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知らなくてもおもしろい。知ればなおさら、おもしろい。

あまり深く考えずにゲラゲラと笑いながら聞いていたのに、聞けば聞くほどおもしろい。

「落語ディーパー!〜東出・一之助の噺のはなし〜」という番組がEテレで放送されている。

調べてみると2017年の7月末から8月末までの4回と、2018年5月に一夜限りで放送されていたようだ。(去年の自分よ、なぜ見逃したのか……)

東出昌大さんと落語家(噺家)さんが数名出演し、ひとつの演目に対してそれぞれの見解を話す番組だ。落語が好きな人にとってはもちろんだけれど、落語をまったく知らなくても、カンタンなあらすじを説明してもらえるので「まったく分からない」ということはない。

今回は5月に放送された「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」の再放送をはじめ、あらたに「明烏(あけがらす)」「鼠穴(ねずみあな)」「粗忽長屋(そこつながや)」「居残り左平次」の四つについて噺家からみて感じること、落語好きな東出さんが特にこういう場面が好き、などの話が繰り広げられる。

斬新だとおもうのは「落語ディーパー!」の番組内では実際の落語はほんのすこししか見せてもらえなくて「続きはネットでご覧下さい」という流れになっている。確かに、短い落語だとしても番組内にはおさまらないし、「地獄八景亡者戯」なんか、一時間を超える話だ。(途中はしょることもある、とお話しされていましたが)「この話、おもしろそう」と思えば、期間限定なのだけれどNHKのサイトに落語の動画がアップされているので見ることができる。

落語のおもしろさって、一体なんだろう? 話自体がおもしろい、というのはもちろん分かる。ただ、噺家の腕ひとつでおもしろさがガラリと変わってしまうものでもある。私は大阪出身なので、「上方落語」、とくに三代目桂米朝の落語が好きだ。ただそれは、幼いころから、父親の寝室にあった落語のカセットテープを何度も聞いているから耳に親しんでいるだけだし、他の噺家さんの落語をまじまじと聞いていないから、とも言える。先日「ほぼ日の学校」で落語で歌舞伎入門をするという催しに出ておられた桂吉坊師匠の落語もすごくおもしろかった。

個人的な好みではあるけれど天才落語家と呼ばれている二代目桂枝雀師匠の落語はあまり好んで聞くことがない。英語で落語を話してみるなど、すばらしい噺家であるけれど、なんとなく敬遠してしまう。私だけだと思うけれど、すごく早口でお話しされるように感じてしまう。早口だと話の筋を追いかけるのに一生懸命になりすぎる。そうすると、おもしろい箇所でも真剣に耳を傾け過ぎてしまって、私には笑う余裕がない。「真剣に耳を傾ける」と「聞くだけでも必死」というのは似ているような気もするけれど、心構えとしてまるっきり違っているのだろう。

同じ落語の演目であっても、様々な噺家さんが演じている。ただ残念ながら江戸落語の師匠方のことを私は全然存じ上げない。お名前ぐらいは存じ上げている。柳家小さん師匠や、立川志ん生師匠など。最近ようやく立川志の輔さんの新作落語「はんどたおる」がおもしろくて志の輔さんの落語を聞くようになりはじめたところだ。

「落語ディーパー!」では、立川談志師匠が演じた鼠穴がすばらしいとか、八代目桂文楽師匠の明烏の品の良さなどについてお話しされている。同じ演目でも、別の噺家が話せば別の話になる、というような聞き比べをする趣向もある。

聞き比べをしたり、○○師匠のあれを聞かなきゃ通とは言えない、とか言い出すと「なに? 落語って難しそうだし、おもしろくなさそう」と思ってしまうかもしれない。けれど、全然そんなことはない。好きな落語だけ聞けばいいのだ。「落語ディーパー!」に出てくる噺家さんも「この話、あんまり良く知らなくて、今日のテーマだから改めて聞いてきたんですけどね……」なんて、いっておられるほどだ。くだらない話はもちろんのこと、人情話、郭話(遊郭へ出かける話)、芝居話、怪談。本当にいろいろある。好きな分野、好きな噺家さんなど、まずはひとつお気に入りを見つけると、そこからどんどん広がっていくだろう。

期間限定だけれど、まずは「落語ディーパー!」のサイトにアップされている落語を見るのもいいだろう。サイトに落語のオチがかかれているので、そこだけはご注意を。






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