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99回箱根駅伝特集

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大八木弘明「愛の先に」

大八木弘明「愛の先に」

強面、大声。昔ながらな印象を残す大八木弘明監督。ここ何年でも言われるのは「変わった」という言葉。

果たしてそうだろうか? もちろん接し方や伝え方は変わっただろう。だが、それは一端に過ぎない。
本質にあるものは一つも変わっていないのではないか。そう思うのだ。

それは選手への「愛」であり、陸上競技への「愛」である。

選手への「愛」あんな強面で厳しく叱る彼に「愛」という言葉が合っているのか……とい

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長谷川淳「不完全燃焼」

長谷川淳「不完全燃焼」

100パーセント……とはおおよそ言い難い、しかしそれでも戦わねばならないという理不尽さを思い知ったのではないか。決して戦えないチームではないのだが、どうにも選手が揃わない。そういった苦しみを長谷川監督はこの3年で強く感じたことだろう。

これで3年連続出場となっている箱根駅伝だが、本来起用したかった選手を起用できなかったり額面通りのタイムを出してくれない……。こうした中で今回は様々な「計算外」があ

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小川博之「届かなかった襷」

小川博之「届かなかった襷」

あと一歩届かなかった。だが、前年健闘を見せた国士舘大学は連続出場記録は途切れることないまま、今年の予選会へと向けてすでに再始動している。それを支えるのは、小川博之監督。

現在コーチを務める添田正美さんと入れ替わる形で就任したこのシーズン届かずに終わったものの「また帰ってきたい」と宣言。2年生ランナーを多く配置した復路こそ19位だったものの、この失敗を生かしてくれると確信しての采配だっただろう。

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上野裕一郎「まだ走れるからこそ」

上野裕一郎「まだ走れるからこそ」

2009年社会人2年目だった上野裕一郎選手はこのように語っていた。
「現役を引退してからは、楽しみながら走って、両角速先生や田幸寛史さんのように選手が勝つために、自分から一生懸命に動く指導者になりたい。陸上が人一倍好きですから」と。

どこかのツイッタラーから「挨拶をしてくれ」と粘着されるなど、生意気な態度と強気なコメントが印象的な彼のもう一つの顔は「陸上愛」にあふれた男だということだった。

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玉城良二「活気」

玉城良二「活気」

75年連続出場という現在続いている連続出場記録の中でも最多の記録を持つ日本体育大学。しかしながら近年は「監督不在」の時期もあるなど常に出場の危機にさらされてきた。

その中で女子駅伝の監督として多大なる実績を残してきた名監督、玉城良二さんが就任したのが2020年からである。駅伝王国と呼ばれる長野県の公立校、長野東高校を都大路で2度2位に導く実績を残した彼が就任したのは一通りの引継ぎなどが完了した6

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真名子圭「途上」

真名子圭「途上」

まだまだ途上にある……。かつて「山の大東」と呼ばれ4度の箱根駅伝優勝を成し遂げた大東文化大学復活に向けてである。卒業生の真名子圭監督を招聘した際には当初個人的にはちょっと安易な人事ではないか、と感じた。

だが、かつて名門と呼ばれていた仙台育英高校を再び立て直し、2019年には優勝にまで導いた高校駅伝においても名監督と称されるを招聘してわずか1年。それを「箱根駅伝予選会」と「全日本大学駅伝予選会」

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両角速「変革の時」

両角速「変革の時」

高校駅伝で名将と呼ばれた名監督のチームとは思えないほど、最後の最後までチームがばらばらに感じた。初の総合優勝からわずか5年。ここまで崩壊してしまうのかと思うほどだ。

