見出し画像

[英國行事]お花の祭典、チェルシー・フラワー・ショー2024に行ってきた

 5月のイギリスは天国みたい、という話はよく聞きますが本当でした。お日様が照っているときはけっこう暑いものの(日差しそのものがダイレクトに強い気がします)、日陰に入れば涼しく、風なんかもいい感じに吹いちゃったりして、とてもいい気候です。そんな5月下旬、前々から楽しみにしていたイベントのため早起きしてロンドンに出かけてきました。


チェルシー・フラワー・ショーとは

 園芸の研究やその普及を目指して1804に設立された、王立園芸協会(The Royal Horticultural Society)が主催する、園芸界最大の展示会がチェルシー・フラワー・ショーです。1913年に第1回が行われ100年以上の歴史を持つ、イングリッシュガーデン好きなら、いや花を愛する者ならば一度は行ってみたい一大フェスなのです。2024年は5/21〜25の5日間おこなわれました(一般の人が入れるのは木・金・土のみ)。

 会場はロンドンのチェルシーにある王立保養病院。ここは英国陸軍の退役軍人たちが暮らす広大な敷地を持つ老人ホームなので、会場にも「RH」というバッジのついた黒い帽子をかぶり、赤い軍服に身を包んだ白髪のおじいさんたちを見かけることになります。

ジャスミンの香りとともに、いざ会場へ

今が旬の芍薬(peony)でつくったフォトスポット

 時間はちょうどお昼前。スローン・スクエア駅を出たら、赤茶色のレンガの街並みを抜け、さっそく大勢の人が会場に向かっています。「色鮮やかなお花柄のドレスの人が多い」と聞いていたので、こちらもお花柄のスカートを着て準備は万端。日本で園芸好きと言えば中高年の女性ソロ or+連れてこられた夫、というパターンをよく見かけますが、こちらは20代〜30代くらいの若めの方、男性同志のペアなど、客層が幅広い。さすがは園芸大国です。

 会場が近づくに連れ、歩道を埋め尽くすほどの人が……混雑するとは聞いていたものの、ゲートを越えると人、人、人……これは入場までにかなり時間がかかりそうだぞ、と覚悟をしていると、警備員のお兄さんがいきなり話しだします。

「この先にまず荷物チェックがあって、チケットを確認するやつが突っ立ってるけど、あいつら仕事が遅くてこのままじゃ永久になかに入れない。今のうちにチケットを鞄から出して協力してやれ! 早くシャンパン飲みたいだろ?」みたいな軽快なトーク、最後は「準備はいいか?」「イエーイ」ってコール&レスポンスまではじまる始末。DJポリスを思い出しました。そして、ジャスミンで作ったパーティション(いい香り!)を抜け、いよいよ会場です。

それぞれ独特のテーマがあるお庭たち

庭とお花の胸踊る展示会

 会場はおもに4つに分かれています。まずは、テーマのある個性的なお庭たち(区画に分かれていて、次々と見ることができます)。そして「グレート・パビリオン」と呼ばれる巨大テントのなかの屋内展示場(主に育苗家、育種家、お花の農家さんたちが出展)。次に、会場に点在している園芸グッズなどを売るための200ほどのテント。最後にフード&ドリンクのコーナー。

 一番の目玉はやっぱりお庭。ベンチでほっと一休みしたくなるこれぞイングリッシュガーデンもあれば、ゴツゴツとした岩場に力強くも可憐に花咲くオアシスのようなお庭、ローマ時代をテーマにした(係員さんもテルマエ・ロマエ的なコスプレ姿)お庭……。石原和幸さんの苔むす和の庭も大人気。とにかくみんながいちばん見たいところなので、それぞれのお庭を一目見るだけでも何重にも人だかりが。初詣みたいな感じで並んでいたらいつかは見られるんですが、みなさんお庭や植物に興味津々なので、係の人に「あの品種はなに?」とか熱心に質問したりして、なかなか動きがありません。もちろんここはイギリスなので、人とぶつかるときちんと「Sorry」ってお互い声を掛けあうんですが、思うように見て回ることはできませんでした。

 それでも、この数日のためにここまで作り込んだ庭をたくさん見られるのはたいへん貴重な、またとない機会。もしかなうなら、人のいない早朝などに自由に時間をとってじっくり見られたら最高だっただろうな。

