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ゼロイチ起業しますか?M&A起業しますか?

Twitterで「100話で心が折れるスタートアップ」という4コマ漫画が話題です。一日一話ずつ更新で、つい先日完結したばかりですが、私も全作一気読みしました。主に読んでいる人は起業経験者が多いと思いますが、多くが共感しているようです。

100話で心が折れるスタートアップ

具体的な内容はリンク先を読んでいただければと思いますが、タイトル通り、大きな目標を掲げて起業したスタートアップが、刀折れ矢尽きるまでの数年間を漫画にしているものです。

4コマ漫画だけに、全体をサラッと書いてはいますが、ここにはゼロイチ起業(ゼロからプロダクトを作り出す起業)の難しさが詰まっています。

ゼロイチ起業の楽しさと厳しさ

まず、ゼロからプロダクトを作るのは、とてもやりがいがあり、心からワクワクするものです。自分の考えたサービスで世の中を変える。それがゼロイチ起業に共通した目標であり、それに共感した仲間が集まって、熱い時間を共にした結果、世の中に受け入れられて、収益につながる。それが醍醐味です。

しかし、そう簡単にはいきません。よく言われるように、10年後6%という起業後の生存率が、その厳しさを物語っています

まず、プロダクトが作れない。作ったとしても常に改善し続けるPDCAを回せない。これは主に人とお金の問題。ここが恐らく最大の難関です。特に人は変数でしかなく、全く予測不可能です。思いもよらぬ「離脱宣告」で、ある日突然フリーズしてしまうことなんて、ザラにあります。新たに採用しようにも、そんなお金も時間もない。上記の漫画でもこのシーンが出てきますが、熱を込めてプロダクトを作っていると、なおさら周りが見えなくなるものです。

そして、強い思いを込めて作ったプロダクトがようやく完成して世に出しても、思うように売れない。場合によっては酷評される。これも「普通」のことです。

皮肉なことに、強い思いを込めて作れば作るほど、空振りの確率は高くなります。なぜなら、作る側の主観が強くなりすぎるからです。しかし、それだけの熱量がないと、次々にやってくる壁は乗り越えられない。そこが新しいプロダクトの難しいところです。ある程度客観視できるようになるには、相応の経験を要するのかも知れません。

これらのことは、ゼロイチ起業にはつきものです。必ず経験することと言ってもいいかもしれません。多くは、そこから資金を再調達するのは難しく、一旦受託にシフトするなどして糊口をしのぐことになります。しかし、私が見る限り、その大半がそのまま受託仕事を続け、いつしか起業当初の目標は消えてしまい、年齢的に「もう一度」の意識が消えてしまうことになります。

もちろん、受託も立派な仕事です。そして、ピボット(事業の方向転換)もとても大事な戦略です。しかし、自分達が作ったプロダクトで世の中の課題を解決し、企業を成長させていくという、「スタートアップの意義」とはかけ離れたものになるのは確かです。

想いの強さは諸刃の剣

起業する人には、強い思いがあります。新しいプロダクトを作るには、その想いは必要不可欠です。それがないと、その先に必ずやってくる苦難は乗り越えられません。

しかし、それは「他のメンバーとの乖離」を生み出す原因にもなり得ます。創業者と同じだけの熱意を他のメンバーにも求めるのは無理がありますし、数年経って入社してきた社員なら尚更、熱量は違って当たり前です。でも、会社がギリギリの運営を強いられている中で、「定時に来たら帰ります」的な熱量の社員は、次第に居場所がなくなります。結果、冒頭の漫画のように、気がつけばほとんどの社員が去っていったということになりがちです。

事業を構成するのは「ヒトモノカネ」ですが、やはり「人」の感情が最も難しいものです

M&A起業のメリット

ゼロからイチを産み出すには、社会的な意義と同じだけ厳しさと難しさがあります。私は、これまで3回のゼロイチ起業と、2回の事業継承を経験してきましたが、その上で断言できるのは、これらのデメリットを解消するのは「M&A起業」です

なんと言っても、プロダクトがない状態というのは少なくともクリアしています。そして、十分な数がいなくても、少なくともすでにお客さんがついている状態です。この時点で、ゼロイチ起業の難関の一つはすでにクリアしているわけです。

多くの場合、M&Aで会社を買収する際は、借入もセットです。そしてそれには、個人保証もついてくる場合がほとんどです。それがM&A起業のデメリットではありますが、借入そのものではなく、個人保証は条件付きで解除できる「事業承継特別保証制度」というものがあります

個人保証の問題点については、「経営者の個人保証について改めて考える」として以前書いてますので、ここでは繰り返しません。大事なのは、このような制度を理解して、それを外すことに注力することです。それは企業価値を高めることとイコールですので。

その他、通常は時間をかけて一つひとつ積み上げていく「信用」を買いとることができるのも、M&A起業のメリットです。銀行取引などはその最たる例で、その意味では銀行借り入れを引き継ぐのも、一概にデメリットとは言えません。

M&A起業についても過去記事(成功確率を上げるM&A起業)に書いてますので、そちらをお読みいただければと思います。今回は、心が折れて最初の起業に失敗した漫画が話題なので、ゼロイチに対してM&Aによる起業のメリットを、改めて整理しました。M&Aアドバイザーとしてのポジショントークではなく、何度か起業を経験した者として、M&A起業のメリットは強く実感しています。




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