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姉(美容院に行くと疲労で痩せる)

ハッッッッッ

前回の日記から何日が経っただろうか。
ようやく土の中から出ることができた。前回の投稿から1日半くらいは経っただろうか。

1日半ならまだ毎日投稿の範疇だろう。ちょっと遅れちゃった人くらいの感じだ。えーカレンダーを確認っと。

6日......?6日っていうと、つまり6日.......?

素直にごめんなさいを言います。ごめんなさい。

美容院に行っていない人のシグナル

就活のために黒く染めた髪が就活前に茶色に戻ってしまった。前髪も伸びほうだい伸びて、一歩に一回は耳にかけ直さないと都合が悪い。

なぜ人間は一度美容院に行くと、3ヶ月ごとに「美容院に行っていない人」のシグナルが出るようになってしまうのだろうか。3ヶ月前に行ったのに。
一度美容院に行っただけでも意識の高い女子大学生じゃないのか。毎回「今から美容院に行く人」の時期に強制突入させられるのが気に入らない。

前髪をかき上げ、耳にかけ、「美容院に行くべき人」の状態を拗らせて1ヶ月ほど。

やたら金八先生の雑マネをする人がいるなと思ったらショーウィンドウに映った私だったので、さすがに美容院に行くことを決意した。

美容院の難しさ

美容院に行くには決意がいる。
美容院に居る人や物の中で馴染みのあるものが一つもないからだ。留学先のホストファミリーとどっちが馴染みがあるかと考えると、ちょうど分からなくて考え込んでしまうほどだ。

まずは照明が明るすぎる。自然光より明るいことなんてあるか?

その中で忙しく動いている美容師さんたちもオシャレすぎる。大体ボンタンみたいなズボンにチェーンがぶら下がっているがヤンキーではない。ヤンキーではないのにボンタンを履いていいんですか?マイキー先生!
先生も「いねえよなぁ?!」と言っている。東リベ未履修の私の中にいる先生はこれしか言わない。

美容師さんたちはオドオドしっぱなしの私に気を遣って、会話がなくても大丈夫な空気を作ってくれる。
正直これも辛い。
私をお客様として認めているという笑顔は絶やさず、口をAmazonのロゴ状にキープしていてくれる。
何を聞いてもシャワシャワシャワ......としか答えられない客なんか「店に迷い込んだ前髪の長い女」でしかない。本当は裁ち鋏でひと思いにいきたいだろうに、髪を絹のように扱ってもらい、Amazonの笑顔まで向けられ、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうのだ。

時折美容師さんが沈黙を破って放つゆる〜いジョークは、全国どんな精神状態の人間でもフフッとなる高クオリティだ。
これをくらうのもかなり辛い。落ち着いた声の一言に込められた陽キャ成分が濃すぎるのだ。マシンガンのように喋ってくれたほうがまだオーラに慣れてくるかもしれない。
だが思い出せ、美容師さんが一射入魂スタイルに切り替えたのは私にコミュ力がないせいなのだ。わがままを言うな。

こうやってグルグル考えながらシャンプー台やカット台に引っ張り回され、毎回目が回ってしまう。

この椅子たちに座るのが難しいという話もさせてほしい。

まずはカット台。
低い上に足元にでっかい安全バーのようなものが飛び出ている。座る時そこに足を入れるわけだが、まずそこに両足を入れてから腰掛けるべきか、バーを避けて座り、そのあと足を枠の中に移すべきなのか、正解が未だにわからない。

次にシャンプー台。
今度は足の部分がマッサージチェアのように前に伸びている。足をまっすぐ投げ出して座るようにできているのだ。
どの位置からこの椅子を攻略すればいいのかサッパリだ。これはみんなそうじゃないだろうか?

この2つの着席タスクだが、移動→着席までの間に心構えの時間がないことが難関たる所以だと思う。

案内してくれる美容師さんの足取りに合わせて歩幅を調節し、ツルッツルの床にも注意しながら間繋ぎトークに反応もしなければいけない。
これら3つのことに集中してペンギン歩きをしていると、突如あの難解な椅子が現れるのだ。

しかも天国のような照明に全身を照らされ、しっとりした笑顔のお姉さんお兄さんに見つめられている。その中で口を動かし続け、ペンギン歩きのリズムを複雑な足捌きに切り替えなければいけない。

鼓動が速まり、頭が熱〜くなる。

意を決した私が毎回どうするか。
銀色のバーにガニ股で片足を踏み入れ、寝転んだ椅子にはエビのように跳ねてお尻を着地させるのだ。
美容師さんへの返事もおざなりになり、その前後の私は「あ〜ハハハえ〜わえ〜おわ〜」としか言っていない。

あまりにも恥ずかしすぎる。
街に攻めてきた巨大な怪物のようにガニ股で踏み入れた足や、「つ」の形になって椅子に投げ出した全身が着席後もじんじんと痒い。

椅子の前で突然パフォーマンスを始める客だと思われていないだろうか。思っても言わないでいてくれるだろうけど。

正直着席タスクが発生したら会話をやめて全員一度後ろを向いてほしいし、「あーこの椅子難しいな、これをこうして、ヨイショっと!」と言いながら座りたい。
だが毎回その掛け声をあげる客はTwitterから現実世界に出てきていい客ではない。

美容院に行くためのレッスン

......いかん、美容院予約のページを開いただけでここまで不安が噴き出してしまう。

正直いま美容院帰りくらい疲れている。
なんて馬鹿なんだ。このあと私はもう一度そこへ行くというのか。

しかしそろそろ口癖が「このばかちんがぁ〜」になりつつある。金八先生未履修の私の中にいる金八先生もこれしか言ってくれない。
背に腹はかえられない。重たい指で予約を完了した。

あとは決戦の日まで、ステップの練習、声を後ろまで届ける発生練習、洋服選びだ。
このまま美容室に行き続けたら私はアイドルになれるかもしれないな。

アイドルになったら稼いだお金でゴンチャのトッピングを全部載せする毎日が送れるのか。やったね。


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