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フリーランス研究家 黒田さんに聞いてみた 会社員とフリーランス、結局どっちがいいの?

フリーランスだと失いがちなフィードバックの機会。意識して仕組みを作り出す。

ーーフリーランスと会社員の両方を経験されたうえで、会社員のほうが恵まれていると感じることはありますか?
成長につながる評価が受けられる点は、会社員のほうがいいですね。会社員だと、自分の成長のことを考えてくれる上司がいる。同僚からの横の刺激も受けられる。また、四半期の評価でフィードバックを得ることもできる。

フリーランスだとその機会がない。するとどんどん学ばなくなる。自分が今できることの再生産しかできなくなると、ジリ貧を呼びます。クライアントはこちらの仕事が微妙だと思ってもフィードバックはくれません。契約を終わらせるだけです。

これは、すべてのフリーランスにあてはまることだと思いますね。自分自身でフィードバックの機会をつくらないといけません。

ーーなるほど。どのようにフィードバックの仕組みをつくっていますか?
自分のポートフォリオサイトに口コミを載せるためということで、定期的に感想を聞くようにしています。

あとは、契約期間を設けないこと。ディスカッション後、次回の実施についてその場で確認します。都度パフォーマンスが発揮できないと、次の契約につながらないという緊張感がある。契約されないということが、ひとつのフィードバックです。

契約期間だからという理由だけで、クライアントが満足していなくてもとりあえず続いている、ということがないようにしています。
関係、時間、お金…軸は自分で選ぶ。「私はタイムリッチ派」

ーーフリーランスでよかったと感じる点は?
人間としての自由度です。仕事をする相手を選べる「関係の自由」、パフォーマンスがあがる時間にあわせて働けて、仕事の優先順位をつけられる「時間の自由」が高まりました。

「お金の自由」については、フリーランスになることで自由度が減る人もいるかもしれません。私は「キャッシュリッチ」よりも「タイムリッチ」を重視しているので、全体として自由度が高まっています。ストレスは減っていますね。

ーー仕事が続くだろうかと不安を感じる人も多いと聞きます。
フリーランスの仕事は半分以上が紹介でつながっているというデータもあります。

今のクライアントを大事にしていくと、そのクライアントがリピートしてくれたり、紹介で仕事が続いていくことはよくあります。

仕事の連鎖をつくるためにも、期待値以上のものを返す意識を持つべき。でも、がんばりすぎることはありません。負担にならない、楽にできることで価値を上乗せする。そうすれば、自分をすり減らすことことなく価値を高められます。

コロナで失われた「偶然性」を自ら「計画」。フリーランスに必要な出会いをつくる。

ーー働き方以外で、新型コロナによる影響はありますか?
日常の中での偶然性がなくなったことですね。これまではリアルなイベントでの名刺交換から仕事が始まったり、コワーキングスペースでの出会い、知り合いの紹介などでつながりが増えることがありました。フリーランスにとって、それらのつながりは重要なものでした。

今では時間割をこなすように一日が過ぎてしまい、予定調和になってしまうことに危機感を感じています。

ーー偶然性を生むために意識していることはありますか?
オンラインのビジネスマッチングサービスを使い、対面で会う機会を増やしました。「bosyu」や「yenta」「バーチャルランチクラブ」などを使い、コミュニティについて興味がある方を募ってお話しています。物理的な偶然の出会いが減った分、オンライン上で働きかけるようにしました。

ーー自分で偶然をつくっていくんですね。
「計画的偶然性」ですね。自己紹介やプロフィールをオンライン上で公開し、つながりそうな人のアンテナにひっかかるように充実させておくことが大事です。

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一人ひとりが合うコミュニティを見つけ、ポートフォリオを組めるような世の中に


ーー今後やっていきたいことはありますか?
これから、どういうコミュニティに所属して生きていくかが重要視されるようになると思います。人々が自分にぴったりのコミュニティを見つけられる世の中にしたいですね。そのために、一つのコミュニティの人数ではなく、コミュニティの数やバリエーションを増やしていきたい。

