩香は深呼吸をしながら、静かな読書のひとときを楽しむ。手に持った本のページをめくりながら、物語に浸っていく。文字から生まれる世界に身を委ねることで、彩香は自身の心の中にある暗闇から一時的に解放されるのだ。
時の経過を忘れたまま、彩香は図書室での時間を楽しむ。静寂と安らぎに包まれたその空間は、彩香にとって心の安息地となっている。彼女の内なる戦いや苦悩は一時的に忘れられ、本との出会いが彩香に新たな希望を与えてくれるのだ。

遠くから窓ガラスが割れる音が聞こえてきた。それは割れた後の破片の音ではなく、割る瞬間の落下音が聞こえるのだ。同にヤンキーグループの甲高い笑い声が聞こえてきた。彩香は窓ガラスが割られる度に身を震わせる。だけど、彼女はヤンキーグループの暴力行為に怯えることはなかった。彩香の怖れは、なぜ彼らがそんなことをするのかを理解できないことにあった。

「チッ、窓ガラスを割るだけなんて子どもだ。」彩香は心の中で舌打ちをした。彼女は訴えたい事があるなら、なぜ言葉で伝えないのかと思っている。しかし、彩香自身も言葉で伝えることが苦手だった。ヤンキーグループと目が合った時、彩香は何も言えずに目を逸らしてしまう。心の中では「何も言えない自分が情けない」とつぶやく彩香。彼女は内向的な性格であり、自分の思いを的確に伝えることに苦しんでいた。

彩香は常に傍観者である。彼女は被害者ではなく、見ている側である。しかし、その無力感と絶望感は日に日に募るばかりだった。教師たちはいじめに目を向けることなく、問題を見過ごしているように見えた。彩香は心の中で怒りを感じながらも、一人で戦わなければならない運命に縛られていた。


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