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かあちゃんのスパイス【ショートストーリー】1000文字


とうちゃんはギャンブルが好きで
競馬で儲けたりすると
遊びほうけてたまに家を空ける。

かあちゃんがそんなとおちゃんを
どうして好きになったのか分からない。

「結婚なんてどこか気がおかしくなってないと
できないものなのよ」

と笑って言っていた。

その日もとおちゃんは帰って来なかったけど、
その日は僕の誕生日だった。

母ちゃんは僕がリクエストした
ステーキを焼いて待っていたのだけれど、
とうちゃんは帰って来なかった。

僕は母ちゃんと
二人でステーキと誕生日ケーキを食べた。
9本のロウソクを吹き消す時に、
“とおちゃんが今日帰って来ますように”
とお願い事をして、
ひと吹きでロウソクの火は全部消えたのに、
結局とうちゃんは帰って来なかった。

次の日は日曜日で
僕は朝から誕生日プレゼントに買ってもらった
ゲームで遊んでいると、お昼近くになって
とうちゃんが帰ってきた。

何事もなかったように、
「ただいま〜」
と言って帰ってきた。

かあちゃんは勢いよくとうちゃんに詰め寄ると、
すごい顔をして睨みつけながら、
「私の事ははいいけどね、
あんたの遊びなんかより
大事な日を忘れるんじゃないよ!」
と言ってものすごいビンタを
とうちゃんに叩いた。
そして、
「いいかげんうんざりよ!」
かあちゃんは怒鳴って、
家から出て行ってしまった。

とうちゃんは叩かれた頬を押さえながら
呆気に取られていた。
そして僕の顔を見ると、
「まさる、、、、そうか誕生日だったよな」
と言って膝まづくと、
「ゴメンな」
と謝った。

僕は急に涙が出てきた。
とうちゃんが慰めようと
僕の肩を抱き寄せたけれど、
振り払って、
僕は家を飛び出した。
何処に行くあてもなかったけれど、
家には帰りたくなかった。
仕方なくいつも遊んでいる公園のベンチに
座り、足を投げ出して空を眺めていた。

西の空が赤くなり始めた頃、
「まさるー」
と後ろからかあちゃんの声がして振り返ると、
向こうの方にとうちゃんとかあちゃんが
歩いてくるのが見えた。
「まさる、ゴメンな」
とうちゃんは謝ると、
「三人でおうちに帰ろう」
と言った。

帰ってから誕生日のやり直しで
かあちゃんがカレーを作ってくれた。
僕は「うまい、うまい」と言いながら食べた。
とうちゃんとかあちゃんと三人で食べると
なおさらにうまかった。

なんでかあちゃんのカレーはうまいんだろう。

豚肉、タマネギ、じゃがいも、
にんじん、カレールー。
それ以外にもかあちゃんの秘密のスパイスが入っているのだけれど、そのスパイスはかあちゃんにしか分からない。かあちゃんだけが知っている僕専用のスパイスなのだ。

(おしまい)

農林水産省さんの企画
”カレーにこれ入れる“
で書き始めましたが、
厚生労働省さんっぽいストーリーに
なってしまった😅🍛

ホームカレーにはおうち独自の
旨みスパイスが効いてるよね!