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二世ウイーク

毎年8月、この時期にロサンゼルスのリトルトーキョー周辺で行われているNisei Week https://niseiweek.org/ は、コロナの影響で2020年の今年はバーチャルで開催なのだそうだ。リアルに開催されていれば80回目。記念の年として盛大に行われていたはずだ。

YouTubeのライブ配信(Facebookでもやってた)を眺めながら、1934年から戦争による6年の中断を経て、いまもロサンゼルス日系社会のなかで大きなウエイトを占めているであろうこの"祭り"が、どういう意味を持つのか、つらつらと思いを巡らせた。

最初はおそらく、移民社会の中で"祭り"がもたらす人々の交流と経済的側面の補完のために始まったのだと思うけれど、それは今は、アメリカ合衆国という国にすむ人々がそのルーツに思いを馳せ、今の自分たちが何であるのか、どこに向かっていくのかを再確認する場でもあるはずだ。

8月という、日本で言う「お盆」の時期の開催は、単なる"夏祭り"を超えた意味をこのフェスティバルに与えているだろうし、その期間には当然"8月15日"という日系アメリカ人にとっても特別な意味を持つ日も含まれる。

全米日系人博物館や、あの442連隊含む日系人部隊のメモリアル"GO FOR BROKE"を臨むストリートでのパレードは、Nisei Weekのハイライトでもあるけれど、そこには各人のバックボーンとなる日本各地の祭りの再現や、ハワイなど他の日系人社会との連携もされていて、日本人日系人問わず、日本という場所にルーツを持つ人々の縮図のような祝祭空間だ。

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今年はバーチャルになったがゆえに、老若男女、様々な立場の人のインタビューが映像で流されていたけれど、あの戦争を経験した本人やその子孫が当時の記憶や思いに触れていたり、LA以外の日系人社会同士のやり取りもあって、例年以上にその意義と歴史を感じさせる内容になっていたと思う。

LAに滞在していた時に一度このパレードを見物したことがある。その滞在がかなり個人的にネガティブな理由であっただけに、そこに参加した多数の人々の顔の晴れやかな表情が、とても心に沁みたことを覚えている。希望をもって渡った人、苦難に耐えた人、そして根を張った意志を受け継いでいる人、また、そこに入り込めずに脱落していった人…。

人が何を受け継ぎ、自分が何であるかを認識し、どこで生きていくか。8月は日本に住む人にとっては、祖先の霊が戻り、また、一度その国民国土を失いかけた事実を思い出す時期でもある。そんな月に北米大陸で行われるこの祭りは、そういう意味でも遠く太平洋を越えて繋がっているのだと思う。


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