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やさしい写真のよみかた

前回に続き、私なり(写真を撮る側の立場)の写真の視点についてお話ししてみたいと思います。
対象は写真が好き(見るのでも撮るのでもどちらでも)な人。アートが好きだけど、写真はよくわからないと感じている人に向けて話してみようと思います。
ちなみに、このタイトルは子供の頃なぜか私の本棚に置いてあった「やさしい仏像の見方」というタイトルから来ています。(名著です)

1. 写真の姿

私は「写真」という言葉とそれが意味するものとのギャップをいつも感じています。だって、「真を写す」と言われたら写真に描かれているものは全て真実のように聞こえるし、実際そう思ってしまう人も多いでしょう。

一方で英語の「Photograph」の語源は
「Photo」= 光 +「graph」=描画 です。
光が描くものと表現されます。この表現はぴったりくるものがあります。
日本でも昔は「光画」という言い方もあり、写真部も「光画部」と呼ばれていたりしました。

写真は、レンズを通して集めた光を結び定着したものに過ぎません。この構造はどんなカメラでもスマホでも変わりません。

一方で光は波であり屈折します。レンズは光の性質を使って、ある法則にしたがってフィルムや撮像素子に集める役目を果たしています。そういった単純な物理現象、化学現象で「写真」は形作られています。

写真には幾ばくかの事実はあるかもしれませんが、
「真実」はちょっと違和感がありますよね。逆に光とレンズがあれば、いくらでも真実を創れるということになります。また、たまに聞く話ですが、写真機(カメラ)が同じであれば誰でも同じ写真が撮れるなんて言われる根拠にもなると思います。

1.1 写真はいただきもの

でも、私はそれは正確では無いと考えています。写真は自由で簡単(光と写真機があればいつでも撮れる)というのは幻想です。もちろんシャッターボタンを押すという行為は非常に簡単ですが、果たしてシャッターボタンを押したからといって写真家だと言えるのでしょうか?

日本で有名な写真家の一人である篠山紀信さんは、広告批評での箭内道彦さんとの対談で「写真はいただきもの」と言っています。私はこの表現が大好きです。


つまり、撮影場所の事前確認や、照明、メイク、カメラの準備をしても画家が絵を描くようには撮れない。写真家、カメラ、対象が揃って成立するものであって、それらの全てのいいところをいただくことができるのが良い写真家の条件だということです。別の視点で言うと、天候や撮影場所の制限に合わせて最適なセッティングをするのも大事ですが、それ以上の何かを引き出せるのが写真家だと思います。相手とは人物に限りませんし、複数枚の写真で初めて見えるものもあると思います。

自分で撮った写真で恐縮ですが、私がどんな方法で引き出したいと思って撮ったのか紹介したいと思います。この説明を通じて、写真のよみかた(視点)について一考してもらえたらと思います。いただきものと言ったり引き出しと言ったりしていますが、同じ意味だと考えて下さい。

1.2 画としての写真

絵コンテまではいかなくても撮りたいイメージがあって、何らかの準備をして撮影したものです。

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NIKON FG film:0006

Nikon FG, フィルム🎞撮影です。
この写真は大学生の時に友達に協力してもらって撮影しました。アッジェの写真をイメージしていました。それっぽいのですが、作った感じがありこの写真では意図したものは引き出せていないと思います。
自分でフィルム現像しています。画像処理は一切有りません。
#この後の写真も全てフィルムスキャンした写真そのままです。

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Hasselblad film:0005

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Hasselblad film:0003

2枚とも旅先で撮影したものです。ハッセルブラッドという重たくて大きなカメラ(1.5キロ)を持ち歩く事で行動にリズムが生まれ、その結果として出会い(いただきもの)が得られたのだと思います。ただし、いただきものというのは、ナマモノです。近づきながらフィルム装填チェックをし、露出やピントを合わせ、カメラを構えたらすぐにシャッターを切る。ずっと写真を撮っているとこういう身体感が出てきます。結構重要なテクニックだと思っています。
私が写真を見るときは、どんな身体感で写真を撮っているのか想像しながら見ています。

1.3 記録としての写真

記録としての写真。言い換えると、情報(メディア)としての写真です。
特に連続して映像情報を残していく事で、世界中の誰にも留めておくことができない「時間」を体験できる。それはその時の光を留めておくという写真の本質であり大きな特長だと思います。ただし、どんなタイミングで、何を残していくのかという所がポイントで有り、「いただきもの」が得られるかどうかの分かれ目です。

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Makina67 film:0009

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Makina67 film:0010

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Makina67 film:0011

Makina67 フィルム(film0011は白黒手焼きプリント)
ハーレーのカスタムって服を着替えるのと同じ感覚なんだよと、アメリカのドキュメント番組でバイカーが話していました。私もバイクを購入してから少しずつカスタムを続けています。またこれまでの写真を見直せばその時々のバイクとの関係もありありと思い出します。記録としての写真は、一枚だけでは成立は難しい。私は、場所を固定し、対象を固定し、時間をあけて撮ることで、目に見えない時間や生活を他の人が見ても感じてもらえればと願って撮り続けています。

1.4 ポートレイト写真

ポートレイト写真。写真家にとってポートレイト写真は、相手との関係をどのように引き出すのかに尽きると思います。一方、ポートレイトはプライベートで家族や友人を撮る場合も多く記録写真にも似た要素が有ります。ただポートレイト写真は相手との一回きりの真剣勝負の要素もあります。記録写真と違い、一枚の写真でも十分に写真として成立する所が大きな違いです。

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Hasselblad film:0012

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Hasselblad film:0013

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Hasselblad film:0014

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Hasselblad film:0015

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Hasselblad film:0002

全て初めて出会った人達で、その場で声をかけて写真を撮らせて頂きました。会ったのもその一回だけです。撮影した場所や経緯はこれ以上書きませんが、NOTEを読んで頂いた皆さんに自由に想像してもらえたら私はとても嬉しいです。

2. 写真の真実はどこにあるか?

ここまで読んで頂いた皆さん、ありがとうございました。写真をよむためには、撮影者、カメラ、対象、光の関係で写真は成り立っていると理解してもらえたかと思います。言い換えると写真とは関係を定着させるメディア(媒介)であり真実かどうかは大した話ではありません。これから写真を見る時には、その一瞬に何が起こったのかを読み取るだけでなく、その中にはどんな関係が含まれているのか考えて楽しんでもらえたら本望です。


幾つかの写真の撮り方(いただき方)を通じて、写真のよみかたを紹介してみました。話始めると、どう整理すれば伝わるのか非常に難しく時間がかかりましたが自分なりに整理できて良かったと思います。

ちょっとでも気に入ってもらえたら「スキ」してもらえると嬉しいです。



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