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15歳の娘が男だと言い出した。(その4)

10月は衣替え。

冬用の制服を箪笥から出し、アイロンがけをしていた。
用事がある時にしか私の近くに来ない娘Sが、まとわりつくように、体をくっつけて、たわいもない話を喋り出す。
Sちゃんがまだ幼かった頃、家事をこなす私にまとわりついては抱っこを迫り、何も手がつけられず、うんざりしたこともあった。
でもあれは、とんでもなく幸せな時間だったのだと、今になってわかるなんて。。

幼い時のSちゃんの面影を15歳の彼女の顔に重ねた。
可愛くて、、可愛くて、、、涙が溢れそうなのを悟られまいと、くすぐって背中を向けさせて後ろからぎゅっと抱きしめた。
私の体に、ピッタリくっついて、漫画オタクなSが話す、彼女のなりの講釈に、二人笑いながら、また泣きそうになってしまう。
振袖騒動から、ほとんど口を聞いてくれなくなっただけに、母は彼女が歩み寄ってくれたのかもと淡い期待を持ったのだった。

「弟Dのアイロンが終わったから、次はSちゃんものかけちゃうね。」
Sと再び心が通じたという根拠のない実感からか、私はその時とても陽気だったに違いない。
でも、私のその一言で、Sの表情が、凍りついた。
「ママ、まだいいよ。うちの学校は、好きな時に衣替えだから、一年中、夏服の人だっているし」
「でも。。冬物のスカートって、生地が厚くて、ひだも多いから、今のうちにかけて吊るしておきたいのよ。」
「いいってば、いいから、しなくてっ」
「今は暑いけど、そのうちすぐに寒くなるよ。」
「重ね着すればいいから。。」
「さすがに、雪が降る日に、真夏の短パンは無理でしょ、Sは、半袖短パンの小学男児かっ!w
冗談のつもりだった。
「ママ、私、男児だから、短パンで登校でいいから」
「もう、ああいえば、こういうなんだからっ。とにかくアイロンは今やっておく。急に寒くなった朝にアイロンかかってなくて慌てるのは、お母さんヤダよ!」
さっきまで穏やかだった母娘の雰囲気は一転し、
彼女は無言のまま、スッと部屋に行ってしまった。
そして、、、、
『バンッ!!!!』
部屋のドアを、これでもかというほどに、
力任せに閉めたのだった。


続く


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