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青くないドナウ描いた画家  エゴン・シーレ展

2月4日(土曜日)、上野の東京都美術館で開催されているエゴン・シーレ展に行きました。
いつものように朝一番のコマを予約し、混み合うLBFをさっと抜け、まだ人が少ない1Fから鑑賞しました。今回は会場を3周しましたが、立ち去り難い絵に出会いました。

それは、風景画。

エゴン・シーレについての詳しい解説は他の人に譲るとして、人物画よりも風景画に釘付けになってしまいました。
エゴン・シーレが描いているドナウ川の色彩に、彼の精神世界を見た気がしました。

解説(風景画は撮影可)

上階にある風景画の展示室はまだ数人の鑑賞者だけでした。静寂で、他の人の存在を感じない1人だけの空間の中で、1つ1つの作品をじっくり、遠くから、近くから見つめることができました。
その中で見入ってしまったのが、この作品、「ドナウ湖畔の街シュタインⅡ」です。

ドナウが青くない。

この絵を見た時の最初の印象です。近くで見るとうっすら青い色が描き込まれていますが、離れて見ると暗いドナウです。

ドナウ川とシュタイン

冬のドナウの風景なのかもしれません。

モルダウ湖畔

この作品にも惹かれました。ところどころの赤の色彩がアクセントになっていて見飽きることがありません。

吹き荒れる風の中の秋の木

この作品の前に立つとさまざまなことを想像します。

私にとってドナウ川というと、ヨハン・シュトラウス2世の「美しき青きドナウ」が思い浮かび、それは1月1日のニューイヤーコンサートでウィーンフィルが毎年演奏する華やかな新年を飾るイベントのテーマとなっているオーストリアの自然です。
ドナウ=華やか、という印象を持っています。

2012年夏、青きドナウの風景を求めて車で彷徨ったことがありました。

ウィーンからザルツブルクに行く途中の、世界遺産に登録されているドナウ川のヴァッハウ渓谷にある、デュルンシュタインという街はシーレが描いた「Stein on the Danube Ⅱ」の街だと思います。


ドナウ川のヴァッハウ渓谷

ドナウは真っ青ではありませんが、渓谷・街並み、ブドウ畑が織りなす美しい景色です。

対岸の町とドナウ川

ちょうどランチ時でしたので、湖畔の斜面にあるレストランで食事をとりました。

ランチをとったレストラン

渓谷にある街なので、岩山が川までせり出しています。

渓谷沿いのレストランからみたデュルンシュタイン

ケーンリンガー城は、イギリスのリチャード王が幽閉された城として知られています。

ケーンリンガー城跡


ブドウ畑とケーンリンガー城跡
デュルンシュタインの町中

デュルンシュタインはクルーズ船の発着場所になっているので、ドナウ川を上り下りするクルーズ船を見ることができます。

ドナウ川とクルーズ船

私はドナウ川に華やかさを感じ、旅行中も青いドナウを求めていました。ドナウのついての印象派は今も変わりません。仮に私に絵心があってヴァッハウ渓谷のドナウ川の風景画を描いたとしても、きっと印象派のような絵になることでしょう。この時も明るい風景を求めて写真を撮っていた記憶があります。
この後にリンツに立ち寄り、そこでもドナウ川の写真を撮りましたが、明るい写真です。

リンツのドナウ川

私には、ドナウ川=華やか、という印象が脳髄まで刷り込まれてしまっているので、たとえ冬の暗い天候の中でドナウ川を見ても、エゴン・シーレの色調のような見え方はしないと思います。

だからといって、エゴン・シーレの風景画に拒絶感を覚えたのではなく、自分の精神世界との違いを認識し、エゴン・シーレの精神世界により興味を抱く展覧会でした。

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