トートタロット人生相談所⑲「3人の魔術師…模話氏編⑪~潜在意識を書き換えるカウンセリング②~」
「モノベさん、カルテを拝見しました。かなりトラウマが大きく影響されてるようですね。できたら、もう少し踏み込んだ施術が効果があると思います」
「そうですか、料金が高いとやはり難しいです」
「本来は20000円のコースをあと7500円で合計10000円でいかがですか?」
「…。効果が違うんですか?」
「ええ、完全防音のブースに入ってもらいます。泣き叫んでも大丈夫です。聴力検査のブースを改造したものです。あなたが記憶している海馬やへんとうたいにダイレクトにアクセスします」
「わかりました。いま払います」
10000円を出すと物凄いスピードで2500円がかえってきた。
動きがはやい。お金がないのだろうか?
「領収証です。先の領収証は廃棄してください。では別の部屋になります。こちらにどうぞ」
別室に入ると確かに聴力検査のブースみたいなものがあった。
少し広く、ゆったりとしたリクライニングシートのようでなかなか座り心地は悪くなかった。
「ではヘッドフォンをしてください」
「はい。あっ?」
これはヘミシンクではないか?と一瞬感じたがやったことはないので、本当のところはよくわからなかった。
環境音楽みたいなものが流れていると、先生の声もヘッドフォンから聞こえてきた。先生の音声も聞こえるように細工がしてあるのだ。
「モノベさん、いまから音楽の音量を上げます。ある時間がきましたら、また音を下げて私の声が聞こえます。その指示に従って、自分の記憶を探っていく感じでリラックスした状態で自由に感じることを許可してください。ジャッジしないであるがままに感じて、もし声を出したり泣きたくなったり叫びたくなったら自由に心のままに表現してください。一時的に録音します。データは残しません。あとの診察のときに必要であれば使います。大丈夫ですか?」
こんな状況でいまさら拒否はできないだろうと多少不満だったが受け入れた。
なぜならすでにタンコウが見えていたからだ。
以前、催眠療法をやったときに、いろいろな記憶がよみがえり、かなり記憶がエゴの都合のいいように書き換えられていることを感じたことがある。
ワークを進めてきたかいがあって、真実の自分に向き合う準備ができつつあると自信が出てきた。このカウンセリングでまた一歩トラウマ解消に進めたい。そう思っていた。
「しばらく音楽に集中してみてください」
「わかりました」
「気分はいかがですか?もし、耐えられなくなったら、ブザーをおし続けてください」
聴力検査のときのブザーが右手の近くにあった。
音楽は妙に耳に刺激されてる感覚があった。
触られているような感じだ。
しかし悪い感じではなく、次第に変性意識へと入った。
瞬間に体が浮いた。
いや、幽体離脱というやつか?
まず見えたのが、樹のこぶが垂れ下がったようないやな景観。
その奥からいかにも性格のひねくれた赤いかおのかむろの髪の毛をボサボサにして風呂に一年は入ってない子どもがやってきた。
口汚くののしっている。おまえはだめで死ねばいい。みんなおまえが嫌いだ。幸せになれるわけがない。
聞いたことがあるセリフだった。
キジムナー?これは意外な感じだ。悪魔というより、可愛げがあり、まったく怖くなかった。
こんな存在に脅されて自分は人生を悲観してきたのだろうか?
キジムナーのような存在にむかって、なんだか親しみを感じながらもどこかで意地悪な気持ちが出てきて怒鳴りつけてやった。
「こらっ、いいかげんにしろ!嫌われてるのはお前の方だ!死ねと言われたくらいで死ぬもんか。このおおばかやろう!」
キジムナーは一瞬目を大きくあけたと思うとわーっと大きな声を出したとたんに泣き出した。
わんわんその場で泣き続けた。
体はますます小さくなり、かわいく丸まっていった。
可哀想になり同情の感情がわくと、私の胸の辺りから緑色のオーロラ色の光のかたまりがキジムナーを包んで、上に浮かんで消えた。
そのとき自分がしてきた弱いものいじめの記憶がよみがえり、心がかきみだされた。
自分の顔がさっきのキジムナーと同じ顔をしていたのに腰を抜かした。
記憶がよみがえり、自分がしてきたいじめをそっくりみんなから同じいじめ
をされる。
耐えきれず大声を出して助けを呼んだ。
すると誰かがやってきた。
「ばあさんだ」
赤紫やオレンジの光の球がやってきた瞬間に何故か祖母だと感じたのだ。
球は2つ。
もうひとつは直感で叔母だと分かった。
ハートチャクラを中心に温かい光が自分を包んだ。
涙がとめどなく流れた。
「もう悪いことはしないよ。ばあちゃん」
次の瞬間まったく別の空間にいた。
ここは邪悪なものがいる。
体感でそれを感じた。
いた。あいつだ。
米国先住民の衣装をつけた、怖いやつだ。
逃げようとしたが怖くて動けない。
隣には土偶のような何かがいた。
助けて…声が出ないときに先生の声が聞こえた。
【続く】
©2023 tomas mowa