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【調査活用事例】株式会社タカラトミー様 AIスピーカー発売、プライシングの決定打は豊富な調査手法の提案と適切なマーケティング支援

こんにちは。マクロミル広報の井上です。
マクロミルが、どのようなクライアント様と、どのような取り組みをしているのか、クライアント様へのインタビューを通じて、その内容をご紹介する企画。今回は株式会社タカラトミー様のインタビューをお届けします!
 
まもなく創業100周年を迎える株式会社タカラトミー様(以下、タカラトミー様)は、2020年11月に新しいモノ・こと・領域へチャレンジする部署である「Moonshot Project」を立ち上げられ、『アソビで、未来にこたえます』をビジョンに、新規領域の開拓を取り組んでいらっしゃいます。
 
この度、同部署から2022年9月29日に最先端のAI音声合成技術を活用した新商品『coemo(以下、コエモ)』が発売されました。アプリに登録した家族や親しい人の声とそっくりな合成音声で、60種類の童話などのコンテンツで自然な読み聞かせを行うことができるスピーカーとして、「日本おもちゃ大賞2022」のエデュケーショナル・トイ部門で大賞を受賞されるなど、発売前から大きな注目を集めていた新商品です。
 
『コエモ』を発売するにあたり、どのような課題があり、マクロミルがどのようなご提案を行ったのか、タカラトミー様で『コエモ』の開発から発売に至るまで手掛けられた五島様、根岸様、マクロミルで本件を担当した平松にお話を伺いました。

株式会社タカラトミー Moonshot事業部
企画開発2課 課長
五島安芸子 様 ※以下敬称略
株式会社タカラトミー Moonshot 事業部
Communication Team 課長補佐
根岸さやか 様 ※以下敬称略
株式会社マクロミル アカウントマネジメント1部
第1ユニット2 グループ長
平松祐太
新発売された『コエモ』

コンセプトの方向性の確認だけでなく、魅力をさらに高めたい

―マクロミルではどのような調査を実施されたのでしょうか。
根岸:
『コエモ』の商品企画は、部署が立ち上がってまもなくスタートしており、設定したコンセプトで進めて良いかどうかの検証を重ねていました。その結果から「読み聞かせには確実なニーズがありそうだ」「パパやママの声を用いることで、お子様に馴染やすく惹きがありそうだ」ということがわかり、いよいよ商品化していくフェーズでマクロミルに相談をしました。
 
マクロミルに最初にお願いしたのは、読み聞かせに対するニーズ、コンセプトの需要性の調査です。この調査で、AI音声技術を通した声でも受け入れられること、実際に合成された自分の声で読み聞かせができる点に魅力があることを定量的に把握できたため、コンセプトの方向性が間違っていないことがわかり、手ごたえを感じました。
 
ただ、率直にお話すると、もう少し商品の魅力を高める必要があるとも感じていました。そのため、『コエモ』を訴求するためにはどういう表現やアウトプットをしていけばより需要を高められるのか、デザイン面や収録する童話などのコンテンツ数もさらに魅力を高めるための検討を重ねる必要があると考えていました。
 
平松:今日のインタビューには参加をしていませんが、営業担当の熊野、リサーチャーの中澤と鹿島も今回のプロジェクトの一員として連携させていただき、根岸様より「さらに魅力を高めていくための要素を導きだしたい」というご相談を受けて、調査上でどこの項目を改善したらより魅力につなげられるかは常に皆さんと案を出し合っていました。
 
根岸:2回目の調査は、魅力を高める要素を明らかにすべく、デザインの受容性に加え、コンセプトやコンテンツ数について調査し検証しました。回答者の回答を誘導するようなコントロールをしたら意味がないので、1回目の調査結果を踏まえて客観的な回答を得るために、平松さんや中澤さんにも相談して、様々な手法を提案いただき、丁寧にサポートをしてもらいました。
 
調査の結果、デザインとコンセプトについては「形が可愛らしい」「親近感が湧く」「安心感がある」といったコメントが多くあがり、この方向性で間違いないと確信を持つことができましたし、コンテンツ数については「子どもは同じ話を聴きたがる」「繰り返し聴くことも大切」といったコメントを踏まえ、60種が適切だと判断することができました。
 
社内ではさまざまな競合商品がある中で、声だけでお話を聞かせる商品の需要に懐疑的な面もあったのですが、調査結果を元に根拠をもって需要性の説明ができたことは非常に良かったと思います。
 
―一連の調査の中で、印象に残ったことはありましたか。
 
平松:少数ではありますが、自由回答で「暗いところで顔が光るとお化けみたいで怖い」というものがありました。自分では思ってもいなかった消費者の意見だったので、リサーチってやっぱり面白いなと思いましたね。そういう声をどうやったら払しょくできるんだろうと、みんなで議論するきっかけにもなりました。
 
五島:『コエモ』は吹き出しをイメージした形をしており、以前は全体的に光るようにしていたため、この吹き出しの形がお化けの形に見えてしまったのかもしれません。こういった意見を受けて、ブラッシュアップを重ね、最終的には内側の丸い部分だけが優しく光るようにしました。光り方を限定的にし、ぽわんと綺麗に光るようになったので「怖い」という印象は払しょくできたと思います。自由回答が気付きとなってより良い形にすることができました。
 
