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海外ノンフィクション書評#3「セガVS任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争/ブレイク・J・ハリス著・仲達志訳」(2017)

近年、ゲーム業界は大きな盛り上がりを見せている。スマートフォンで気軽にゲームがプレイ出来るようになり、何より「eスポーツ」の世界で戦うプロゲーマーも、市民権を得ている。

そういったゲームの世界の現状を知るための本も多く出ているが、今回紹介するのは、長いゲームの歴史の一部を描いた、とても濃厚な一冊だ。「セガVS任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争」である。著者のブレイク・J・ハリスは、ニューヨーク在住の作家、映像ディレクターで、本作がデビュー作となっている。上下巻出ているが、今回は主に上を紹介したいと思う。

1990年、当時任天堂は、すでにファミコンで一時代を築いた大企業となっていた。そんな大企業である任天堂に挑んだのは、他ならぬセガだった。今でこそセガは代表作や人気キャラクターを持ち、ゲームファン以外の知名度も十分な会社だが、当時はアーケードゲーム中心の、中小メーカーに過ぎなかった。そんなセガが、いかにして任天堂と戦えるだけの力を得たのか、その戦いの末、両者はどうなったのかなど、ゲームに疎い人でも思わず惹かれるストーリーが描かれている。

この物語のメインとなるのは、トム・カリンスキーという人物。彼は、マテルというおもちゃ会社で働き、バービー人形を世界中で大ヒットさせた。この話だけで一冊本が書けそうな勢いだが、本書のメインはそこではない。

物語は、マテルを退社したカリンスキーが、家族でバカンスを満喫しているところから始まる。ビーチにいると、セガ・オブ・アメリカの本社であるセガ・エンタープライゼスの社長、中山隼雄に声を掛けられる。中山社長は、マテル退社後のカリンスキーの居場所を突き止め、このビーチにやってきた。社長はカリンスキーに、セガ・オブ・アメリカの次期社長兼最高経営責任者にならないかと持ち掛ける。カリンスキーは、その場で奥さんの了承を得て、その話に乗った。

この本を書くにあたり、著者のブレイク・J・ハリスは、200人以上の関係者に取材を行った。多少の脚色や、事実と異なる場面もあると注釈が入っているが、それを差し引いても、「どんな取材したらこんなに忠実に書けるのか」と思うはずだ。読んでいると、自分がゲーム業界の内部にいるかのような感覚に陥る。

海外の各種メディアで絶賛された「セガVS任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争」。気になる方は是非、読んでみて欲しい。

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