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私はどうやら詐欺師になりたいらしい。

久しぶりにフジテレビの月9を見ている。

「コンフィデンスマンJP」脚本は古沢良太さん。「リーガルハイ」や、「デート〜恋とはどんなものかしら」などの作品も手掛けていて、ポンポンッと弾けるような感覚の台詞回しが魅力的だ。

「コンフィデンスマンJP」も、長澤まさみさん演じる主人公のダー子、ボクちゃん(東出昌大さん)、リチャード(小日向文世さん)が繰り広げるテンポの良い場面転換と、変装(コスプレ?)も面白い。週の初めに、仕事から疲れて帰ってきたときに見る、一話完結の痛快なエンターテイメントとしてぴったりだろう。ただ一話完結でぐるぐるとスピーディなため、ぼんやりしていると「あれ? いつの間か場面転換してる?」と置いてきぼりを喰らう可能性もあるのだけれど。

何が本当で何が嘘か。
脚本家の古沢良太さんは「コンフィデンスマンJP」のオフィシャルサイトでこんな風に話している。

騙すっていうのは「虚」と「実」みたいなテーマなので、ちょっと哲学的な要素があるドラマになるかな、と思ったので、最初に哲学者風に名言を言うところから始めてみようかなと思ったのと、タイトルが出る前に、みんなが事実だと思っていることは本当に事実なのか、というようなことを問いかけてからタイトルに行く、みたいなことを決まりごとにしたんです

真実と嘘。騙す、騙される。
真実はいつもひとつ! というのは名探偵コナンの決めゼリフだ。確かに殺人をテーマにすると真実はいつもひとつかもしれない。けれど、人生において真実はいつもひとつだとは限らない。何が本当で、何が嘘か。本当だと思い込んでいたこと、思い込みたいこと。嘘だとわかっていてもワザと騙されてあげたり。道はあちらこちらに分かれていて、どの道を通っても、目的地にはたどり着いたりもする。一本道とは、限らないのだ。

「コンフィデンスマンJP」では、悪いことをしてお金儲けをしている相手をマルッと騙してお金をふんだくる。ただ、騙す相手はその道のプロだ。生半可なことでは、騙せない。
ダー子はひたすらに勉強して、客室乗務員の試験を合格して、キャビンアテンダントになったり、リゾート開発を進める女社長の秘書になったり、美術の勉強をして、中国人バイヤーになったりしている。

ダー子が一心不乱に勉強をしているシーンでは「そんなに勉強するなら、まじめに働けばいいのに」とボクちゃんは呟く。そう、その道のプロを騙すには騙す方もプロでなければならないのだ。ボクちゃんは勉強不足で第二話で「怪しい」とばれてしまっていた。あらゆる勉強をしないと、プロを騙せないんだよな、とボクちゃんの詰めの甘さをみて、私もうーんと唸ってしまった。

「コンフィデンスマンJP」は詐欺師の物語だから「騙してなんぼ」の世界だ。しかし、小説やマンガにしても、読者や視聴者をそのストーリーの世界観があたかも本当であるかのように騙さなきゃいけない。「こんな話、ありえない」と思うような内容でも、「続きを知りたい」と思わせなければならない。物語を書きたいと考えている私にとって、読者を騙しとおすだけ力はない。勉強家のダー子さんを見習わなくっちゃと思いながら、ドラマが紡いでいる世界に騙され続けている。「コンフィデンスマンJP」の世界に騙されるのが、病みつきになっていることにも、うっすらと気が付いている。私はまだまだ、詐欺師になるには程遠いのかもしれない。


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