SF筋トレーニングとファンタジー筋の増強

ようやく一冊の本を読み終えた。

その本のタイトルは「三体」。

夏のはじめに発売されたこの本は、Twitterでもあちこちで「おもしろい」と称されていた。本屋さんにいくと目につく場所に平積みにされていて、何度か購入しようと手に取りながらも、荷物が多くてちょっと持って帰るのが大変そうだとか、いま読んでいる本があるからなど、いくつかの理由で「また今度、ね」と棚に戻していた。

しかし、8月にいつもより少し長い夏休みが取れることになり、「よし、夏休みのお供として三体を読もうじゃないか!」と意気込んで購入した。

そう、ページをめくったのは8月の半ば。読み終えるまでに実に丸二カ月も要してしまった。

もっとも、ひとつ言い訳をするならば8月の夏休みと、9月の土日祝日はわたし自身が小説を書くことに時間を割いてしまった。そのため、結局のところ本に没頭して読みふける、ということができなかったのが、読み終えるのに時間がかかった大きな理由だと思っている。

だらだらと時間をかけて読んでしまったけれど、三体はとても面白かった。三部作だということを知らないまま手を出してしまったので、最後は「え? これまだまだ終わらないじゃなの? 早く続きを!」と二部と三部が待ち遠しくなっている。中国語版が読めるなら読みたいところだけれど、辞書を片手に読めるような内容じゃないので、翻訳版を待つしかない。

ただ、少しずつしか読めないのはなんでだろう? と不思議だった。分厚いし、文字も小さめだから読むのに時間がかかるのは分かる。でも、同じくらいの分厚さの本、例えば森見登美彦さんの「熱帯」とかだと、一週間もあれば読んでしまった。恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」はたぶん土日で読んでしまった。読む環境はどれも同じで、寝室の枕元においてある。夜眠るまえや、休日に寝転んで読んでいる。なにが違うのだろう?

そういえば以前も同じように、おもしろいけれどなかなか読み進められない本があったことを思い出した。

浅生鴨さんの「アグニオン」だ。

「アグニオン」もスケールが大きく、物語にぐいぐい引き込まれる。のだけれど、やっぱりちょっとずつしか読み進められなかった。こちらも確か読み終えるまでに一か月くらいかかったように記憶している。

「三体」と「アグニオン」、なぜスラスラ読めないんだろう? と考えてみると共通点がある。それは、宇宙をベースにしたお話だからかもしれない。

宇宙空間に興味がないわけじゃないけれど、どうもわたしのなかでは想像しにくい場所なのかもしれない。物理の勉強をぜんぜんしてこなかったこともひとつの要因かも知れない。

宇宙が舞台になる物語と言えば「スターウォーズ」シリーズもそうだけれど、たしかにスターウォーズもそれほどハマっていない。ガンダムも宇宙が関係しているのだろうか? 全然話の内容がわからない。アムロは結局誰にぶたれたのだろう? 全然分からない。思えば「E・T」だって見たことない。宇宙が関わっているお話で唯一知っているのは「ドラゴンボールZ」くらいかもしれない。ナメック星に行ったことろとか、宇宙旅行といえる、はず。

宇宙そのものについて謎が多い。だから、そこにお話がのっかってくると「ちょっとまって、そもそも宇宙空間ってどうなってるんだっけ?」と、そこで考えてしまうからかもしれない。

しかし、まったくのファンタジーになると、前のめりに理解が進む。

ついに「十二国記」を読み始めてしまった。エピソード0「魔性の子」から読んでしまったので、もしかしたら順番を間違えたかもしれない。エピソード0って、あとから付け足されたお話だよね、と読み始めてから気が付いた。まあ、しかたない。それでもおもしろいし、ぐんぐん読んでしまう。

十二国記のほうが、どちらかといえば世界観を文章の中からイメージして作り上げなくちゃいけない。その分、難しいような気もするけれど何もつまずくところがない。

SFもファンタジーと言えばファンタジーのはずなのに、宇宙が関わってくると、おもしろくってもなかなか読み進められない。もう少し、宇宙に関するSF筋力を鍛えたいところだ。けれども、十二国記を読み始めるためファンタジー筋がパワーアップするに違いない。


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