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【観劇レポ】宝塚花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』『シャルム!』

最初にお断りしておきます。
いつもは少しばかり客観的な視点を意識しつつ書いている観劇レポートですが、今回ばかりは個人的な視点、偏った一部の話しかしません。悪しからず。だって無理です。退団されてしまうのだから。あの明日海りおさんが。

私の宝塚は明日海りおさんの『CASANOVA』から始まりました。今回ようやく2回目。今年の初めに宝塚友の会に入ったもののずっと当たらなかったチケットが、明日海りおさん退団公演で唯一当たったというのには見てもいいよと神様に言ってもらったような気さえしてしまいます。

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『A fairy tale ~青い薔薇の精~/シャルム!』

前回の『CASANOVA』は2幕の長編だったので、お芝居とショーの二本立ては今回が初めてです。

明日海りおさん退団公演、そして娘役トップの華優希さんは大劇場デビュー作。『CASANOVA』で仙名彩世さんとの円熟のトップペアから見始めた身としては今回は一体どんなものになるのだろうと思っていましたが、明日海りおさんの集大成でありつつ、新しい花組の可能性を感じさせるものでした。

ひたすらに個人的な感想を書きます。

禁忌を犯したために存在しない青い薔薇の精にされてしまったエリュ(明日海りおさん)。
人ではない存在ということもあってなんとなく全体を見回すような立ち位置に感じました。それが、新しい次の時代へ進んでいく花組を見守られているように感じて、、、。本当に美しかった。

華さんは『ポーの一族』のメリーベル役の印象が強かったので若い演技表現がお上手なのかなと思っていたのですが、今回のシャーロットも小さいころから薔薇の精エリュと戯れる少女の役から始まるものの、少女から老女まで一人の女性の一生を演じ切られていて、子供のイメージが強かった分、老女の時の演技に感銘を受けました。

次期トップの柚香光さん、安定の実力で今後も花組を支えていくであろう瀬戸かずやさん水美舞斗さん。それぞれ素晴らしかった。冒頭に書きましたが今後の新しい花組の一編が見えたような気もしたのです。

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そして、その日私の心が最も動いたのは第2幕、ショウの最中でした。

宝塚ってこんなに踊るんだ…!と初見のショウに圧倒されていたのですが、男役のことを考え続け、男役を極めた明日海りおさんの黒燕尾姿…!!!
今この方にこれ以上似合う服がほかにあるでしょうか。黒の燕尾服をこの方以上に着こなせる方がいるでしょうか…!階段の上に立っただけで劇場の空気がエネルギーがそこに集中したかのようでした。

そして演出。。。

花組の男役全員が黒燕尾をまとい明日海りおさんを中心に半円形に並んだかと思ったら端からざざあっと音がするかのように一斉にみな明日海りおさんに頭を垂れます。
彼女がトップとして花組を背負ってきた時間、責任へ、タカラジェンヌとして過ごしてきた時間への敬意を示すかのように。
それを受けた明日海りおさんは一度深くしゃがみ込みます。
その手が舞台の床に触れる。
私には舞台に積み重ねたご自身の想いを掬い上げるようなしぐさに見えました。もしくは劇場になにかの想いを伝えたのか。

掬い上げたご自身の想いを胸に、
瀬戸さん、水美さんと、明日海さんの時代を支え、そしてこれからの花組時代をも支えるお二人とそれぞれペアダンスを。
最後に、次期トップの柚香さんと。お二人が舞台上で交わした視線で何を伝えあったのか私にはわかりませんが、その美しさに、凛とした強さに、胸がいっぱいになりました。そして、最後…、そっと柚香さんの背中を押し出す明日海さん。押された柚香さんの表情。こらえていた涙がもう止まらなくなりました。

誰ですか、この演出を考えたの…! 誰よりもかっこいい燕尾服姿を目に焼き付けたいのに涙が邪魔して全然見えない。。。

こうやって105年もの間、宝塚はバトンをつないでつないで走り続けているんだな、と。その中で明日海りおさんの時代に間に合ったことを心から幸せに思います。本当にどうもありがとう。

いよいよ今週末で大千秋楽。
最後の最後まで輝き続ける明日海りおさん。組子のみなさま。そしてファンのみなさま。忘れられないほど幸せな日々をお過ごしください。

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