ひとりでできることではないので、議論メシから派生した姉妹コミュニティなどが生まれていく仕組みがつくれるといいなと思います。

ーーなぜそこまでコミュニティが重要なのでしょうか?
コミュニティを通じて変身資産を貯めることができるからです。

変身資産とは、リンダ・グラットンの著書『LIFE SHIFT』の中で言及されている、3つの無形資産のうちのひとつ。変身資産は、転職や新しく事業をおこすなど、自分を変身させるために必要な資産で、自分についての知識、多様性に富んだネットワーク、新しい経験に対して開かれた姿勢といった要素があります。

他の人の対話の中で自分への理解を深めていき、多様な意見に触れて新しい視点を得る、これらはまさしくコミュニティの中で得られます。

コミュニティの中で変身資産を貯めることで、変化にもより柔軟に対応できるようになり、自己実現にたどり着きやすくなります。

ーー会社もひとつのコミュニティですが、会社外のコミュニティである必要性はあるのでしょうか?
従来は会社も、変身資産や、活力資産、生産性資産を貯めるひとつのコミュニティでした。今ではどんどん実力主義寄りになっていたり、会社の寿命が短くなり生涯一つの会社で働く時代ではなくなっていますよね。そうすると変身資産の価値があがってきます。

日本では、自分が所属し、ここで何かやってみようと思えるコミュニティがあまりない。地域コミュニティや家族コミュニティも機能しなくなっている。地域に愛着持てない若者も多く、核家族化も進んでいます。日本は宗教コミュニティも強くない。

そんな中で私が担当しているのは、オンラインの価値コミュニティ。特定の価値に共感した人たちが集まるコミュニティです。例えば「議論メシ」は対話に価値があると思っている人のコミュニティ。そういう特定の価値を基準にした新しいコミュニティが、自分の居場所や生産性、活力をためられる場所となっていきます。

自分に合致する要素を全てもっている会社に出会うことはなかなか難しい。会社では得られない資産を、外部のコミュニティに求めていく必要があります。

ーー会社以外のコミュニティを通じて、変化の多い時代に対応していくための資産を貯めていくのですね。
様々なコミュニティで資産を得ることを、「コミュニティポートフォリオ」と呼んでいます。複数のコミュニティに所属し、それぞれから必要な資産を得られるようポートフォリオを組む考え方です。安らぎを家庭で、金銭的報酬を会社で、役立っている実感をコミュニティで、といったような具合に。ひとつのコミュニティに全てを求めないのです。

会社だとやらないといけないことが多いので、やりたいことをすべて求めるとうまくいかないことも。分離させたり、割り切ることも大事ですね。

ーー会社員でも参考になる考え方ですね。一方、フリーランスの人に向けてコミュニティ活用についてのアドバイスはありますか?
これまで以上にコミュニティを活用してほしいですね。

フリーランスのコミュニティは大きく2パターンにわけられます。自分とスキルが似た者同士で集まって知識や案件を共有するギルド型のコミュニティと、自分とはスキルが異なる者同士で集まる多様性の高いコミュニティ。

前者は案件そのものや、その業界の情報が入ってくるなどメリットがわかりやすい。後者のメリットは、そのコミュニティ内で発生する自分のスキルが活かせる案件が全て自分に入ってくる。たとえばそのコミュニティ内でデザイナーがひとりであれば、デザイン案件が全てその人に入ってきます。

ーー企業とフリーランスとのやりとりも今後より活発になっていくのでしょうか?
企業側にも、フリーランスコミュニティをもっと使ってほしいですね。今、企業とフリーランスとの接点は、口コミや人づてなどの人的ネットワークか、クラウドソーシングの2パターン。その間にコミュニティソーシングがあると思っています。

信頼できるコミュニティをひとつ見つけておけば、不特定多数の大きな箱に投げ込むこととは違い、信頼の基盤をもとに仕事ができる。フリーランスとの接点の多様性を持つことで、よりより選択肢を見つけることができると思います。

ーー多くの人に参考になるお話でした。ありがとうございました。

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