madeleine

madeleineと言います。よかったり悪かったり。

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最近の記事

蛇の目傘

朝から空は曇り模様だった。気象予報アプリによると十一時から本格的に雨が降るらしい。当てになるかどうかはわからないが。僕はいつもの紺色の傘を持って出かけた。 僕みたいに傘を持っている通勤客が多かった。電車の中はむしむししていて、窓が結露している。 こんな日にみんなどうして同じような紺色の傘を持ち歩くのだろう。もっと晴れやかな色の傘を差せばいいのに。しかし僕を含むくたびれたおっさんたちには青空色の傘はどうも不似合いだ。曇り空に似た色でいい。 乗り換え駅で降りてまっすぐに階段

    • めまぐるしいめまい

       曾祖父が残してくれたこの家は古くて、廊下は歩く度にぎしぎしと鳴る。廊下に組んだ板からは地面が見えて、それでも少しも怖いと思わない程度にはわたしはここに住んで長い。海が近いこの土地では、家が朽ちるのも早いのだろう。けどここまで来るとさすがになんとかしなければだめなのかもしれない。せめて白蟻駆除は頼んでみようか。  帰宅したのはちょうど夕暮れの頃だった。海の向こうに日が沈むのが見える。その角度で季節は分かる。もうすぐ春だ。そういえば沈丁花の香りをかいだ気がする。  カーテン

      • やさしいこはわるいこ

         わたしのせいだ。わたしがお金を稼がなくなったから火をつけられたんだ。コートの襟をぎゅっと両手で握った。黒煙の奥から飛んできた火の粉がわたしの頬を焼いた。  わたしの帰る場所、アパートはもうない。黒い柱が立っているだけだ。  どうすればいいのか、ぼーっとしているわたしに、消防の人がなにか言ってくれているのには気がついていたけれど、わたしは何せぼーっとしていたからその場から、ふらあり、と離れた。  ふらあり、離れても行くところがない。持っているのはハンドバッグだけだ

        • たまご

           冷蔵庫には必ず卵が入っている。じいさんはそれを生のまま割って口の中に入れる。でろん、と吸い込まれていく黄身がこちらを見ている。じいさんの喉を通るのが嫌なのかもしれない。少なくともおれは嫌だ。じいさんの口からは死臭がする。こお、こお、と息を吐く。もうあれは半分死んでいるのだ。  こわいな、こわいな。  黄身。黄身は君にはわからないだろうという目でぎろり、うらめしくにらむ。おれもにらみ返す。おれはお前のようにはならない。死からほど遠い、やわらかい人間として、誰にも吸収される

        蛇の目傘

          ある日のマドレーヌの日記④

          創作活動は鮪だ。 泳ぎ続かないとよい小説が書けない。つまり毎日書くことが重要だ。 え?本気?それ本気で言ってる? 『生きていくために小説を書いている』ってマジで?じゃあ鮪みたいに泳げなくなったら死んじゃうの?書かないと死んじゃうの?  ちなみにわたしはほめられたくて創作活動をしています。ほめられたい! ほめられたいほめられたい! ほめられないなら書かなくってもいい。実はここ数年ほめられないということが怖くて本気で人にぶつけるような小説を書いていませんでした。それでも読んでく

          ある日のマドレーヌの日記④

          ある日のマドレーヌの日記②

          滋賀県に住んでいます。滋賀県以外に住んだことはありません。 帰巣本能、というものなのでしょうか。お出かけしていても「はっ、滋賀県に帰らねば!」と思ってしまうのです。だから実は夜遊びというものほぼありません。酒を飲んでへべれけになったら滋賀県に帰れないイコール死、くらいでもうここ何年も酒は飲んでいません。 わたしがいまいるのは自室です。作り付けの壁に埋まった本棚があります。 「おまえは終身ここにいるんだよね?滋賀県にいるよね?」そう語りかけられているような気すらします。まあそう

          ある日のマドレーヌの日記②

          ある日のマドレーヌの日記①

          こんばんは。note始めてみました。つらつらと何かしらのことをこれから書いていこうと思ってます。世の中にはなぞなぞなことが多いのでなぞなぞなことについて考えていこうかと。これからよろしくお願いします。 ある日のマドレーヌの日記というタイトルは中学生のとき書いて友達に見てもらっていた文章からとりました。これはもしや中二病なのか?

          ある日のマドレーヌの日記①