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[日日月月]6月26日、最近読んだ本のメモで閑話休題

この連載は…
八燿堂の中の人、岡澤浩太郎による、思考以前の言葉の足跡です。まとまらないゆえとっちらかってますが、その過程もお楽しみいただけましたら

「sprout!」(仮)というプロジェクトに取り組み始めてから、過去のいろいろな点と点がつながり、線や面や立体になっていくのを感じている。とても不思議だ。八ヶ岳の地場に引き寄せられているのだろうか。

「sprout!」の取材一人目の人選が決まり、来週取材に行く。7月にはpodcastとnoteを公開したいと思う。楽しみで仕方がない。

閑話休題。
最近読んだ本のメモ。

①ジョージーナ・ウィルソン=パウエル『これってホントにエコなの?』(東京書籍)

『pebble』という有名なエコライフ系ウェブマガジンの編集長を務めるジャーナリストによる、タイトル通りの一冊。「衣類からマイクロプラスチックが海に流出するのを防ぐには?」「いちばん環境に優しいコーヒーの淹れ方とは?」など生活のトピックが並び、さまざまなデータで裏付けて解決法を提案していく。

知りたかったのは持続可能な出版形態についてだった。
というのも八燿堂も持続可能な出版活動を模索しているからだ。

ベジタブルインキの事実上の主原料である大豆や、サプライチェーンと環境負荷に関する記述は、自分の考えを裏付けてくれるもので、とても勉強になった。

特に電子書籍と紙の本の比較については面白く、曰く、電子書籍端末の製造・流通におけるCO2排出量などを考えると、年間25冊以上読む人は電子書籍のほうが「環境に優しい」そうだ。といっても毎月約2冊の本を読める人は、この時代、なかなかいないのではないだろうか? ならば紙の本のほうが「いい」のか。

しかし紙に関しては「FSC認証」の紙を推すばかりで詳しい裏付けがなかったのは残念だった(認証があればいいというものでもない)。インキに至っては「再生可能な資源を用いた植物油由来のものを使用」したと冒頭に記載したのみで、このような、あたかも100%植物油由来であるかのように受け取れもする記述は、誤解を生むのではなかろうか。

端的に言えば、ベジタブルインキであろうが、少なくとも原材料の80%はゴリゴリの化学薬品と石油なのだ。なおインキについては八燿堂の『mahora』の第3号で詳しくリサーチしたものを記事にまとめているので、よかったら参照してほしい。

そしてこの本、果ては、読み終わったら誰かに譲るか資源リサイクルへ、とまで言う。イギリス特有の皮肉なのか、はたまたジャーナリスト故に趣旨はニュース性が強いのか、「次に残す」という考えはなさそうなのが残念だった。


②ウィリアム・モリス『民衆の芸術』(岩波文庫)

タイトルに惹かれて買ったが、期待外れだった。内容が、というより、抽象的・理想的で具体性を欠いているからだ。

私の理解する真の芸術とは、人間が労働に対する喜びを表現することである。

(本書より、旧字体は改めた)

というのは共感できるが、そのために「不当な労働」を乗り越える方法を、芸術を尊ぶ簡素な生活を送る、のように、芸術の可能性に賭けることに見出そうとするのは、いささか白々しくも映ってしまった。私は芸術が好きだが、そこまで芸術が特別だとは思わない。

同じ理由で、肌感覚では2000年代くらいからよく耳目にする「○○のチカラ」という言い方も、私には白々しい。これは「景気回復には、この道しかないんです」と連呼した某元首相のようで、受け手に選択肢を限定させるような物言いは、言葉の暴力と紙一重ではないだろうか。


今日は若い知人から一冊の本を借り、老舗書店から注文した一冊の本が到着した。とても不思議なリンケージを感じる。これらについては、またいずれ。


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