33. 母は強し、な映画3選
肉親というのは、選べない存在であり、社会人になってからいろいろな人の「親との関係の話」をするようになって、本当にいろいろな形があるなあとつくづく思います。自分の場合はそこにはほぼなんのストレスもなく、恵まれたなあと思う限りなんだけど、世の中には本当に親に立ちはだかられて苦しんでいる人も少なくなかったりするんだなと。そしてもう自分もいい歳になってきて、同級生の中にはすっかり親な人もいるわけで、人の親になるということについて、全然当事者にはなってないくせにいっちょ前にふと考えたり、「きみは赤ちゃん」を読みながらいろいろ考えたり、なんか最近はします。映画だと、この3本かなあと思って、選んでみました。全部、基本的には肯定的な映画だけどね。
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20センチュリー・ウーマン
2016年公開
監督 : マイク・ミルズ
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息子との関係に悩むシングルマザーが、息子や時代の変化と、同時に自分自身の変化とも向き合っていくお話。「分かり合う」こととの距離感の物語。登場人物はみんな、何かの欠損を抱いていて、それに対して、他の人間からの理解を「求める気持ち」と「わからないでほしい気持ち」のジレンマに苦しんでいる。他者に対しても同じ。わかってあげたい気持ちと、わからないことを認めたいと思う気持ち。「分かり合う」ということそのものを絶対的にいいことであると描かずに、たとえ分かり合えなかったとしても、人と人は共存しあえるし、尊重しあうことができるんじゃないかという、僕にとってはとても、救いになるような映画でした。As time goes byをバックに、海を飛ぶ飛行機のラストシーンで、なぜか涙が。「時間」ももう一つのテーマですね。無常さを感じずに、時とどう生きていくかも、テーマなのかもしれない。すばらしい映画でした。この映画から感じた母の強さは、「子どもを”わからない”という状態を受け止める」ということですかね。
おおかみこどもの雨と雪
2012年公開
監督:細田守
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おおかみおとことの間に子をもうけた母と、二人の子供の13年間のお話。人間の成長とは、なんにもないような毎日の積み重ねの年輪なんだよという物語。特に、何も大事件は起こらず、淡々と、日々刻々と大きくなっていく二人の子供と、母の成長を描いた、それだけの話なのですが。その日々の描写ひとつひとつが、どうしようもなく懐かしくて、エンドロールのアン・サリーの歌で、どうしようもなく泣けました。誰もが誰かの子であり、母がいる限り、みんなに観てほしいなあと、素直に思います。この映画から感じた母の強さは、「かかわりすぎないと決意する勇気の強さとつらさ」かなあ。
湯を沸かすほどの熱い愛
2016年公開
監督 : 中野量太
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末期がんを宣告されたふつうの母が、残された時間でなすべきことを、ひたむきに力強く遂行していくお話。人は、他者とのかかわりと、その記憶によって生きることを実感する生き物であるのだという御話し。ごく普通の、しかし芯に強い真っ赤な信念を持った双葉の逃げずに人の眼を見て話すあのまなざしは、当たり前のことを当たり前に、自分の丈を無理に上回ったり柄にもない富や名声を望むようなことはせずに、ただただまっすぐであった人生の集大成のような、そんな目だと思う。卑屈になったり、自分ばっかりなぜこんなに不遇なのかと嘆こうと思えばいくらでもできるはずの境遇なのに、守るべきものがいれば人はそんなに強くなれるのかと思う一方で、母に無碍にされ、遺す人々の愛に触れ死にたくないと思い、その人間らしい苦しさが、ほかの人の優しさにつながり、最後は湯を沸かしたわけで。ここまで誰かを何とかよい人生の方向に導かねばと使命感をもって生きたことがない自分には、到底ワカラナイ、とてつもないことをしている母のお話でした。中野監督、長編商業作品はこれが初なんですって。次回作、期待しちゃいます。ちょっとわざとらしさも感じつつも、ストーリーと演出、泣かせる。個人的には、杉咲花がMVPすぎた。この映画から感じた母の強さは、「生きるということは、自分とかかわった人が自分をどれだけ大切に思ってくれるか」ということですかね。まあ、もちろん人にどう思われようが気にしない心も大事だと思うけど、自分はそんなに強くあれないし、その弱さを認めて、人をもっと大切にしないとならないと思う、そんな映画でした。
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自分にはまだわからないし、もしかしたら死ぬまでわかることができないかもしれない、「自分以上に大切な存在が人生にいる」感覚。母とはそういうものなのでしょうかね。これらの映画で描かれている「母」は、もちろん強い母を描いたものだと思うのだけど、決めること、覚悟することがその強さなんだろうなと思うのです。決めたり判断することって、僕は長らく「正しくてより良いほうを選ぶこと」だと思っていたんですが、これらの映画を見て思うのはそうではなくて、「選んだ決断を受け止めて、進むこと」なんだとやっとわかったんです。正しさなんか、わかったとしてもそれは数年先のことだし、もしかしたら一生、それが正しかったかどうかなんか、わからないのかもしれない。大事なのは、「決めたことを受け入れること」。そんな強さが、この映画3本の母たちから感じることだったり、僕はします。
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