一体東海大学はどうしてこうなってしまったのか、そして一体原因はどこにあるのか……。そこには「選手たちの意識の差」と「両角監督自身の問題」があるように感じた。

この2つの問題とそして吉田響くんのことにも少しだけ触れたいと思っている。

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飯島理彰「顔」

飯島理彰「顔」

ようやく新生山梨学院の「顔」が見えてきたかな……。そんなことを感じる駅伝となった。2年連続シード権を逃すだけでなく、主力選手の故障が相次いでベストな布陣を組むことも叶わず繰り上げスタートに終わっていたこれまでとは打って変わって、シードを目指し走る山梨学院の選手たちの活躍には驚きを覚えた。

それと同時に見えてきた飯島監督の「顔」もまた、徐々に見えてくるような。そういう大会になってきたと思うのだ。そ

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中野孝行「誤算」

中野孝行「誤算」

「育成の帝京」と名高かったここ数年の帝京大学において、中野孝行監督も思わぬ誤算が多くあったのが今回の箱根駅伝だった。下級生時はしっかりと地金を鍛え、上級生になったときに強さを発揮する本来の帝京大学からはいささかかけ離れた展開になってしまったのだ。

1区で本来の力を発揮できなかった小野隆一朗くんをはじめとした、一からの立て直しを図りにかかる帝京大学。しかし、その「誤算」は直近2年のレースを見ればか

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大志田秀次「惜しむ」

大志田秀次「惜しむ」

惜しい。本当に惜しいと思った。東京国際大学において彼の退任はあまりにも勿体無いとすら感じる。2011年に監督就任してから早くも10年以上。彼の手腕と人柄を知っていれば、この1度のシード落ちで退任というのがどうしても納得がいかないのである。

多くの人から慕われていた彼が残した功績はとてつもなく大きなものだということはわかっているはず。それは「戦術・ヴィンセント」だけでない、ダークホースとしてかき回

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酒井俊幸「耐えて勝つ」

酒井俊幸「耐えて勝つ」

監督就任から早くも14年で、3度の総合優勝を経験してきた酒井俊幸監督をもってしても、今シーズンの東洋大学のシード権は極めて難しいものとなってしまったようだ。

連続シード獲得こそ成し遂げた今季だったが、本来見せてきた「無慈悲なまでの強さ」を感じられなかったのは酒井監督自身に耐えるときが訪れているからなのかもしれない。

就任1年目での総合優勝華々しい実績が1年目で「転がり込んできた」といってもよか

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櫛部静二「学問」

櫛部静二「学問」

箱根駅伝の監督には様々なキャラクターや面白い経歴をたどる人が多くいる。例えば大八木監督に原監督、他にも帝京大学の中野監督。20人も監督がいれば20通りの「人間ドラマ」や「キャラクター」が多く存在しているのだ。

その中でも城西大学の櫛部監督は極めて異色な存在と言える。陸上部の監督でありながら運動生理学の研究者としての側面も持っているのだ。

当然、原監督をはじめとした各大学の監督の中には大学教授と

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榎木和貴「優男の眼光」

榎木和貴「優男の眼光」

レース中、大八木監督のように大きな声を出すわけでもなく淡々とそして選手に刺さる言葉で鼓舞を続ける。それが榎木和貴監督だ。
目の奥を見れば、選手たちのことを厳しくそして暖かく見守る。決して叱り飛ばすことはせずとも、淡々と冷静なその様はスタンスや競技こそ違えどかつて中日を指揮した落合博満さんにも通ずるところがある。

すでに実績については言うまでもない。就任1年目で下馬評を覆しシード権獲得を達成し、2

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坪田智夫「橙魂特急」

坪田智夫「橙魂特急」

「オレンジエクスプレス」。オールドファンであれば一度は聞いたことのある法政大学の異名だ。その中心にいた選手の一人こそ、現監督である坪田智夫さんだ。

高校時代名の知れた選手が必ずしも入ってくるわけではなく、むしろ前々回大会ではシード権獲得も厳しいのではないか?という私の予想を覆し、最終10区で見事にシード権獲得を獲得。前回では一時は3位を争う大健闘を見せた。

令和のオレンジエクスプレスを作り出す

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