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永遠を生きるこども(スカイ・クロラ/森博嗣)

戦争がショーとして成立する世界に生み出された戦闘機のパイロット、その正体は歳をとらない子供ーという設定のSF。

状況説明はなく徹底して「僕」の視点で書かれる物語と、途中出てくる「キルドレ」という見知らぬ単語、徐々に明らかになる意外な設定…という構成が、カズオイシグロ『わたしを離さないで』を思い出させた。

人を殺した手でハンバーガーを食べ、ボーリングをする子供。
それは彼らの日常に過ぎず、そこに悲壮感はない。
しかしある日、彼らは気付く。
歳をとらない自分たちが「永遠の命」という呪縛から逃れるためには、自ら死ぬしかないということに。
「キルドレ」が同志に殺してほしいと頼む場面、それさえもどこか淡々として見えるのは、死が生まれながらに彼らの日常の一部だったからだろうか。

生はある種の死であり、死はある種の生ではないか?という哲学めいた問いを、最後の場面が投げかけているような気がした。


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