『モッズ』という常に新しい伝統文化。
60年代のUKにて勃発したモッズという若者文化。
スモール・フェイセスのスティーブ・マリオットに代表されるようなマッシュルームカットやクールなショートカットに細身のスーツ、そして軍の放出品である通称モッズコートを羽織り、ベスパやランブレッタといったスクーターに乗って、ダンスができる場所まで飛ばす。
当時のロンドンは「スウィンギング・ロンドン」「ブリティッシュ・インヴェイジョン」とも形容されるほどに、特に音楽分野を中心として世界を彩っていた。
米国から輸入されたロックンロールやソウルミュージックを、UKの若者なりの解釈で演奏してみたら、ブルー・アイド・ソウル、ノーザン・ソウルやブリティシュ・ビートのような独自のサウンドが生まれてしまった。
この辺りが、UKにおけるモッズ文化の始まりとなるのであった。
この頃のUKのモッズシーンは実に華やかで、写真集を眺めているだけで、あの世界に吸い込まれそうになるほど魅力の宝庫なのであった。
そして70年代。
セックス・ピストルズがパンクムーブメントを仕掛け、ロンドンは再び燃え出した。
そんなパンクムーブメントの最中、ポール・ウェラー、ブルース・フォクストン、そしてリック・バックラーからなるスリーピースバンド『THE JAM』が出現し、UKを再びモッズムーブメントの渦に巻き込んだ。
これが「モッズ・リバイバル」、殊に日本では「ネオ・モッズ」と呼ばれる社会現象なのである。
モッズ・リバイバルの中からも、素晴らしいバンドが数多く生まれた。
ソウル寄りのバンドから、ブリティッシュ・ビートを貫くバンドまで、それぞれ60年代からの遺産を更に独自に解釈し、音楽的にもファッション的にも大胆な進化を遂げていった。
そんな70年代のモッズシーンの熱さやクールさを非常によく捉えている超のつく名盤、それが『MODS MAYDAY ‘79』というライブ盤のコンピレーションアルバムだ。
このアルバムには、モッズのゴッドであるTHE JAMは入っていない。
だが、それがむしろ功を奏しており、当時の「リアルな」熱さやクールさを見せつけてくれることに成功しているのだ。
そのアルバムの中には、シークレット・アフェアやマートンパーカスといった、比較的有名なバンドも収録されており、さすがの貫禄を見せてくれているが、注目すべきは、アルバム1枚すら出していないと思われるような無名のバンドが最高のパフォーマンスを見せてくれているという事実だ。
60年代にモッズ文化が勃発してから70年代まで、一時は収束したように見えたものの、実はその熱とクールさは地下深く脈々と受け継がれており、息絶えることはなかったのである。
そしてそれは我々が生きるこの現代においてもそうである。
モッズ文化は生き続けているのである。
是非このアルバムを聴いてみて欲しい。
モッズ・リバイバル期の熱狂と、その独自の粋を極めたスタイルを、全身で感じてみて欲しい。
必ずお気に入りのバンドや楽曲が見つかるはずだと思う。
なんでもありの様相を呈している現在は、一見自由なようで、どこか息苦しさを感じてしまうことも多い。
そんなネガティブな意味でデラシネ的な現代に、僕は「モッズ」という価値観やスタイルを提示したいと思う。
これを読んでくれて、モッズという文化に触れてくれた方が、大切な何かを手に入れて、少しでも自由になることを願っている。
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