小さい星がいっぱいあつまったみたいな背の高いお花、アリウムの農家さんのブース

さまざまな品種が競演するグレート・パビリオン

 あまりの人の多さにちょっと疲れてきたので、いったん屋内へ。グレート・パビリオンと呼ばれる巨大なテントのなかは、薔薇、クレマチス、ストック、ハーブなどなど、それぞれ専門のお花を育てている農家さんたちのお花いっぱいの展示場です。菊のブースもあったんですが、真紅×薄紅とか色遣いが日本とは違って(お葬式っぽくなくて)おしゃれでしたね。

 日本にいたころはオザキフラワーパークにしょっちゅう通っては、ただただ知らない品種のお花を眺めるのが至福のときだったので、これは楽しい。じっさいに薔薇の匂いをかいだり、フォトスポットっぽくなっているところで写真を撮ったり、トークショーに耳を傾けたり……と、一般の人が参加できる展示会という感じでした。

とにかく大混雑! ご利用は計画的に

 それにしても、想像を絶する人混みでした。入場者16万8千人(2022年のデータ)、会場で飲まれるピムス(イギリス夏の定番カクテル)は32,145パイント(約18,266ミリリットル)とか……。せっかくの機会だから飲んでみたかったんですが、1杯18ポンド(約3600円)だったのでさすがに躊躇してしまいました。フード&ドリンクブースは(あとトイレも)屋外も屋内も大行列。いちおうピクニックエリアはあってシートも持ってきたんですが、斜面に所狭しと並んで座るサバイバル感。

 チケットはふたりで£195.65(Ticket protection込み)。直前にはもう少し値上がりしたり、ソールドアウトしたりするのでVISAがおりた2月に早々に購入して楽しみにしていたイベントだったのですが、3、4時間ほどで会場を後にしました。もはや、お花のコミケといってもいいかもしれません。壁サークルと企業ブースだけ見て、個人の参加者のを見て回る余裕がなかった感じでしょうか(諏訪田製作所さんのブースに坂源の花鋏が売っていたような……日本では誰もが使っている定番品ですがこちらでは高級品ですね。SUWADAの爪切りは洗濯バサミみたいでかわいい「プチ」を愛用)。もう少し事前にきちんと計画を立てたほうがよさそうです。あと、飲み物は持参したほうがいいでしょう。

明治屋みたいな王室御用達の食材屋さん「パートリッジズ」

会場の外も! 街を挙げてフラワーショー

 ただ、話はここでは終わりません。どうやらこの期間中、チェルシーの街全体がお花のお祭り状態だという情報を聞いて、少し歩いてスローン・スクエアからKing's Roadのショッピング街に足を運んでみたら、これがすてきだったんです。

ドライフラワーを使った苺のお菓子? 香水の「ペンハリガン」

 通りにならぶそれぞれのお店(ジョウスティングの記事で紹介したペンハリガンなども)が、趣向を凝らしたお花で入口を飾っています。歩道が狭いので写真を撮るのは注意が必要ですが、ウィンドーショッピングがてらこの通りを歩いているだけでもフラワーショーの気分はじゅうぶんに味わえると思いました。

どうしても見たかった、ロイズ銀行シンボル黒い馬(似てる!)。ご丁寧に人参までくわえています。

薔薇と苺の季節

 それ以外にも、今まさに咲いているお花といえば薔薇。ローズ・ド・メイ。せっかくなので、ハイドパークの右下あたりにあるローズガーデンにも行ってきました(バスN19/22で17分ほど)。いちばん品種が多いのはリージェンツ・パークにあるクイーンメアリーズ・ローズガーデンだと思いますが数年前に行ったことがあるので(品種もいっぱいで広くて超楽しいのですが少し距離があるため)、今回はこちらに。これがまた、薔薇そのものの種類は多くないんですが、小道沿いにのんびりと庭園がつづいていて、ロンドン市民いこいの場って感じでとても雰囲気がよかったのです。馬やりすや鮮やかな黄緑色のインコ(ring-necked parakeetといってロンドンでは5万羽も繁殖しているようです)などもいて、のんびり過ごせました。

 チェルシー・フラワー・ショーに必ずしも足を運ばなくても、いろいろなところでお花が楽しめる、よい季節なのを実感した一日でした。おやつに持って行くならぜひ苺を、特にMarks&Spencerで売っているBritish Red Diamond strawberriesが何もつけなくてもとにかく甘くておすすめです。

ハイドパークのローズ・ガーデン

*今日のひとこと

エリザベス・ラインに載ったら冷房が効いていてびっくり いまの涼しいまま夏がすごせるといいのですが……

おまけ:ハロッズ裏で見かけたアリスなフラワー。アフタヌーンティーをやっているもよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?