根岸:自由回答を設けましょうと平松さんからご提案をいただき追加したのですが、さまざまな意見を読み込んだりテキストマイニングで可視化したりなど、非常に参考になり、追加して良かったと思います。
 

消費者視線で徹底的に意見を出し合ったプライシングの調査過程

―新商品である『コエモ』の販売価格はどのように決定されたのでしょうか。

根岸:3回目の調査として、最終的な価格を決定するために、購買チャネルや購買情報源について調査をしました。価格決定が大きな課題だった中で、価格決定における調査手法をいくつかご提案いただきました。
 
五島:新商品の価格決定の際は、過去の経験上、これぐらいの価格が適切ではないかという感度はありますが、『コエモ』は今までにない新規性があったため、どのレンジの価格に設定すべきか、その判断が非常に難しかったんです。
 
根岸:『コエモ』の新規性の要因の一つとして、童話などのコンテンツをアプリで課金いただき、ダウンロードする要素があります。『コエモ』の本体価格、無料で提供するコンテンツ数、追加で購入いただくコンテンツ価格という複数要素とそれに伴う複数のパターンが想定されたので、価格決定は複雑でした。
調査設計段階からマクロミルにご相談して、こういう方法もあるんだと勉強になりましたし、適切にアドバイスをいただけて、納得感を得られる結果となりました。
 
五島:消費者の方々のお悩みを『コエモ』が手助けしてくれるという回答が多くみられたことで、値段以上の付加価値を提供できると確信が持て、最終価格を決定する上での重要な要素となりました。

 もうすぐ100周年の節目。掲げたビジョンは『アソビで、未来にこたえます』。

―Moonshot Projectで掲げられているビジョンについて教えてください。

五島:タカラトミーは、2021年から2023年までの中期経営計画の三カ年計画の中で、持続的な成長の原動力を「おもちゃ」から「アソビ」へと軸を移した事業領域の拡大について発信しています。その中で、既存ビジネスの他にも次の成長の原動力を作っていくべく、経営直下の組織として生まれたのが、私たちが所属するMoonshot Projectです。

Moonshot Projectでは、「アソビで、未来にこたえます」をビジョンに、『コエモ』のようにアプリやAI技術など、新たな領域を取り入れながら「アソビ」を通じて社会や未来をもっと楽しくすることを目指して活動しています。

具体的には、デジタルとアナログのトイを掛け合わせて新しい価値を創っていくチームと、シニアも含めてアソビ人口の拡大を目指すチームで、それぞれ商品やサービスの開発に取り組んでいます。

―会社の成長の原動力を担う部署として、責任も伴うと思いますが、やりがいも大きいのではないでしょうか。

五島:経営直下ですと、決断が早く行えるためスピード感を持って進めることができます。その中で、マクロミルで調査にご協力いただけた結果を経営陣へスピーディーに数値で報告できたことは良かったですね。また、根岸も私も子どもがいるのですが、母親目線の意見などのアナログ要素を上手く融合できたことも、モチベーションにつながりました。
 
これまでタカラトミーは、創造力・技術力・品質力を積み上げ、アソビをカタチにしてきました。今後もこれらの強みを守り維持しながら、最先端のテクノロジーとアソビの力で未来を創造していくことは、チーム皆にとってやりがいであり、チャレンジでもあります。
 
根岸:『コエモ』は、仮説立て・構築・検証というフェーズを経て、前例のない新しいビジネスを創造することができたと思います。結果として、「日本おもちゃ大賞2022」も受賞することができ、タカラトミーの中でのリーンスタートアップを形にできたことは嬉しく思います。

リサーチのデータを活用したマーケティング支援へ

―今後、マクロミルに期待することはありますか。

根岸:今までのようにマクロミルからアドバイスをいただきながら適切な調査を行っていきたいと考えています。
 
平松:ありがとうございます。今回の『コエモ』のプロジェクトは、ディスカッションからスタートし、調査設計から分析までご支援しましたが、マクロミルとしてはデータの利活用、さらにはマーケティングのご支援まで伴走することを目指していますので、例えばデータの利活用では、タカラトミー様の社内で、過去の調査の質問項目を横軸で比較できるといったツールなどがあると、お役に立てそうですよね。
 
根岸:そうですね、過去の調査や調査結果を確認できるだけでも、即マーケティングに活かせて参考になりますし、社内の調査実態も把握でき、非常に助かると思います。
今回の一連の調査でも、毎回ミーティングで平松さん、熊野さん、中澤さん、鹿島さんらと多くのディスカッションを重ねて、それぞれの視点で意見を率直に言い合える環境であったことが良い結果につながったと思いますので、今後もそんな関係性を続けられると嬉しいですね。
 
 
―本日はありがとうございました。
 
(編集後記)
五島様、根岸様にとって、新しいチャレンジとなるアプリやAI技術を取り入れたお取り組みとなる事例で、貴重なお話をお伺いすることができました。
マクロミルがお客様のご要望に対して、データをどこまで、どのように提供し発展して行くかというところは未知数ではありますが、今後、益々様々なご要望に応えられることができると広報一同も嬉しく思います。お忙しい中にインタビューのご協力いただき、ありがとうございました!